建設業の見積期間は、建設業法で定められていることをご存じですか?
元請業者が下請業者に対して「明日までに見積もりを出して!」と指示した場合、実はその発言には問題が隠れています。
今回の「C’Lab(シーラボ)」では、建設業の見積期間の概要や、法で定められている理由を分かりやすく解説します。
また、建設業法違反と見なされる可能性のある元請けの言動もいくつか紹介するので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
建設業法で決められている見積期間って?
建設業の見積期間は、建設業法によってはっきりと定められています。
元請業者が下請業者に対して見積もりを依頼する場合は、一定の見積期間を設けなければなりません。
工事の発注予定価格の金額に応じて、見積期間は下記の通りに定められています。
工事の発注予定価格 | 見積期間 |
---|---|
(1)500万円未満 | 1日以上 |
(2)500万~5,000万円 | 10日以上 |
(3)5,000万円以上 | 15日以上 |
ただし、上記の表の(1)(2)のケースについては、やむを得ない事情がある時に限って、見積期間を5日以内に限り短縮することが可能です。
建設業法施行令 第6条1項 建設工事の見積期間|e-Gov法令検索
なお、法で定められている見積期間は、「少なくともこれだけの猶予は設けるように」という意味で設けられた基準です。
見積もりの期間が上記の表の日数よりも長くなることに関しては、問題ありません。
建設業法で見積期間が決められているのはなぜ?
ここでは、建設業法によって見積期間が定められている理由を深掘りします。
見積期間が決められている理由
下請業者が以下の2点をしっかりと判断する時間を確保するために、見積期間は法律で定められています。
・自社の現在の能力で適正な工事を行えるかどうか
・工事の請負契約は納得のいくものであるかどうか
つまり、元請けが下請けに契約をよく検討する機会を提供し、お互いにとって納得できる契約を結べるようにするために、見積期間は明確に定められているのです。
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建設業法の条文
建設業法の第20条第4項を要約すると、建設業の見積期間について以下のように記しています。
建設工事の注文者は、建設業者が当該建設工事の見積もりをするために必要な一定の期間を設けなければならない。
出典:建設業法 第20条第4項 建設工事の見積り等|e-Gov法令検索
見積もりには時間が必要
建設工事では多額の金銭が動き、作業や責任の規模も大きいです。
そのため下請業者には、仕事を受注するべきかどうかをしっかりと検討する時間が必要です。
元請けと下請けのパワーバランスは、どうしても偏ったものになってしまう傾向があります。
十分な時間が取れずに見積もりをしてしまうと、工事のミスを引き起こしたり、下請けが不利益を被ったりする恐れが生じます。
下請業者が不利な状況に置かれないように、見積期間は厳格に制限されているのです。
建設業法違反の恐れがある行為5選
以下に挙げる行為を元請業者が行った場合には、元請業者は建設業法違反に問われる恐れがあります。
・不明確な工事内容を下請業者に提示した場合
・曖昧な見積条件によって、下請業者に見積もりを行わせた場合
・下請業者に対して、「出来るだけ早くして」など曖昧な見積期間を設けた場合
・見積期間を設定せずに、下請業者に見積もりを行わせた場合
・下請業者から工事内容などの見積条件に関する質問を受けた際に、回答しなかったり回答が曖昧であったりした場合
出典:建設業法遵守ガイドライン(第5版)―元請負人と下請負人の関係に係る留意点―|国土交通省
上記リストを見ても分かるように、元請けは、下請けが工事について十分に考えられる時間を設けて、見積もりをさせる必要があります。
なお、以下の例では、元請業者は確実に建設業法違反となってしまいます。
【建設業法違反となるケース】
発注予定価格が800万円の下請契約を結ぶ際に、見積期間を4日に設定して下請業者に見積もりを行わせた。
元請け、下請けの双方が納得して建設工事に臨めるように、見積期間についての理解を深めておくことが重要です。
あとがき
建設業の見積期間は、建設業法によって、工事の発注予定価格に応じた日数が定められています。
見積もりの期間が法で厳しく決められているのは、下請業者が元請業者から不当な扱いを受けないようにするためです。
下請けに対して「とにかく早く見積もりを出して」など、曖昧な見積期間の設定を元請けが行った場合は、建設業法違反に問われるかもしれません。
気持ちのよい建設契約の締結、スムーズな工事を行うために、建設業法にのっとった適切な見積期間を設定しましょう。
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