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【建退共完全ガイド】建退共制度の仕組み・手帳発行・加入手続きなど、とにかくわかりやすくまとめました

建築コラム

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建設業に従事する若い男女

「毎日真剣に働いているんだから、退職金もしっかり備えておきたい!」
こんな思いを抱いたことはありませんか? 今回は、そんなあなたの願いを実現することのできる、建退共制度についてまとめました。

建退共(建設業退職金共済)とは、建設業に携わる人たちのために設立された退職金制度のこと。

他の産業で働く人は、ほとんど当たり前に恩恵を受けている退職金制度。しかし、建設業界で働く人の場合、労働期間が決まっている事業・工事に取り組むことが多いため、他の産業と比べて制度の適用が受けにくいという事実があります。

このような実態に対して頼もしい制度が、今回ご説明する建退共制度です。

建設業に従事する人は、建退共制度の共済手帳の交付を受けていれば、いつ・どんな現場や事業所で仕事をしても、事業主や元請の会社(公共工事の場合)に証紙を貼りつけてもらうことで、労働日数に応じた掛金を加算することができます。そして、退職の際には「建設産業で労働した期間」分をまとめて、退職金の支給対象とすることができるのです。

建退共のあらまし

建設業以外の業界で働く人の多くは、同じ事業所で続けて仕事をします。そのため、事業所ごとに、社会保険や労働保険などの福利厚生制度を問題なく受けることができます。

それに対して建設業で働く人は、現場や事業所をしばしば移りながら仕事をすることが多くなります。そのため、各事業所の対応では制度の適用をきちんと受けられないことがあります。とりわけ、退職金については、就労期間の短さなどから個別の会社ごとの支給対象になりにくいという問題があります。

このような課題を解決して、建設現場で働く作業員や一人親方が退職金を受け取れるよう、国(独立行政法人 勤労者退職金共済機構)によって設けられた退職金制度が、建退共です。

建退共制度の仕組みについて

それでは、まずは建退共制度の仕組みについてお伝えします。

建退共制度の特徴

建退共制度にはつぎの4つの特徴があります。

1.制度を運営しているのは国である

退職金は国で定められた基準によって計算され、被共済者に確実に支払われます。

2.適用の対象は建設業全体

現場や事業所、また国籍や職種を問わず被共済者になることが可能です。

3.掛金は事業主が負担

掛金を負担するのは事業主です。そのため、労働者に金銭的な負担はかかりません。また、新しく加入した被共済者については、掛金の一部を国が補助します(初回交付の共済手帳の50日分)。

4.掛金の積立は、共済手帳への証紙の貼付によっておこなう

事業主や元請(公共工事の場合)に証紙の貼付を求めることによって、働いた日数に応じた掛金を加算していきます。そして、退職の際には「建設産業で働いた期間」をまとめて、退職金の支給対象とすることができます。
※ただし、事業主の建退共への加入が必要です。

交付手続き(共済手帳の受け取り)

被共済者が建退共による退職金を受け取るためにまず必要となるのが、あらかじめ「共済手帳」を受け取っておくことです。

共済手帳は、事業主の建退共制度への加入によって従業員本人に交付されます。自分の共済手帳をまだ持っていない方は、事業主に申し出ましょう。

一人親方にも交付できる

一人親方の場合も、建退共への加入・共済手帳の交付ができます。この場合には、任意組合を立ち上げる必要があります。

まず、一人親方(一人親方と一緒に働く技能修得中の人も含む)が集まって任意組合をつくります。そして、建退共がその規約について認定することで、その任意組合を事業主とみなします。個々の一人親方の人たちは、その「事業主である任意組合」に「雇われる労働者」とみなすことで、制度が適用されます。

【一人親方の加入方法】

1.一人親方が集まって任意組合をつくるときは、「任意組合認定申請書」に規約と業務方法書を添えて、都道府県支部に申し込みをおこないます。
2.認定後、「共済契約申込書」と「共済手帳申込書」に認定書のコピーを添えて、都道府県支部に申し込みます。
3.共済契約が結ばれると、都道府県支部から「共済契約者証」と「退職金共済手帳」が渡されます。
4.一人親方が既に存在する任意組合に加入して、建退共制度を享受することもできます。既存の任意組合については、都道府県支部に問い合わせることで詳細を知ることができます。

参考:建設業退職金共済事業本部

一人親方の共済手帳への共済証紙の貼付は、2通りの流れによっておこなわれます。

1つめは、親方として働いた場合です。この場合には任意組合から共済証紙を貼付します。

2つめは、他の事業主に雇われたケースです。こちらの場合には、その事業主から共済証紙を貼付を受けます。

共済証紙のあらまし

事業主は、従業員の就労日数に応じ、共済手帳に共済証紙の貼付をおこなう必要があります。そのため、事前の証紙購入が必須となります。

共済手帳は1冊で250日分です。共済手帳が満了した際に、事業主は建退共支部で更新手続きをおこなわなければなりません。

これらの手続きにより、掛金の納付実績が登録されていきます。掛金は全額が事業主負担で、その金額は1人あたり1日310円。貼付の対象となるのは、公共工事・民間工事の両方です。

なお共済証紙は、事業所の規模によって色が異なります(掛金の額や利率は同じ)。

・赤色の共済証紙…中小事業主(従業員300人以下または資本金が3億円以下の事業主)
・青色の共済証紙…大手事業主(従業員300人を超え、かつ資本金が3億円を超える事業主)

労働者は働く事業所を移っても、その先々の事業主に自分の共済手帳を提示して、それまでと同様に証紙を貼ってもらうことができます。

退職金の請求

退職金を請求する時には「退職金請求書」の該当事項に記入し、必要な証明を受けます。そして、つぎのものを準備して都道府県支部に提出します。

1.共済手帳(その時点で所有しているもの)
2.被共済者の住民票
3.「退職金所得の受給に関する申告書」兼「退職所得申告書」
4.個人番号(マイナンバー)および身元を確認できる書類

退職金を受け取るまでには、請求書の受付日からおよそ1か月ほどかかります。

事業主の建退共加入について

建退共への事業主の加入についてお伝えします。

事業主の加入方法

事業主が建退共制度に加入するには、「建設業退職金共済契約申込書」と「建設業退職金共済手帳申込書」を記入し、都道府県支部への申し込みが必要です。その際には、原則として、すべての従業員が被共済者となるように手続きをします。

また、つぎのいずれかに当てはまり、手帳交付の申し込みをおこなわない場合には、「共済契約申込書」と「手帳申込みをしない理由書」に必要な内容を記入して、都道府県支部に申し込みます。

1.社内に、被共済者となる直接雇用の労働者がいない
2.共済手帳をすでに持っている労働者を雇い入れた場合
3.工事を施工する下請の事業所に、共済証紙の現物交付をおこなう場合

契約の申し込みは、本店や本社などからおこないます。本店や本社の加入によって、支店等も加入とみなされるため、各支店による申し込みが不要となります。

事業主にとってのメリット

建退共への加入には、事業者にとっても複数の利点があります。

建退共によって退職金が保証されるため、建設業に従事する作業員は、建退共に加入している事業主のもとで働くことを希望します。ひとりでも多くの事業主が建退共制度に加わることで、建設業で働く労働者の福祉が向上することになるのです。

また、税法上のメリットもあります。証紙の購入代金は、法人では損金、自営業では必要経費として扱われます。

さらに、公共工事の受注にあたっては証紙の購入実績が必要な場合があります。そのため、建退共に加入していることが事業主に利益をもたらすことがあります。

あとがき

今回は、建退共制度のあらましや加入方法、事業主のメリットなど多岐にわたってご紹介してきました。

何があるかわからないこのご時世、退職時にまとまった資金が受け取れると思うと安心ですよね。

労働者にとっても事業主にとっても魅力的な、建退共への加入を検討してみるのはいかがでしょうか。

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