
建設労働組合とは、個人で働く建設業界の労働者の労働組合です。各企業の労働組合とは異なります。
建設労働組合とはどのような組織で、どのような活動をしているのでしょうか。一人親方など自営業者の方にとって加入するべきものなのでしょうか。その目的や、メリットとデメリットをご紹介します。
目次
建設労働組合とは?その目的を解説
どの業界の労働組合も同じですが、経営側に対して労働者が手を取り合うことによって自分たちの労働条件をより良いものにするためにあります。
雇われる側の労働者は能力が高い人であっても、経営者側の都合により賃金を減らされたり、時には職に失ったりするリスクがあります。労働者は同じ職であれば、競争関係にあることも多いですが、ずっとそのままでいると、結果的に不当に搾取されることもあり得ます。
お互いの生活を守り合うために労働組合は生み出されたもので、労働条件や環境の維持だけではなく、向上を目的としています。
建設労働組合は、建設現場で働く労働者や職人、自営業者や零細事業主が加入しています。建設業界は重層下請構造が常態化しています。元請け会社の下に、第二次、第三次、場合によってはさらに第四次、第五次の下請け会社があり、下になればなるほど、厳しい納期や対価の減少を強いられることもあります。
1人の力では及ばない問題に直面した時に相談できる場所、それが建設労働組合です。地方自治体ごとに団体があります。
建設労働組合の実績
建設労働組合があることによって、具体的にどのような影響があったのか。気になるところですね。日本最大の建設労働組合である「東京土建」によると、以下のように記載されています。
建設労働者・職人の賃金確保、労働条件改善に向けて、 全建総連関東地方協議会による『大手建設・住宅企業 交渉』が、毎年春・秋に23年にわたり行われています。約50社に及ぶ企業が組合に対し、不払い・労災などの迅速な解決に向けて担当窓口を設置させるなどしています。これも長年の運動の蓄積と組織の力です。
大手企業交渉の実績|東京土建一般労働組
組合の存在感は企業にとって小さいものではないようです。専用の担当窓口もあるくらいなので、何かあったとき、未加入の方が一人で交渉するよりは労働組合を介せば問題は解決しやすいといえます。
建設労働組合加入の役割、メリット
建設労働組合加入のメリットは経営者と交渉がしやすいというだけではありません。労働者の働く環境を守るために、以下のような役割を果たしています。
①建設国保(建設業国民健康保険組合)を運営
建設国保は、一定以上の収入のある方なら国民健康保険よりも保険料がお得です。傷病手当金、出産手当金など保障内容も国民健康保険より充実しています。建設労働組合に加入すると、建設国保加入が可能となります。
②労災保険と請負業者賠償責任保険を運営
建設現場の仕事では怪我をする危険性もありますが、仕事中の怪我は健康保険を使うことができません。一人親方など個人事業主の場合、通常では労災保険に加入できませんが、組合は任意組合のため、労災保険の手続きが可能です。(組合費と建設国保の他に別途労災保険料が必要です) 仕事場で他人に怪我をさせてしまったり、車や建物などを破損してしまったりした際に使える請負業者賠償責任保険に加入できます。団体での加入のため、通常より掛け金が安く済みます。(組合費と建設国保の他に別途請負業者賠償責任保険料が必要です)
③建設業退職金共済制度(建退共)を運営
1人親方など個人事業主の場合は、退職金は通常ありませんが、建設労働組合では建設業退職金共済制度(建退共)を運営しているので、退職時に就業年数に応じて退職金の支払いを受けられます。(組合費と建設国保の他に建設業退職金共済費が必要です)
④お祝い金や弔意金が受けられる共済制度を設けている
結婚や出産の際のお祝い金や家族が亡くなった際の弔意金などが受け取れる共済制度があります。
⑤確定申告の手伝い
自営業の場合、個々で確定申告を行う必要がありますが、申告相談や申告書の作成の手伝い、税務署への提出の代行も行っています。
⑥各資格の講習会を実施し、補助金も支給
1、2級大工技能士資格、足場組立等特別教育、丸のこ等取扱い作業従事者教育などの資格の講習会を行い、その受講料の補助を行っています。
⑦青年部や主婦会の活動を実施
仲間づくりとレジャーの一環として、スポーツやバーベキューなどを行う青年部や料理や手芸やガーデニングなどの教室を行う主婦会の活動を行っています。
それ以外にも家族で参加できるイベントや旅行を企画しています。
建設労働組合加入のデメリット
いざという時に、保証が受けられ、税金のことやスキルアップのことでもサポートがあり、様々なメリットがある建設労働組合。自分自身の労働環境を守るために、横のつながりのない人ほど加入したほうが安心といえそうです。
しかし、建設労働組合に加入したものの、後悔する方もいます。それは、以下のような原因が挙げられます。
①毎月の出費が負担
毎月の組合費に加え、共済費、建設業退職金、建設国保、労災保険料とすべて合計すると、少なくない金額になるので、それが負担に感じる方は多いでしょう。ただし、個々の金額は不当に高いものではありません。
②組合の会合や行事への参加が面倒
情報交換、交流の場と思えばメリットにもなりますが、人によっては組合の会合や行事に参加するのが面倒に感じる方もいます。
③地域によっては組合の活動に期待できない
組合員が多く積極的に活動していれば企業への影響力が大きく、いざとなった時に頼りになります。しかし、逆の場合は、思ったほど組合が頼りにならないということはあり得ます。
あとがき
建設労働組合は地域ごとに活動しているため、自分が加入することになる地域の支部がどのような状態かを把握する必要があります。
健康保険や労災や退職金のことなど、いざとなった時や先々のことを考えると、横のつながりのない方ほど加入はおすすめといえます。