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今なお建設中の世界遺産!ガウディの「サグラダ・ファミリア」はいつ完成する?

建築コラム

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建設中の世界遺産「サグラダ・ファミリア」

世界遺産登録されているにも関わらず、まだ完成していない珍しい建造物といえば、サグラダ・ファミリアです。スペインのバルセロナにたたずむ壮大なサグラダ・ファミリアは、「工期は300年以上」といわれてきました。しかし近年、工期が半分に短縮されると宣言され、世界中で驚きの声が!

今回は、そんなサグラダ・ファミリアの概要、歴史、完成予定時期について、分かりやすくお伝えしていきます。

サグラダ・ファミリア|スペイン観光公式サイト

建設中の世界遺産、サグラダ・ファミリアの概要

スペインで最もメジャーな見どころであるサグラダ・ファミリア。著名な建築家アントニ・ガウディの代表的な建築作品として知られ、着工からすでに140年近く経ちますが、未だに建設途中の世界遺産です。

そんなサグラダ・ファミリアの概要をお伝えしていきます。

サグラダ・ファミリアの設計責任者

「サグラダ・ファミリアの設計者」としてよく知られているのはアントニ・ガウディですが、建設着工時の初代主任建築家には別の人物が就任しました。無報酬での設計を申し出た、フランシスコ・デ・パウラ・デル・ビリャールという建築家です。

サグラダ・ファミリアの着工から1年、その主任建築家ビリャールと、建設アドバイザーの役割を担っていたジュアン・マルトレイという人物の間で意見が対立。原因は、建築材料を巡るものだったそうです。この対立の際、依頼人は予算面からマルトレイ側に賛同したため、ビリャールは主任建築家という立場を退くこととなりました。

このタイミングで、2代目の主任建築家として抜擢(ばってき)されたのがアントニ・ガウディでした。当時、31歳の若さだったそうです。ガウディは、就任以後40年、その生涯をサグラダ・ファミリアの設計に費やしました。

なお、現在の設計責任者は9代目にあたり、ジョルディ・ファウリという人物が務めています。

サグラダ・ファミリアの歴史

サグラダ・ファミリアの歴史について見てみましょう。

民間のカトリック団体であるサン・ホセ教会は、贖罪(しょくざい:罪をつぐなうこと)教会としてサグラダ・ファミリアの建築を計画しました。ちなみに、サグラダ・ファミリアという言葉は、ヨセフ・マリア・イエスで構成された「聖家族」という意味です。

計画からおよそ5年後の1882年、サグラダ・ファミリアの建設が始まりました。先にご紹介したように、ガウディが2代目の設計者に就任してから40年、そしてガウディの没後も建設工事は続行。

しかしその後、サグラダ・ファミリアの工事は30年近く停滞しました。1936年~1939年までスペイン内戦が勃発。その混乱のために工事に必要な図面が失われ、予算不足や地元著名人から建設継続反対の意見が挙がるなど、負の要因が重なりました。

そのような困難な状況ながらも、遺されたデッサンや職人による口伝を頼りに、建設は手探りで継続。2000年代に入っても、「完成まであと200年はかかる」と言われてきました。

サグラダ・ファミリアにとって転機となったのは、スペインの経済的成長と入場収入の爆発的な増加です。交通網の発達などによるグローバル化が後押しとなり、サグラダ・ファミリアの観光客は大きく増え、十分な建設資金を蓄えることができました。

サグラダ・ファミリアの建築様式

サグラダ・ファミリアの建築様式は、基本的にはゴシック様式です。非常に高い塔が連なっていて、最も高い塔は172.5メートルにもおよぶ予定とされています。

しかし、サグラダ・ファミリアには、一言でゴシック様式とは言いきれない、ガウディのオリジナリティが随所に散りばめられています。

例えば、それまでのゴシック様式では、彫刻には想像上の魔物が多用されていました。しかし、あえてガウディは、日常的に接する機会のある爬虫類や両生類などのごく平凡な生き物を用いたのです。

形式的なゴシック建築ではなく、ガウディの思想や体験の集大成ともいえるサグラダ・ファミリア。ガウディが心に描いたサグラダ・ファミリアを完成させるために、無数の人々が長きにわたり建築に関わっているのです。

世界遺産登録されているのは、サグラダ・ファミリアの一部のみ?

サグラダ・ファミリアがユネスコの世界遺産に登録されたのは2005年。まだ完成していない、建設中の建造物が世界遺産として認められたのは、前例のないことでした。

実は、この世界遺産登録ですが、サグラダ・ファミリア全体に対してなされたものではないという事実をご存じでしたか?

世界遺産として登録されているのは、サグラダ・ファミリア教会の中で、初めに建設された地下聖堂と「生誕のファサード(門の表面および塔)」のみなのです。

当然、将来サグラダ・ファミリアが完成したタイミングで、建物の全体が世界遺産として認められる可能性は十分にあります。しかし、ガウディの没後に建設された部分・今後建設される部分については、「芸術性や建築物としての価値が高くないのでは」という批判も存在します。

最終的な判断はユネスコに委ねられていますが、建物全体が世界遺産となるのかどうか注目していきたいですね。

サグラダ・ファミリアはいつ完成する予定?

着工から完成までは300年以上を要するだろうといわれていたサグラダ・ファミリア。しかし、2013年、9代目にあたる設計責任者のジョルディ・ファウリは、世間を驚かせる発表をしました。

それは、「サグラダ・ファミリアは2026年に完成予定」との宣言。2026年はガウディの没後100年にあたりますが、予想の斜め上をいく発表に、世界中が騒然となりました。これが実現すれば、当初の予定していた半分の工期で完成してしまうのですから、世のざわめきは当然のことです。

なぜ、そこまで工期の短縮が見込めるようになったのでしょうか。理由は大きく2つあります。

サグラダ・ファミリア工期短縮の理由

1.IT技術の進歩
2.潤沢な建設資金

IT技術の進歩がサグラダ・ファミリアの工期を短縮

サグラダ・ファミリアは、スペイン内戦による設計図面の消失以降、手探り状態の建設指針の中、工事が行われてきました。口伝やデッサンを頼りにした作業では、なかなか工事が進みません。

しかし近年、IT技術が目覚ましい進歩を遂げています。コンピュータの存在しない時代には、模型製作などもすべて手作業で行わざるを得ませんでしたが、今や3DプリンターやIT技術を使った設計技術も進化しています。その効果で、これまで不明瞭だった建設指針がクリアになりました。

サグラダ・ファミリアの建設資金

サグラダ・ファミリアの歴史を語る中でもお伝えしたように、観光客の大幅な増加によって、事業主体であるサン・ホセ教会は、建設資金を豊富に蓄えることができました。

観光収入を得る以前は、人々の寄付によって建設資金をまかなってきたサグラダ・ファミリア。資金不足により何十年も工事が滞ってしまった過去を見ると、資金が潤沢になった現在は絶好の機会だといえます。

あとがき

ガウディの没後100年にあたる2026年に、堂々完成が宣言されたサグラダ・ファミリア。新型コロナウイルスの影響による工事の中断や観光客の減少を考慮すると、宣言どおりの2026年というのは難しいかもしれません。

しかし、古今の建築技術の宝庫である、壮大なサグラダ・ファミリアの完成を、是非期待を込めて見守っていきたいですね。

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