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建設事業を効率よく!プロジェクトマネジメントとは?仕事内容5ステップもご紹介

建築コラム

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建設業のプロジェクトマネジメント

ほかの業種と比べても、建設業の一連の事業には大勢の人がかかわっています。考えてみれば、建設工事に必要な作業はそれぞれ細かく分けられ、専門化されているのですから、かかわる人が多くなるのは納得ですよね。

では、それほど多数の人が代わるがわるそれぞれの仕事を行いながらも、建設工事の竣工というひとつのゴールに向かうためには、何が必要なのでしょうか? そこで注目したいのが、建設事業の旗振り役を担う「プロジェクトマネジメント」の仕事です。

今回は、事業をスムーズに進めるプロジェクトマネジメントにスポットを当ててみました。

プロジェクトマネジメントの概要

まずは、プロジェクトマネジメントとは一体何なのかお伝えしていきます。

プロジェクトマネジメントって?

プロジェクトマネジメント(project management)とは、大規模で複雑な建設工事などを効率よく進めるためのマネジメント技術です。プロジェクトマネジャーという専門家が事業の早い段階から参加し、発案から運用まで、工程・品質・コスト・発注などを管理。頭文字で「PM」と呼ばれることもあります。

日本では昔から、発注者が施工会社に信頼を置いて、工事のすべてをゆだねる「一括請負」がお決まりのパターンでした。しかし、不透明性があきらかになったり、アメリカ発祥の「PM方式」が取り入れられたりしたことで、建設事業を管理するプロジェクトマネジメントが生まれたのです。

「PM方式」って?

「PM方式」とは、建設工事にかかわる発注者・設計者・施工者以外の「第4者」として、その建設事業をよいものとするために、発注者とともにプロジェクトマネジメントする手法を指します。もともとはアメリカの軍事・宇宙分野の開発の中で実践され、その後、建設やITなど幅広い分野に広まりました。

発注者(建築主など)の立場にたってみれば、大規模な建設事業についての知識や経験が豊富ではないため、設計者や施工者の提案に頼るしかありません。そこでPM方式では、「第4者」の専門家が事業全体のプロジェクトマネジメントを実施。発注者(建築主)と協働して、事業の成功のために働きます。

建設事業の3者(発注者・設計者・施工者)の立場をまとめると下のようになります。

・発注者(建築主)…できるだけ小さなコストでよい建物を建てたい
・設計者…よりよい建物をつくりたい
・施工者…建設工事で利益を生みたい

このように相いれない立場である3者の意見を取りまとめていくのは簡単ではありません。そこで、「第4者」の専門家がプロジェクトマネジメントによって、交渉・調整を行っていくのです。

プロジェクトマネジメントの主な仕事内容5ステップ!

ここからは、建設業のプロジェクトマネジメントの仕事内容について見ていきましょう。

プロジェクトマネジメントを行う際には、建設事業の発案から建物を使いはじめるまで、すべてのステップにかかわります。事業の成功に向けて、各ステップでどうかかわっていくのかご説明します。

ステップ1:企画発案

何のためにどんな建物を建てるか、どれくらいの予算かなど、企画発案は事業の方向性を決める大切な段階です。プロジェクトマネジメントの仕事としては、「リサーチ」という形によって事業へのかかわりを開始。具体的には、周辺の環境や建設予定地の法令・条例、建物を使う人、竣工後の周囲とのかかわり方など、さまざまなことを調べます。

ステップ2:設計

企画発案した内容を、現実の建物になるよう徐々に形あるものにしていきます。発注者(建築主)と設計事務所が話しあって設計を進めますが、その内容が妥当であるかどうかを管理するのが、プロジェクトマネジメントの仕事です。妥当かどうか判断する基準は、設計のステップで決めていく建物の仕上がりや機能、もし商業施設であれば収益、あるいはコストなど。それらを評価していきます。

ステップ3:発注

設計を終えたら工事の業者を選んで発注へ。業者の選定は建設工事のコストや仕上がりに大きく響きます。そのため、発注のステップでプロジェクトマネジメントが担う役割はとても重要です。さらに、発注の透明性を保ちながら、公平な立場で選定・入札・発注の管理を実施します。

ステップ4:施工

大きな規模の建物のケースでは通常、施工はゼネコンが行います。ゼネコンの施工計画が適切か、周囲への配慮はなされているか、工程やコストは妥当か、作業員の安全は確保できているかなど、さまざまな視点でマネジメントしていきます。工事の規模が大きければ大きいほど、建設のコストや工程の変動は大きくなります。そのため、施工のステップも事業の成功のための重要な段階だといえるでしょう。

ステップ5:竣工後

建物の竣工後は運用がスタートしますが、規模の大きな建設事業であれば、メンテナンス計画の管理も大切になってきます。なぜなら、建物の価値を高く保つために欠かせない観点だからです。そのため、場合によっては建物のメンテナンスプログラムのマネジメントも実施します。

プロジェクトマネジメントを担当するのは?

大規模なプロジェクトでは、発注者(建築主)が、設計者や施工者とは異なる会社をプロジェクトマネジメントとして採用することがあります。

日本では、ゼネコンなどがプロジェクトマネジメント業務・コンストラクションマネジメント(施工の管理)業務の部門を設けています。そうしたゼネコン会社に、プロジェクトマネジメント業務のみを発注するというのが、よくあるパターンです。

なお、アメリカなど海外ではプロジェクトマネジメントの専門会社があります。日本にも専門会社はあるものの、まだまだ少数なのが現状です。

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プロジェクトマネジメントの仕事をしたい場合は?

プロジェクトマネジメントの仕事につきたい場合は、先ほどご紹介したゼネコンの専門部門や、プロジェクトマネジメントの専門会社などに勤めるのが一般的です。

プロジェクトマネジメント業務についての資格はありませんが、建設の専門知識は持っていなければなりません。採用の際には必ずといっていいほど、1級建築士の資格や設計会社・施工会社での経験を求められます。プロジェクトマネジメントの職につきたい方は、建築士としての経験を積みながら目指していきましょう。

あとがき

この記事では、プロジェクトマネジメントの概要や事業の各段階でのかかわり方、この仕事につきたい場合などについて解説してきました。

建設事業は地図に描かれるような大きなプロジェクトです。そんな壮大な事業をリードするプロジェクトマネジメントは、人々や事業を成功へと導く重要な役割です。大きな建設事業を円滑に進めるプロジェクトマネジメントに、今後も注目していきたいですね。

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