施工管理に携わる方は、「QCDSE」という言葉を耳にする機会がよくあるのではないでしょうか。
しかし、言葉の意味は知っていても、「QCDSE」の詳しい内容までは分からないという方は少なくありません。
今回は、「QCDSE」の内容や具体的な管理手法を分かりやすく解説します。
目次
施工管理の「QCDSE」って?
「QCDSE」とは、以下の5つの言葉の頭文字を取った言葉で、読み方は文字通り「キューシーディーエスイー」です。
・Quality(品質)
・Cost(原価)
・Delivery(工期)
・Safety(安全)
・Environment(環境)
「QCDSE」という言葉は、建設業で重視するべき大切なポイントを指しています。
つまり、「あらかじめ設定された予算や工期を守りながら、また現場の安全性確保や環境への配慮も意識しながら、品質の高い建設物を完成させること」。
それが、「QCDSE」が示している重要性です。
ビジネス全般においては「QCD(品質・原価・納期)」という言葉が使われています。
一方、危険作業が多く環境へ与える影響の大きい建設業界では、さらに「SE(安全・環境)」の2要素が加えられています。
「QCDSE」それぞれの内容を解説!
ここでは「QCDSE」の内容を一つひとつ解説します。
また、「QCDSE」それぞれの要素の管理手法についても分かりやすくご紹介します。
施工管理の「Q」は「Quality(品質)」
施工管理の「Q」すなわち「Quality(品質)」が意味するのは、設計図書にもとづいて必要な建築基準や安全性を満たした建設物を建てることです。
建設業での品質とは、完成後に建設物を利用する上での安全性を意味します。
そのため品質を維持するには、適切な建材を使い、設計図や仕様書、法律などに則った施工が必要です。
つまり、施工管理の品質管理のためには、耐震・耐火といった安全性の確保はもちろん、事前の計画作成によるスムーズな施工が求められます。
また、定期的な進捗確認や情報共有によって、品質保持の状態を常に管理する工夫も要するでしょう。
「Quality(品質)」の管理手法
建設業での「Quality(品質)」の管理手法として、具体的には以下のような手法が挙げられます。
・内容の明確な施工計画書を用いたトラブル予防
・進捗状況の定期的な確認
・トラブル発生時の素早い対応
・受入検査の実施による資材の品質確認
・綿密な工程内検査による施工の正確性の維持
・写真やチェックシートを用いた正確な評価および報告書作成
・完了検査の実施による入念な最終確認
施工管理の「C」は「Cost(原価)」
施工管理の「C」すなわち「Cost(原価)」が意味するのは、人件費・材料費・外注費などの原価管理です。
建設業で「原価」という場合、具体的には人件費や材料費、外注費や諸経費などが挙げられます。
利益を得るためには、原価を効率よく経済的に管理する必要があるのです。
上手な原価管理には、必要コストや損益の計算が不可欠です。
また、作業状況を見ながら計算上のコストと実際のコストを比べ、軌道修正する必要もあります。
「Cost(原価)」の管理手法
建設業での「Cost(原価)」の管理手法として、具体的には以下のような手法が挙げられます。
・市場調査や過去データにもとづく堅実な標準原価の設定
・人件費や材料費などを明らかにした上での詳細な原価計算
・予算の比較にもとづく施工方法の複数検討
・予算段階で計画していたコストと実際のコストを比較した差異分析
・差異分析にもとづいた作業内容や原価設定の改善
・着工後予算案の見直しなどの臨機応変な対応
施工管理の「D」は「Delivery(工期)」
施工管理の「D」すなわち「Delivery(工期)」が意味するのは、あらかじめ設けた工期の通りに作業するための工程管理です。
建設業では、品質や原価などの要素との均衡を保ちながら、工期の遵守が求められます。
工期遵守のためには、堅実な工期を設けた上で工程をはっきりとさせ、進捗具合によっては工程の柔軟な見直しや改善が必要です。
「Delivery(工期)」の管理手法
建設業での「Delivery(工期)」の管理手法として、具体的には以下のような手法が挙げられます。
・人手や機材の把握や過去データにもとづく堅実な工期の設定
・工程表を活用した工程の明確化
・細部工程表やバーチャート工程表などの必要に応じた工程表の作成
・工程表の通りに作業するための作業員間のコミュニケーション
・工程表と進捗具合を比べた進行管理
・臨機応変な工程表の見直しや改善
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施工管理の「S」は「Safety(安全)」
施工管理の「S」すなわち「Safety(安全)」が意味するのは、作業中の事故やケガを防ぐ安全面の管理です。
危険な作業が多い建設現場では、作業員の安全確保が欠かせません。
重大事故を防ぐために必要なのは、あらかじめ作業時の危険なポイントについて把握しておくことです。
また、作業員の健康状態の定期的な確認も大切です。
「Safety(安全)」の管理手法
建設業での「Safety(安全)」の管理手法として、具体的には以下のような手法が挙げられます。
・作業で使う機材や工具の点検による事故の予防
・作業員の定期的な健康チェックによるヒューマンエラーの予防
・危険なポイントの確認や想定、作業員への情報共有
・ヒヤリハット事例の共有による安全意識の向上
・高所作業時の安全帯装着や上下作業禁止の徹底
施工管理の「E」は「Environment(環境)」
施工管理の「E」すなわち「Environment(環境)」が意味するのは、自然環境や職場環境、周辺環境への配慮や整備です。
周囲に与える影響が大きい建設業には、環境基準に則った作業による、自然環境や周辺環境への配慮が求められています。
また、作業にはプレッシャーによって心身に大きな負担をかけるものもあるため、外部のみならず職場環境の整備も大切です。
「Environment(環境)」の管理手法
建設業での「Environment(環境)」の管理手法として、具体的には以下のような手法が挙げられます。
・法令にもとづく環境基準の確保
・環境アセスメントを用いた影響予測と工事方法検討
・振動や騒音、粉じんなどを減らす努力と周辺住民への説明
・太陽光・雨水の利用や、木材・廃材の再利用による環境配慮
・現実的な作業量の設定と働きやすい職場環境の整備
・作業員の定期健康チェックやストレスチェックの実施
施工管理のQCDSEに優先順位はある?
「QCDSE」の語順が、必ずしも優先順位を表しているわけではありません。
施工管理では「QCDSE」の5要素全てが必要不可欠で、1つでも欠けた場合は品質のよい建設物は建てられないのです。
ただし、全ての要素が重要であるという点を踏まえた上で、建設業界では「S(安全)」と「E(環境)」を優先すべきという考え方が定着しつつあります。
作業員が働きやすく安全な環境で業務にあたり、周辺に悪い影響を与えない環境で工事することによって、結果的に品質の高い建設物ができあがります。
あとがき
今回は、施工管理に欠かせない「QCDSE」について解説しました。
品質の高い施工を行うために、ぜひ「QCDSE」の5要素を活用してください。