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よく分かる「防火設備」!告示仕様・大臣認定仕様についてもやさしくご説明

建築コラム

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防火設備のひとつ、防火シャッター

よく分かる「防火設備」!告示仕様・大臣認定仕様についてもやさしくご説明

建物にとって、火災は最も直面したくない災害だといえます。火災に備えるためには、「防火設備」の存在が欠かせません。

防火設備とは炎をさえぎる目的で設けられるものですが、法律・法令などでその基準は明確に定められています。

今回は、「そもそも防火設備ってなんだろう?」というあなたの疑問にお答えするために、防火設備の種類や基準、告示仕様・大臣認定仕様などについて、リストを交えながら分かりやすくご説明していきます。

防火設備とは?

防火設備は、火災発生時に、開口部(建物の出入り口や窓など)から火が燃え広がるのを防ぐために設けられます。具体的には、防火扉やドレンチャー(水のカーテンを張り延焼を防止)などの設備です。

建築基準法では、開口部の延焼を防ぐために、「外壁の窓」や「防火区画の扉」に防火設備が必要であると定めています。

防火設備の定義

防火設備について定義されている「建築基準法第2条」の一部をご紹介します。

耐火建築物:次に掲げる基準に適合する建築物をいう。

(中略)

その外壁の開口部で、延焼のおそれのある部分に、防火戸その他の政令で定める防火設備【その構造が遮炎性能(通常の火災時における火炎を有効にさえぎるために、防火設備に必要とされる性能)に関して、政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの、または国土交通大臣の認定を受けたものに限る】を有すること。

建築基準法第2条|e-Gov法令検索

防火設備が必要なケース

防火設備を要するケースを以下にまとめました。

・「防火地域」「準防火地域」で延焼ライン内にある開口部
・「耐火建築物」「準耐火建築物」の延焼ライン内にある開口部
・「防火区画」にある開口部

防火設備の種類

防火設備は大きく分けて4種類あります。

・防火扉

階段や廊下などに設置。火災発生時には煙感知器などと連動し、自動的に閉鎖して炎をさえぎります。

・防火シャッター

広い通路などに設置。防火扉と同様に、火事の際には煙感知器と連動して自動で閉まり、炎を防ぎます。

・ドレンチャーなど水幕を形成する防火設備

天井に設けられた放水ヘッドから、水幕(水のカーテン)を噴射して火を防ぎます。

・耐火クロススクリーン

エレベーターや広いスペースなどに設置します。防火・防煙機能を持つ布状のスクリーンで、火災時には煙感知器などと連動、自動的に閉鎖して遮炎します。

防火設備のかつての呼び名

以前は、防火設備は「乙種(おつしゅ)防火戸」と呼ばれていました。設計の経験が長い方が、防火設備を「乙防(おつぼう)」と呼ぶ場合もあります。また、特定防火設備については、かつては「甲種(こうしゅ)防火戸」という名称を持っていました。

防火設備の2つの構造方法

先にご紹介した建築基準法で定められているとおり、防火設備は、遮炎性能(炎をさえぎる機能)を満たすために、次のどちらかの構造方法を選ぶ必要があります。

1.告示仕様…国土交通大臣が定めた構造方法を用いる
2.大臣認定仕様…国土交通大臣の認定を受けたものを用いる

その1.告示仕様

防火設備の告示仕様について定めているのは、建築基準法での「建設省告示第1360号」です。

告示仕様をもとにして防火設備を設ける場合には、2つの基準を満たさなければなりません。それは、防火設備の材質と構造です。

鋼製建具を例に見てみましょう。

鋼製建具の場合

材質…鉄製で鉄板の厚さは0.8ミリメートル以上1.5ミリメートル未満
構造…炎の入り込むすき間のないもの

このように、防火設備の材質や構造については一定の基準が存在します。鉄製の他にも、コンクリートや木材などについても定められているので、必要に応じて法令を必ずご確認ください。

参考:建設省告示第1360号(改正・国土交通省告示第256号)

その2.大臣認定仕様

次の仕様に移りましょう。防火設備の大臣認定仕様は、建築基準法の定めによって、設置する位置ごとに要求される性能が変わってきます。

また、建築確認申請書を提出する際には、設置予定のサッシが防火設備であるかを確認するため、「大臣認定コード」の表記が求められます。このコードの種類は「EA・EB・EC」の3種類。火災が発生した時に炎をさえぎる性能によって分かれています。

関連記事:建築基準法施行規則の改正│電子化のチャンス!建築確認申請の押印が不要に!

・大臣認定コード:EA

・種類…特定防火設備
・要件…加熱面以外の面に火炎を出さない
・遮炎時間…60分間
・火災の種類…建築物の屋内または周囲で発生する通常の火災
・性能…遮炎性能
・主な設置場所…防火区画

関係法令:建築基準法施行令第112条第1項|e-Gov法令検索

・大臣認定コード:EB

・種類…防火設備
・要件…加熱面以外の面に火炎を出さない
・遮炎時間…20分間
・火災の種類…建築物の周囲で発生する通常の火災
・性能…準遮炎性能
・主な設置場所…防火地域または準防火地域内の建築物の外壁の開口部で延焼のおそれのある部分

関係法令:
建築基準法第61条|e-Gov法令検索
建築基準法施行令第136条の2|e-Gov法令検索

・大臣認定コード:EC

・種類…防火設備
・要件…加熱面以外の面に火炎を出さない
・遮炎時間…20分間
・火災の種類…建築物の屋内または周囲で発生する通常の火災
・性能…遮炎性能
・主な設置場所…耐火建築物または準耐火建築物の外壁の開口部で延焼のおそれのある部分

関係法令:
建築基準法第2条第九号二/口|e-Gov法令検索
建築基準法施行令第109条の2|e-Gov法令検索

あとがき

この記事では、防火設備の種類や基準、告示仕様・大臣認定仕様などについてお伝えしてきました。ポイントをまとめてみます。

・防火設備は、火災発生時に出入口などから火が燃え広がるのを防止する設備です。
・防火設備には防火扉などの4種類があります。
・防火設備の告示仕様は、「建設省告示第1360号」によって定められています。
・防火設備の大臣認定仕様には、「EA・EB・EC」の3種類があります。

防火設備は、火災発生時に命を守るための重要な設備です。正しく理解を深めて、建物の安全性を高めましょう。

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