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優秀技能者を称える「建設マスター/ジュニアマスター」今年はどんな人が受賞したの?2021年度の顕彰選考結果!

建築コラム

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建設マスター,建設ジュニアマスター

建設業界の優秀技能者に与えられる「建設マスター・建設ジュニアマスター」という称号。

毎年選考があって秋口に表彰されるものですが、一体どんな人が選ばれているのでしょうか。

建設業界でキャリアを築いてステップアップしていきたいと考えている人は気になるかもしれませんね。

今回は「建設マスター・建設ジュニアマスター」について基礎知識のおさらいと、令和3年度顕彰選考結果および受賞者の傾向や特徴についてご紹介します。

建設業界の第一線で活躍しながら指導・育成に貢献する、または今後一層の活躍が期待される優秀技能者を顕彰する「建設マスター/建設ジュニアマスター」

まずは基礎知識のおさらいから。

建設マスター」とは、国土交通省が 1992(平成4)年 に創設した「優秀施工者国土交通大臣顕彰者」の通称。

建設現場において優秀な技能と技術をもって後進の指導・育成に貢献する建設技能者を、国土交通大臣が「優秀施工者」として顕彰する制度です。

「青年優秀施工者不動産・建設経済局長顕彰」こと「建設ジュニアマスター」が創設されたのは、2015(平成27)年。

若者が「建設マスター」に達するまでの技能向上のインセンティブを与えるため、 優秀な技能・技術を持って今後更なる活躍が期待される青年技能者を対象に設けられました。

「建設マスター/建設ジュニアマスター」になるための5つの基準と3つの要件

「建設マスター・ジュニアマスター」の顕彰対象となるのは、工事施工に現役で直接従事している建設技能者のうち、次の基準をすべて満たしている人物のみ。

  • 1・技術・技能が優秀である
  • 2・工事施工の合理化等に貢献している
  • 3・後進の指導育成に努めている
  • 4・安全・衛生の向上に貢献している
  • 5・他の建設現場従業者の模範となっている

これに加えて「マスター」は「年齢40歳以上60歳以下」「現場経年20年以上」「無事故期間が3年以上」という要件があります。

「ジュニアマスター」は、上記基準の3つ目の項目が「3・将来その活躍が一層期待される」となっていること以外は「マスター」と同様であり、要件は「39歳以下」「現場経験10年以上」というもの。

しかし若干20代のうちに顕彰される技能者も少なくありませんから、いつの間にか要件に達しており、実は基準も満たしているかもしれないという人もいるのではないでしょうか。

「建設マスター/建設ジュニアマスター」の選考方法と顕彰式典

選考方法は、優秀施工者国土交通大臣顕彰審査委員会において、建設業者団体、都道府県、国土交通省地方整備局、北海道開発局から推薦を受けた人を、有識者からなる審査委員会が選び出します。

ここで決まった被顕彰候補者の中から、国土交通大臣が被顕彰者を決定するという流れです。

顕彰式典が行われるのは毎年10月初旬

国土交通大臣より顕彰状の授与と、「マスター」の証である徽章(バッチ)の贈呈が行われ、「ジュニアマスター」にも不動産・建設経済局長が顕彰状を授与。

国土交通省のデーターベースに氏名や所属会社の社名などが掲載され、専用ページからの検察・閲覧が可能となるため、知名度と信頼度が高まることで受注アップにつながります。

これによって、報酬や待遇がアップする人も。

とくに「ジュニアマスター」においては、転職活動でも実力の証として役立つでしょう。

詳細な内容は建設マスターとは?頑張る施工者を称える制度!その概要やメリットをご紹介をご確認ください。

2021年度「建設マスター/建設ジュニアマスター」顕彰選考結果

おさらいはここまで。

それでは、いよいよ2021(令和3)年度の顕彰選考結果をお伝えしましょう。

2021(令和3)年度の顕彰式典は、昨年度に引き続き新型コロナウイルスの感染状況を踏まえて開催を見送られてしまいましたが、顕彰者の皆さんおめでとうございます!

国土交通省は2021(令和3)年10月1日、「優秀施工者国土交通大臣顕彰」(建設マスター)の対象者として、全国から483人を決定したことを発表しました。

「青年優秀施工者不動産・建設経済局長顕彰」(建設ジュニアマスター)の対象者は116人に決定。

「建設マスター」の顕彰は本年で30回目となり、総数が11457人に達したとのこと。「建設ジュニアマスター」の方は本年で7回目、総数755人に至ります。

2021年度「建設マスター/建設ジュニアマスター」顕彰者の詳細

公開されているデータによると、2021(令和3)年度「建設マスター」の平均年齢は52歳、最も多い年齢は45歳、最低年齢は39歳、最高年齢は69歳でした。

主な職種は「土工」が群を抜いて多く70人(14.5%)。令和元年、令和2年と年々増加の傾向にあります。

次に多いのは「大工」で43人(8.9%)、「建設機械運転工」の39人(8.1%)が続く形です。

2021(令和3)年度「建設ジュニアマスター」の平均年齢は37.3歳、最も多い年齢は38歳、最低年齢は29歳、最高年齢は49歳

主な職種は、こちらもやはり「土工」が多く12人(10.3%)、次に多いのは「とび工」で8人(6.9%)、「建設機械運転工」の7人(6.0%)となっています。

女性の顕彰者の数は、 2021(令和3)年度「建設マスター」 が本年483人のうち5人で、職種は「造園工」「土工」が各2人、「内装仕上工1人という内訳。

女性の 2021 (令和3)年度「建設ジュニアマスター」 は本年116人のうち2人で、「タイル工1人、「造園工1人だそうです。

このほか2021年度の「建設マスター/顕彰者データーベース」「建設ジュニアマスター/顕彰者データーベース」 を見れば、全顕彰者の所属先や在住地域、年齢、職種などを知ることができます。

大工、左官、電気工などはもとより、橋梁特殊工、熱絶縁工、しゅんせつ工、潜水士、ガラス工など対象職種は細部にわたり、その数は全部で52職種

今年の顕彰者一覧から、自分の地域や職種の顕彰者を探してみるといいでしょう。

ものづくり日本大賞・内閣総理大臣賞を受賞した「建設マスター」の事例

最後に、数ある「建設マスター」の中でも、とくに優秀だと認められた人に送る「ものづくり日本大賞内閣総理大臣賞」の第三回受賞者の顕彰例をご紹介します。

建設マスター佐々木昭二さん/52歳/塗装工

戦争の悲惨さを次世代に伝え続けるために無くてはならない、日本の歴史的遺産「原爆ドーム」。

1人目として紹介する建設マスターは、この原爆ドームの改修工事に参加した佐々木昭二さんです。

原爆ドームの改修工事では、破壊された状態を維持するために、錆も現状のままで保護するなど、通常の施工ではあり得ない高度な技術が必要だった点から、高い評価を得ました。

また、佐々木さんは高等職業訓練校の講師を4年間も務めあげ、日独交流事業において、企業内訓練指導者としてドイツ派遣にも参加し、同ドイツ派遣団の受入担当も務めるなど、後進の指導・育成に大きく貢献したことを認められています。

2005(平成17)年にこれらの卓越した技能を評価され、広島県より「ひろしまマイスター」に認定されました。

建設マスター森晴行さん/59歳/大工

2人目の顕彰者は、神社仏閣の造営や改修工事の第一人者である森晴行さん。

歴史的価値の高い建築物を、現代から未来に至るまで保ち続けるためには改修工事が必須です。

森さんは木製の建築物としては国内トップクラスの規模を誇る「川越氷川神社の大鳥居造営」に携わり、日本の伝統的建築物に使われている木造軸組工法の継承に多く貢献したとして顕彰されています。

また、川越建設高等職業訓練校で講師として10年勤務し、その後校長としても6年間務めるなど、後世の育成や指導にも貢献しました。

建設マスター山田隆美さん/50歳/大工

3人目の顕彰者は、難易度が高いと言われる局面や反り面部分を含む型枠工事の第一人者である、山田隆美さんです。

山田さんは「拾い出し図」という部分ごとの詳細な加工図の作成や、建設現場での加工ゼロに取り組み、建設業界の加工精度や作業能率の向上に大きな影響をもたらしたとして顕彰されました。

また、1979(昭和54)年に開催された「技能五輪全国大会」で第1位の成績を獲得。同年開かれた世界大会においても、建築部門で日本人初の金メダルを受賞するといった活躍を見せています。

こうした優れた技能が評価され、2003(平成15)年に島根県より「卓越技能者知事表彰」を受賞しました。

建設マスター荒木富士男さん/55歳/左官工

最後に紹介する顕彰者は、日本にある多数の文化財の復元や改修工事に携わった荒木富士男さんです。

荒木さんは、国史跡の「福岡城大手門」の整備復元や、重要文化財とされている「旧福岡県公会堂貴賓館」の震災復旧などにも参加。

日本の伝統的な左官技術のみならず、西洋の左官技術まで多種多様な工法に精通した左官工として高く評価されています。

また、西洋の伝統工法を日本流にアレンジして「石膏マーブル技法」 という人工大理石の施工技術を共同開発で編み出しました。

この開発がホテル洋館工事などの技術の向上に役立ったとして称えられています。

あとがき

いかがでしたでしょうか。

2021年度「建設マスター/建設ジュニアマスター」顕彰者の詳細と、日本の歴史と文化を守る重要な仕事を手掛け、新たな技術や工法の開発により日本の建設技術を向上させた「建設マスター」たちの存在を知ることができましたね。

「建設マスター/建設ジュニアマスター」は、建設業界においてとても重要な意味を持つ彰です。

2021(令和3)年もこうしてたくさんの方が受賞し、キャリアの集大成としています。

「建設マスター/建設ジュニアマスター」顕彰者となることをひとつの目標にして頑張り続ければ、いつか大きな仕事を成し遂げることも夢ではありませんよ。

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