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建設業の積算とは?用いる物価本や市場単価方式の利点をやさしく説明!

建築コラム

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建設業の積算

建設工事の適正価格を考える上で、積算は大切な基礎知識です。
積算では、1つの工事や作業に必要な材料費や労務費などを一つひとつ割り出し、工事費を計算します。

この記事では、積算業務の概要や、積算見積りの手法の1つである市場単価方式、積算に用いる物価本について解説します。
積算で市場単価方式を使う利点についてもご紹介するので、ぜひ参考にしてください。

積算、市場単価方式、物価本とは?

建設業において、積算業務は的確なコストを算出するために重要な役割を担っています。
ここでは、積算の概要と市場単価方式、物価本について解説します。

積算とは

積算とは、設計図や仕様書をもとにして、使う材料や数量を計算し、建設にかかる工事費を算出する仕事です。

積算によって算出した価格は、工事案件の受注を左右します。
建設業のさまざまな業務の中でも、積算は非常に重要な役割を果たしている業務と言えるでしょう。

積算業務に必要な能力

積算業務を行うには、以下のような能力が求められます。

・設計図や仕様書を理解できる能力
・用いる資材の相場知識
・工事の工程や工法、専門用語の知識
・数字への強さや計算力
・コミュニケーション能力

積算業務を行うために必要なのは、建設業に関する専門知識や計算力です。
また、建築主や現場監督、工事請負業者といったさまざまな人と交渉する機会も多いため、コミュニケーション能力も欠かせません。

なお、最近は積算業務に専用ソフトを使うケースが多くなっています。
そのため、積算業務にあたった経験がない場合でも、積算を行うことは可能です。

しかし、積算ソフトを使用する場合でも、建設業の専門知識をはじめとしたさまざまな能力を持っていることは、積算業務のスムーズな遂行に有利に働くでしょう。

積算業務の資格

積算の業務を行うために、必須となる資格は特にありません。
しかし、「建築積算士」や「建築士」の資格を取得している場合は、積算業務を行う上で役立ちます。

市場単価方式とは

積算業務では基本的に、1つの工事や作業にかかる材料費・労務費などを一つひとつ割り出し、割り出した費用を積み上げて工事費を計算します。

そのような積算の基本に対して、市場単価の考え方は少し異なります。

市場単価では1つの工事施工を単位として、材料費・労務費などの内訳を作りません。
実際に取引きされている実勢価格をベースに単価としています。
実勢価格は、売り手と買い手の間で需要と供給が釣り合う価格です。

このような市場単価をもとにして積算する方法を、市場単価方式といいます。

国では、公共建築工事の積算基準について、市場単価があるものには市場単価を用いるように定めています。
規定の理由は、市場単価の使用によって、現在の時局や実際の取引額に応じた見積りの作成が可能になるためです。

参考:公共建築工事標準単価積算基準|国土交通省

物価本とは

物価本とは、建設資材の価格や工事費などの価格調査を専門の調査会社が実施し、市場価格を業界や工事ごとにまとめて、定期的に掲載・発行している出版物です。

積算業務で市場単価方式を使う場合は、それぞれの工事の市場単価を物価本で調べる必要があります。

積算で使う物価本を2つご紹介

積算見積りの市場単価方式で、市場単価を調べるために欠かせない物価本。
物価本には、業種・工事・作業内容によって、多様な種類が存在しています。

建設業界で代表的な物価本は、経済調査会の『積算資料』建設物価調査会『建設物価』です。
2つの物価本について詳しく見てみましょう。

経済調査会『積算資料』

一般財団法人 経済調査会の月刊刊行物『積算資料』では、建設に関連した資材価格・労務単価・各種料金を、流通・取引数量・都市別に掲載しています。

そのほか、以下のような内容も掲載している『積算資料』。
「積算業務のお供」とも言える物価資料です。

・主な資材の価格の推移
・主要経済統計
・建設行政の寄稿文
・話題の建設情報の解説

参考:一般財団法人 経済調査会 公式ホームページ

建設物価調査会『建設物価』

建設物価調査会『建設物価』は、建設工事の各種資材・機材の価格や工事費、賃貸料金などを全国各都市で毎月調査し、掲載している月刊誌です。
建設業界のさまざまな特集記事や、建設資材に関連した統計資料なども掲載されています。

建設物価調査会の刊行物には、『建設物価』のほかにも季刊『土木コスト情報』や季刊『建築コスト情報』などがあります。

参考:定期刊行物・Web関連商品|一般財団法人 建設物価調査会

『積算資料』と『建設物価』の違いは?

『積算資料』と『建設物価』は、いずれも毎月発刊されていますが、発注機関によって単価データの更新頻度が異なります。
1か月ごとや3か月ごとなど、更新頻度はさまざまです。

また、2つの物価本を比較した際、両書籍に掲載されている同一材料単価があります。
材料は同一ですが、調査方法が異なるために価格に違いが生じます。

2つの物価本で価格が異なる場合、積算の実施者によって価格の採用方法はさまざまです。
『積算資料』と『建設物価』に掲載されている価格を見て、平均価格を採用したり安い価格を採用したりします。

積算における市場単価方式導入の利点

積算で市場単価方式を取り入れる利点は、より現実に即した、正確な積算と見積りを行えるということです。

市場単価方式を用いると、社会情勢や工事の実態の変化による工事価格の変動に迅速に対応して、予定価格に反映させられます。

また、歩掛(作業ごとにかかる手間を数値化したもの)を使った細かい計算を要しません
そのため、積算業務の効率化に効果的です。

歩掛の整理が行われていない最新の技術・工法にも対応できるため、変化に応じた積算をスムーズに実施できます。

さらに、大きな利点の1つとして、実勢価格が市場単価として公表されることによって、不透明になりやすい積算価格の透明性を保てるという点も挙げられます。
元請・下請業者の間の取引価格を、適正化することにも役立つでしょう。

あとがき

この記事では、建設工事の適正価格を考えるために重要な基礎知識、積算について解説しました。

積算は工事の受注に影響を及ぼす業務なので、積算ソフトを使う場合でも建設業の専門知識に通じていることが大切です。
今回お伝えした内容を参考に、積算業務への理解を深めていただければ幸いです。

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