「特別教育」を受講した経験はありますか?
特定の危険な業務を行う場合に、実施を要するのが特別教育です。
事業者は、自社で働く人を特定の危険業務に従事させる際には、その業務の安全・衛生についての教育を行うことが義務づけられています。
しかし、特別教育とひと口にいっても、詳しくは知らないという方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、特別教育のあらましや実施方法、具体的な内容についてご紹介します。
また、特別教育の修了証や実施記録についてもお伝えしていくので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
目次
特別教育のあらまし
まずは、特別教育の基本情報と特別教育を要する業務について説明します。
特別教育とは
特別教育とは、特定の危険性を伴う業務にあたる場合に必要となる、専門教育のことをいいます。
労働安全衛生法では以下のとおりに定められています。
事業者は、危険または有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全または衛生のための特別の教育を行わなければならない。
参考:労働安全衛生法第59条3項|e-Gov法令検索
特別教育が必要な業務
特別教育を必要とする業務は、アーク溶接やアスベスト解体作業、クレーン・フォークリフトの運転、ロープ高所作業、足場の組立てなどを含む58の業務です。
いずれも危険性や有害性を伴う業務であるため、それぞれの業務についての特別教育を実施しなければなりせん。
参考:労働安全衛生関係の免許・資格・技能講習・特別教育など|厚生労働省
特別教育の実施について
特別教育を実施する方法は大きく分けて2つあります。
・外部機関での実施
・自社内での実施
1つずつ見ていきましょう。
外部機関での特別教育の実施
自社で特別教育を行うのが困難なケースもあるでしょう。
自社内で特別教育を実施することが難しい場合には、外部の特別教育の実施機関を活用できます。
外部機関の具体例には、各都道府県に登録されている講習機関が挙げられます。
各都道府県に登録中の機関では、定期的に特別教育を実施しています。
外部の機関での特別教育について知りたい場合は、各自治体労働局の公式サイトなどをチェックしてみるとよいでしょう。
参考:都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧|厚生労働省
ただし、外部機関での実施といっても、特別教育を行う責任はあくまでも事業者にあります。
講習会の費用、交通費などの諸費用については、事業者側が負担しなければなりません。
また、特別教育は所定の労働時間内での実施が原則となっているため、注意が必要です。
自社内での特別教育の実施
特別教育は自社内で実施することもできます。
自社で特別教育を行うためには、社内に講師として適任な人物がいなければなりません。
特別教育の講習担当者には、特別な資格や要件は不要です。
しかし、特別教育を行う科目についての十分な専門知識と実務経験は欠かせません。
特別教育の内容
特別教育の具体的な内容は「安全衛生特別教育規程」として厚生労働大臣により定められています。
「安全衛生特別教育規程」に記載されているのは、各業務の特別教育に必要となる科目や学習時間などです。
アーク溶接の特別教育について定めている第4条を見てみましょう。
(前略)アーク溶接等の業務にかかわる特別教育は、学科教育および実技教育により行うものとする。
【アーク溶接等の学科教育】
・アーク溶接等に関する知識(1時間以上):アーク溶接等の基礎理論、電気に関する基礎知識
・アーク溶接装置に関する基礎知識(3時間以上):直流アーク溶接機、交流アーク溶接機、交流アーク溶接機用自動電撃防止装置、溶接棒等・溶接棒等のホルダー、配線
・アーク溶接等の作業の方法に関する知識(6時間以上):作業前の点検整備、溶接、溶断等の方法、作業後の処置、溶接部の点検、災害防止
・関係法令(1時間以上):法令・安衛則中の関係条項
【アーク溶接等の実技教育】
・アーク溶接装置の取り扱いおよびアーク溶接等の作業の方法(10時間以上)
参考:安全衛生特別教育規程|厚生労働省
特別教育を行う際には「安全衛生特別教育規程」をよく確認し、内容に不足がないように気をつけましょう。
特別教育の修了証と実施記録
特別教育が行われた後、修了証が発行される場合があります。
また、修了証は発行されずに実施記録の保管だけが行われるケースもあります。
ここでは、特別教育の修了証と実施記録の違いや詳細に注目してみましょう。
特別教育の修了証
外部機関で特別教育を受講すると、多くの場合、特別教育の修了証が交付されます。
特別教育の修了証には、学んだ科目や受講時間などを証明する内容が記載されています。
ただし、特別教育の修了証の発行は義務ではありません。
そのため、外部機関を利用せずに自社の中で特別教育が行われた場合は修了証の交付はないことが多く、実施記録が保管されます。
なお、特別教育の修了証には有効期限は定められていませんが、氏名の変更等があれば書き換えが必要になります。
氏名が変わった場合には、修了証の発行機関へ問い合わせてください。
特別教育の実施記録
特別教育を自社で行った場合には、特別教育を実施した記録の保存が義務づけられています。
実施記録を保管しなければならない期間は3年間です。
また、特別教育の実施記録に記載すべき項目は以下のとおりです。
・特別教育の受講者の氏名
・受講した科目
・受講した日時
特別教育を実施した後にも、安全管理の知識等は日々新しくなっていきます。
再教育が行われることも念頭に置いて、受講者の氏名や受講科目とともに受講日時も記録しておくとよいでしょう。
関連記事:ひと目でわかる!建設業に関する書類の保存すべき期間【建設業法・安衛則まとめ】
あとがき
リスクを伴う特定の業務にあたる場合には、該当の作業員に対して特別教育を実施する義務があります。
特別教育の実施については自社で行う方法や外部機関で行う方法がありますが、いずれにしても「安全衛生特別教育規程」で定められている内容は外せません。
また、特別教育を行ったことを証明する修了証や実施記録については、記載内容や保管期間に注意を要します。
建設業は、法で定められた特定業務の多い業界です。抜けや漏れのない特別教育の実施を心がけましょう。