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VE提案の具体例や手順をご紹介!建設のコスト面と品質、どちらも満たす手法

建築コラム

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建設業のVE提案

資材の高騰という背景などから、建設費は高止まりが続いています。

「予算内に収めたい」「かといって、安くても利便性に欠ける建物を作っても意味がない」このような悩みを抱えるオーナーの方も多いのではないでしょうか。

そんな時におすすめしたいのが、VE提案の手法です。VEとは、ただコストを下げるだけではなく、品質や機能の維持にも目を向けた考え方です。

今回は、VE提案の具体例や進め方、注意したいポイントについてお伝えしていきます。この記事で得られるVE提案についての知識は、コストと品質の両方に満足できる事業の実現に、必ず役立つでしょう。

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建設VE提案の具体例

建設業におけるVE(バリュー・エンジニアリング)提案とは、建物や施工方法、維持管理などの「コスト」と「質」のどちらも意識した提案のこと。両方に目を向けることで、事業の総合的な価値が向上します。

VE提案は、設計や資材調達、施工、維持管理などの過程で用いられます。

設計段階で多いのは、デザインの変更や製品の改良についてのVE提案です。また、資材調達の際には、エネルギーの観点も含めたコストの見直しなど。施工や維持管理に関しては、作業の効率化を重視してVE提案が行われます。

では、VE提案の具体例を見ていきましょう。

資材を変える

1例目は、資材の変更です。

とある設計士が、建物の屋根をRCスラブ(鉄筋コンクリートの床や屋根のこと)にしようと考えていました。しかしクライアントから、「建物の構造のコストを下げたい」との要望が。

そこで、「RCスラブではなくALCパネルを使用する」というVE提案を行いました。ALCパネルは、珪石やセメント、生石灰、アルミ粉末から成る軽量気泡コンクリート建材です。RCスラブを用いるよりも屋根の荷重が軽くなるため、他の部材のサイズを落とすことが可能に。

強度などの機能は保ちながらも、コストの削減に成功しました。

発注パッケージを変える

2例目は、特殊な配管の工事を計画していたケースです。

とある施設では、特殊な配管工事を行う必要があり、1つの建設会社への一括発注でプロジェクトは進行していました。しかし、建設会社から出された概算の見積りには、クライアントが予定していた金額の倍以上の数字が。

この建設会社には、「当社には特殊な配管工事の経験が少ないので、リスク分を価格にプラスアルファしたい」という本音がありました。そこでクライアントは、マネジメント会社にVE提案を依頼。

そうして提案されたのは、「コストオン発注」です。この発注方法では、発注者が直接、専門工事会社を選んだ上で、指定業者として建設会社と下請契約を結びます。このケースでは、特殊な配管工事について豊富な経験をもつ工事業者とクライアントが、直接交渉を行いました。

その結果、工事の内容はそのままに、建設会社が見積もったリスクヘッジ分のコストを減らすことが可能になりました。

建設VE提案の6つのステップと注意点

先の事例から、VE提案について具体的なイメージが湧いてきたのではないでしょうか。ここからは、VE提案の6つの手順と、気をつけたいポイントについてご紹介していきます。

建設VE提案の6ステップ

以下の6つのステップを踏み、VE提案を行います。

1.情報収集
2.定義づけ・整理
3.分析
4.提案
5.フォロー
6.評価

情報収集

まずは情報を集めましょう。収集するのは以下の情報です。

・対象(工事や部材など)についての技術やコスト、必要な品質にまつわる情報
・クライアントの要望
・競合他社の情報
・法的な制約についての情報

定義づけ・整理

資材や構造物などに求められる機能や品質の範囲は広大です。何を求めるのかを定義づけて、事前に得た情報と合わせて整理しましょう。

分析

必要な機能の列挙やコストの算出を行い、分析します。実現の可能性の高さや戦略などは、企業によって異なります。

提案

分析した結果をVE提案書にまとめて、クライアントに提案します。合意に至ればいよいよ実際の作業のスタートです。

フォロー

作業に入ってからも、VE提案書にまとめた内容が満たされているのか、フォローが欠かせません。改善策の効果や作業の進行具合などを検証します。

評価

作業が完了した後はVE報告書を作成し、目標が達成できたかどうかを評価します。そして、次の案件に向けての改善点などを明らかにしておきます。

建設VE提案の注意したいポイント

建設VEを提案する際、注意したいポイントが2つあります。

まずは、VE提案を行うタイミングです。VE提案はできるだけ早い段階で行いましょう。設計段階のような初期の段階であるほど、クライアントへ明確な提案をすることができます。また、品質の確保のために、十分な事前準備が可能となります。

また、現場で作業する人の意見を取り入れることもお忘れなく。「もっとこうした方が早く終わる」「こうすれば効率的なのでは」といった作業者の声には、管理する側の人には思いつかないようなアイディアが含まれています。より良いVE提案のために是非取り入れたいところです。

あとがき

今回は、建設業におけるVE提案の具体例や手順、気をつけたいポイントなどについてお伝えしてきました。VE提案がどういったものなのかイメージいただけたのではないでしょうか。

VE提案はクライアントにメリットがあるだけでなく、受注した側の業務への士気を高めます。VE提案のために発想やアイディアを生み出す経験は、企業や社員の自信にもつながることでしょう。

品質・コストどちらも重視したVE提案を行い、クライアントの高い満足度と企業の成長、両方を実現していきたいですね。

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