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建設仮勘定って何?減価償却は必要?固定資産税はかかる?建設仮勘定に関するアレコレを解説します

建築コラム

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建設仮勘定に関するアレコレのリスト

建物が完成するまでには、土地の購入や資材の調達など、さまざまな種類の費用が生じます。では、建設中の建物にかかる種々の費用は、会計上どのように処理する必要があるのでしょうか。

このようなケースで会計処理に使われるのは、「建設仮勘定」という勘定科目です。

今回は、そんな「建設仮勘定」について、減価償却の有無、固定資産税が課されるかどうかなど、よく抱かれる疑問を中心にお伝えしていきます。ぜひ、日々の業務にご活用ください。

建設仮勘定とは?

「建設仮勘定」とは、建設中の建物や製作中の機械などの固定資産について、完成までにかかる支出の金額などを計上し、管理をおこなうための資産項目のことです。

法律では、「建設仮勘定」はつぎのように定義されています。

建設仮勘定:第1号から第7号までに掲げる資産で営業の用に供するものを建設した場合における支出および当該建設の目的のために充当した材料をいう。

財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則|e-GOV

この定義の中で「第1号から第7号」とあらわされているものは、具体的には以下のものです。

・建物と付属設備
・土地
・構築物
・船舶や水上運搬具
・機械および装置と付属設備
・工具器具備品
・車両などの陸上運搬具

以上のものは、どれも「有形固定資産」と呼ばれるものです。

上にリストアップした営業用に使う「有形固定資産」のうち、建設途中のもので、建設のためにあてがった材料費や前払いのお金などは、「建設仮勘定」として処理します。ただし、販売目的で建設する固定資産は「有形固定資産」にふくみません。

たとえば土地について言えば、土地の購入のために支払った手付金が、「建設仮勘定」として計上するものです。

建設仮勘定から固定資産に振り替えるタイミング

「建設仮勘定」は、建設中の資産にかかった費用を計上するための、あくまでも一時的な科目です。そのため、目的が達成した際には、「建設仮勘定」は財務諸表の内容から取り消す必要があります。

このときにおこなわれるのが、「建設仮勘定」から「有形固定資産」への振替処理です。振替をおこなうタイミングは、固定資産の建設が完了し、引き渡しがおこなわれるときです。

たとえば、自社で材料を手に入れて自家建設した場合は、完成したときに「建設仮勘定」から固定資産への振替をおこないます。建設しているものがもし建物ならば、「建設仮勘定」から「建物」に、もし機械ならば「機械および装置」に振り替えましょう。

減損の対象となりうる建設仮勘定

減損とは、資産の収益性の低下などの要因によって、固定資産の投資額(取得価額)の回収が見込めないときに、帳簿価額を回収の可能な価格まで切り下げをおこない、資産の経済的な実情をあらわすことです。

早い段階で資産を除却(廃棄)することになったときや、資産の機能があきらかに低下したとき、資産の市場価値が大きく下がったときなど、減損のきざしが見られるときには減損処理を考える必要があります。

減損のきざしがあり、減損損失に気づいた結果、その価値が帳簿価額を下回るときには、回収可能な額を算出して、その額まで帳簿価額を切り下げる処理(減損処理)をします。

減損の対象は固定資産です。では、建設している固定資産の「建設仮勘定」は、ここにふくめてもよいのでしょうか。答えは、条件つきの「イエス」です。たとえ建設途中の「建設仮勘定」であるとしても、重大な問題があるときには減損を考慮しなければなりません。

「建設仮勘定」の場合の重大な問題。それはたとえば、建設が大きく遅れる場合や建設自体が中止になった場合です。このようなときには、投資を実施した額(建設のために支払ったお金)を回収できない可能性が高くなります。

この場合には、「建設仮勘定」に減損のきざしがあると考えます。そして、減損損失に気づいた結果、回収できる額が帳簿価額を下回るならば、回収可能額まで減損処理をおこないます。

建設仮勘定は減価償却が必要?

建物などの「有形固定資産」はふつう、取得してから長い期間にわたって使いつづけるものです。なので、固定資産の取得原価は、取得する際に一括で計上せずに、耐用年数に合わせて徐々に費用化していって、それぞれの会計期間の収益にリンクさせるのが合理的です。

取得原価を徐々に分配していくこのような処理を、減価償却といいます。

減価償却の対象となるのは、資産項目のうち、「有形固定資産」や「無形固定資産(商標権や電話加入権など)」に分類されるもので、時間が経つにつれて価値が減っていくものだけです。

では、「建設仮勘定」には減価償却が必要なのでしょうか。

「建設仮勘定」は「有形固定資産」です。なので、減価償却の対象となる資産の要件は満たします。しかし、「建設仮勘定」は、建設の途中で資産としてはまだ利用されていないものにかかる費用です。ですので、完成が近づくにつれてその資産価値は高まりますが、建設にともなって価値が減っていくものではありません。

このことから、「建設仮勘定」には減価償却をおこなわないという結論を導き出せます。「建設仮勘定」に減価償却が必要になるのは、固定資産への振替を実施したときです。

ただし、例外があります。たとえ建設の途中であっても、資産として使った場合には、使った分についてのみ減価償却をおこないましょう。

建設仮勘定に固定資産税はかかるの?

固定資産税は、固定資産がある市町村(東京23区では都)が課税する地方税で、法人・個人を問わず、土地や家屋を所有する者に対して課されます。

固定資産税について、「建設仮勘定」で処理しているかどうかはあまり関係がありません。なぜなら、課税の対象になるかどうかは資産の使用状態で決まるのではなく、固定資産課税台帳に登録されているかどうかで決まるからです。

この固定資産課税台帳に登録されるのは、不動産登記のある土地や建物です。建物を新築した際や所有した際などには、不動産登記の手続きをおこなう必要があり、建物が完成するとこの手続きを実施します。

ですので、「建設仮勘定」の段階では固定資産税がかかることはないといえます。

あとがき

この記事では、「建設仮勘定」とは何か、減価償却の有無、固定資産税が課されるかどうかなどについてお伝えしてきました。

「建設仮勘定」は、建設にかかる支出を計上するための一時的な勘定科目で、固定資産の経理業務では欠かせない考え方であるといえます。

建設関係の会計についての知識を深めて、事業の利益拡大に活用してみてはいかがでしょうか。

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