![グリーンファイル 工事/通勤用車両届](https://clab.alirio.net/wp-content/uploads/2021/09/koji-tsukin.jpg)
工事現場や通勤時に使用するさまざまな車両。
もしも現場とは関係のない公道で車両事故が起こってしまったら、責任の所在はどうなるのでしょうか?
事故が発生したとき、責任の所在を確認するために重要となるのが「工事・通勤用車両届」です。
「工事・通勤用車両届」を作成すると、工事の関係車両を管理することができます。
今回は、「工事・通勤用車両届」の書き方を各項目ごとに詳しくご説明していきます。
また、「工事・通勤用車両届」の作成後についてもお伝えするため、ぜひ参考にしてください。
なお、ここでは一般的に広く採用されている「全建統一様式 参考様式第8号」をフォーマットとして「工事・通勤用車両届」の書き方を解説します。
しかし、他の書式でも記入項目はほとんど同じです。
そのため、「全建統一様式 参考様式第8号」以外をフォーマットとして「工事・通勤用車両届」をつくる場合でも、安心してご参照ください。
目次
「工事・通勤用車両届」とは
![工事現場に複数のトラックが停まっているイメージ](https://clab.alirio.net/wp-content/uploads/2022/03/koji-tsukin1.jpg)
現場に出入りする工事関係車両を、元請けの会社が管理するための書類が「工事・通勤用車両届」です。
一次下請けをはじめ、車両を使用する全ての協力会社がそれぞれ提出する必要があります。
冒頭にご紹介した通り、書類の基本フォーマット(様式)は「全建統一様式 参考様式第8号」です。
元請けによってフォーマットに多少の差異はありますが、それほど大きくは違いません。
主に記載する内容は、車両を運転する人の氏名・免許証情報・保険の種類や有無・通勤の経路についてです。
必要な内容がもれなく記入されていれば、オリジナルのフォーマットを使ってもかまいません。
「工事・通勤用車両届」の作成時に注意したい3つのポイント
![緑の服を着た人物が車両を運転しているイメージ](https://clab.alirio.net/wp-content/uploads/2022/03/koji-tsukin2.jpg)
「工事・通勤用車両届」を作成するときに、注意したいポイントが3つあります。
「工事・通勤用車両届」は車両1台ごとに提出が必要
1つめのポイントは、「工事・通勤用車両届」は、車両1台ごとに提出する書類であるということです。
そのため、会社のメンバーが各自の車で通勤する場合には、そのメンバー全員分の書類を提出する必要があります。
ただし、元請けが用意する書類のフォーマットによっては、1枚の用紙に複数台分の記入欄がつくられていることがあります。
書類のフォーマットに従って、使用される全ての車両を記載して提出するように注意してください。
なお、「型式」という項目が「車種」になっていたり、「車両番号」の項目に「自動車登録番号」と書いてあったりするなど、フォーマットによって表現が異なるケースもあります。
異なる表現に遭遇した場合には、柔軟に対応しましょう。
「工事・通勤用車両届」の提出時には添付書類が必要
2つめのポイントは、「工事・通勤用車両届」の提出時には、任意保険の証書のコピーを添付する必要があるということです。
もしも元請けに求められた場合には、車検証・運転免許証のコピーや運行経路図なども一緒に添付しましょう。
「工事・通勤用車両届」をつくる際には、対象の車両が1台だけである場合でも、複数の書類を用意する必要があります。
添付書類を忘れないようにご注意ください。
運転者の変更の度に「工事・通勤用車両届」の提出が必要
3つめのポイントは、たとえ同じ車両である場合でも、運転者に変更があれば再度「工事・通勤用車両届」をつくり、提出しなければならないということです。
運転者の変更に伴って新たに「工事・通勤用車両届」を作成する際は、運転者の情報の記載に気をつけましょう。
詳しくは、この後に解説します。
「工事・通勤用車両届」の書き方を項目ごとに解説
![「工事・通勤用車両届」の書類全体のイメージ](https://clab.alirio.net/wp-content/uploads/2022/03/koji-tsukin3.jpg)
それでは、「工事・通勤用車両届」の書き方を各項目ごとにお伝えしていきます。
「工事・通勤用車両届」欄外部分(前付け)の書き方
![「工事・通勤用車両届」の欄外部分(前付け)のイメージ](https://clab.alirio.net/wp-content/uploads/2022/03/koji-tsukin4.jpg)
「工事・通勤用車両届」の欄外部分(前付け)には、工事の概要と関係会社について記します。
・日付の記入部分
「工事・通勤用車両届」の提出日を書きましょう。
年の記入は西暦でも問題ありませんが、和暦での表記が一般的です。
・書類名
用紙の上部中央に書類名として「工事・通勤用車両届」という文言が目立つように記載されています。
書類の該当車両が工事用か通勤用かを確認し、当てはまる方を〇(丸)で囲みましょう。
なお、工事用車両と通勤用車両の違いについては以下を参照してください。
【工事用車両とは】
工事の現場に出入りする工事車両で、トラックや生コン車など現場で利用される車両。
【通勤用車両とは】
自宅や会社から現場に向かうときに使う車両。
・作業所名
工事現場の事務所の名称を記入します。
例えば、「〇〇ビル改修工事」や「〇〇作業所」などと記しましょう。
・作業所長
工事における元請けの現場代理人の氏名を記入しましょう。
一次会社ではなく、元請け会社の現場代理人を記載するという点に注意してください。
・一次会社名
「工事・通勤用車両届」を提出する一次請けの会社の名称を書きます。
・使用会社名
自社名を記入しましょう。
同時に、「( 次)」と書かれた空欄には、自社が何次の下請け業者にあたるのかを数字で書きます。
・現場代理人(現場責任者)
自社に所属する現場責任者の氏名を記入します。
現場代理人(現場責任者)の項目には、該当者の印鑑が必要となります。
忘れずにもらいましょう。
「工事・通勤用車両届」欄内部分の書き方
![「工事・通勤用車両届」の欄内部分のイメージ](https://clab.alirio.net/wp-content/uploads/2022/03/koji-tsukin5.jpg)
「工事・通勤用車両届」の欄内部分には、使用する車両や保険などの情報を記入します。
・使用期間
「使用期間」の欄には、該当の車両が現場に入る期間を日単位で記入します。
例えば、「令和4年10月1日~令和4年12月3日」などと記載しましょう。
・所有者氏名
該当する車両を所有する人物の氏名を記入します。
車両の所有者が会社である場合には、「社有車」と書きましょう。
・安全運転管理者氏名
「安全運転管理者氏名」の欄に記入するのは、使う車両の台数が多い場合に、管理を統括して行う立場の人物の氏名です。
安全運転管理者の選任が必要な車両台数の基準は以下の通りです。
・普通自動車なら5台以上
・マイクロバスなら1台以上
なお、自動二輪車(50cc以上)は1台を0.5台として計算します。
車両の台数が基準より少ない場合は、「安全運転管理者氏名」の欄は空けたままでかまいません。
また、安全運転管理者を選任する場合には要件があるため、よく確認して選びましょう。
安全運転管理者の選任要件は以下の通りです。
【安全運転管理者の選任要件】
・年齢20歳以上(副安全運転管理者を置く場合は30歳以上)
・2年以上の運転管理の実務経験がある者。または同等以上の能力があると公安委員会が認めた者
・過去2年以内に公安委員会の安全運転管理者等の解任命令を受けたことのない者
また、安全運転管理者を選任した場合は、使用の本拠地を管轄する警察署を通して、公安委員会への届け出が必要となります。
届け出の期限は、安全運転管理者の選任から15日以内です。
・車両
「車両」の欄は、型式・車両番号・車検期間の3項目に分かれています。
「型式」の項目には、ワゴン・ミニバン・マイクロバス・トラックなどの車種を記入します。
記載にあたって元請け会社から細かな指定がある際は、車両名を書くこともあります。
「車両番号」の項目には、ナンバープレートの内容を地名から番号にいたるまで全て書きましょう。
例えば、「品川 〇〇 ね 〇〇-〇〇(〇には数字が入る)」などと記してください。
「車検期間」の項目には、該当車両の車検証に記載されている期間を記入してください。
・運転者
「運転者」の欄には、氏名・生年月日・住所・免許の種類・免許番号を記入します。
記入する内容は、運転者の保有する免許証を見ながら正確に記載しましょう。
ただし、「工事・通勤用車両届」の作成時に注意したいポイントでご紹介した通り、運転者が変わる際には新たな届出書をつくらなければなりません。
人員の配置替えなどを行うときには、十分に気をつけましょう。
【氏名】
運転者の氏名を記入。
※複数の運転者がいる場合は、代表者の氏名の後ろに(正)、他の人物の氏名の後ろには(副)と記載。
※元請け会社の指定によっては、(正)(副)の記入を省略する場合あり。
【生年月日】
運転者の生年月日を記載。
【住所】
運転者の住所を記載。
【免許の種類】
「普通自動車」や「大型」など、運転者の免許の種類を記載。
【免許番号】
運転者の免許番号を記載。
・自賠責
「自賠責」の欄には、保険会社名・証券番号・保険期間を記入しましょう。
自賠責とは、全ての自動車に加入が義務づけられている自動車保険です。
「自動車損害賠償責任保険証明書」を見ながら、書き損じや間違いのないようよく確認してください。
【保険会社名】
該当車両の「自動車損害賠償責任保険証明書」に記されている保険会社の名称を記載。
【証券番号】
該当車両の「自動車損害賠償責任保険証明書」に記されている証券番号を記載。
【保険期間】
該当車両の「自動車損害賠償責任保険証明書」に記されている保険期間を記載。
・任意保険
「任意保険」の欄は、保険会社名・証券番号・対人・対物・搭乗者・保険期間の項目に分かれています。
任意保険の保険証券を見ながら、正確に記入しましょう。
なお任意保険とは、自賠責保険でカバーしきれない損害を補償する保険です。
「工事・通勤用車両届」を提出した後に、保険の解約やプランの変更を行った場合には、その都度新たな書類の提出が必要となります。
また、「工事・通勤用車両届」の作成時に注意したいポイントでお伝えした通り、任意保険の保険証券のコピーは、「工事・通勤用車両届」とあわせて提出しなければなりません。
添付を忘れないように気をつけましょう。
【保険会社名】
該当する車両が加入している任意保険の保険会社の名称を記載。
【証券番号】
該当する車両が加入している任意保険の証券番号を記載。
【対人】
該当する車両が加入している任意保険の対人賠償保険の限度額を記載。
【対物】
該当する車両が加入している任意保険の対物賠償保険の限度額を記載。
【搭乗者】
該当する車両が加入している任意保険の搭乗者傷害保険の限度額を記載。
・運行経路
「運行経路」の欄には、出発地点から現場までの道のりを簡単に記入しましょう。
通行する主要道路や、交通経路上の主要な地点が書かれていれば問題ありません。
例えば「自 会社(神田) 経由 神田橋 ~ 経由 馬場先門 ~ 至 丸の内作業場」のように記します。
もし引越しなどで住所が変わった場合は、その都度新たな書類を提出しましょう。
また、書類のフォーマットによっては経路の記載欄があったり、元請け会社の指示によっては別紙で運行経路図を添付したりする場合もあります。
運行経路図を作成する場合には、つぎの5項目をまとめた書類をつくり、「工事・通勤用車両届」と一緒に提出しましょう。
【運行経路図の内容】
1.運行経路の距離
2.所要時間
3.同乗者氏名
4.経路
5.略図
※必要事項の記載があれば、書式は自由ということが多いです。
なお、ダンプや生コン車、廃棄物運搬車については、運行経路の提出が必要です。
運行経路の情報は、事業所などから現場までの通勤経路を明らかにすることを目的としています。
交通事故が発生した場合に、通勤災害(場合によっては業務上の災害)なのか、その他の交通事故なのかを判断するために必要です。
記載された経路から大きく外れた地点で事故が起こった場合には、通勤災害と認められないこともあります。
そのため、必ず実際に使用する経路を記入するようにしましょう。
「工事・通勤用車両届」の作成後は
![二車線の道路に多数の車両が停まっているイメージ](https://clab.alirio.net/wp-content/uploads/2022/03/koji-tsukin6.jpg)
「工事・通勤用車両届」は、車両を所有する全ての会社が、会社ごとにつくる必要があります。
作成後の「工事・通勤用車両届」は、一次請け会社が二次請け以下の会社の分の「工事・通勤用車両届」を回収し、元請け会社へ提出します。
ただし元請け会社の指示によっては、二次請け以下の会社が直接「工事・通勤用車両届」を提出することもあります。
あらかじめ確認してください。
自社より下位の会社の「工事・通勤用車両届」を代理でつくる場合もあります。
自社の書類か下請け会社の書類をつくるのかを、混同しないように注意しましょう。
また、代理で「工事・通勤用車両届」を作成する際は、下請け会社に所属する現場責任者の個人情報や捺印が要ります。
万一の場合に備えて、委任の意思確認を書面でとっておくと安心です。
あとがき
「工事・通勤用車両届」の作成にあたって難しい点は特になく、運転者や保険の状況などをよく確認し正確に記入すれば、問題なくつくることができます。
万が一事故が発生した時に社員や作業者の権利を守るためにも、運転者とよく話し合いながら、確実に書類の作成を行いましょう。
「工事・通勤用車両届」以外の労務安全書類(グリーンファイル)について詳しく知りたい方は、こちらもぜひご覧ください。