建築図面を見られる(読める)と、建設の仕事は格段にスムーズになります。
しかし、「製図の知識がないから図面を読めない…」という悩みを抱える人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、初心者の方でも図面を読めるように、建築図面の見方の基本知識をご紹介します。
建築図面を理解する足がかりとして、ぜひご一読ください。
建築図面とは
設計図とも呼ばれる建築図面は、建築士の資格を持つ設計者によって作られます。
設計者は建築主の要望をもとに、建築予定の建物にまつわるさまざまなポイントを、あらゆる側面から検討して建築図面を作成。
そうしてできあがった建築図面をもとにして、施工業者は建物を完成させます。
建築図面を見る(読む)目的とは
建築図面を読む最大の目的は、情報を得ることです。
情報伝達という重要な役割を果たすために、建築図面は存在します。
分かりやすい例として、注文住宅の建築を挙げましょう。
注文住宅を建てる際には、工務店やハウスメーカーの設計者が建築図面を作り、建築主に見せながら打ち合わせます。
また、建築図面は現場で実際に作業する大工などの職人にもシェアし、どのような住宅を建てるのかを具体的に伝えます。
建築図面が読めないとどうなる?
もし建築図面を正しく読むことができない場合、建物を建てるための具体的な情報を、関係者の間で共有することができません。
「どんな建物になるのか分からない」という事態に陥ってしまいます。
図面は、建築物を作る上で欠かすことのできないアイテムなのです。
なお、作成者によって建築図面の作り方が変わってしまうと、情報伝達の手段として利用できません。
そのため、誰が作成しても同じルールに則った建築図面となるように、「日本工業規格(JIS)の製図法」という共通規格が設けられています。
建築図面を見る(読む)ために役立つ基礎知識
建築図面の世界はとても奥深く、完璧に理解するためには専門知識と訓練を要します。
ただし、基本的な見方については、初心者の方でも十分身につけることが可能です。
ここでは、建築図面の読み方が分からない方に向けて、図面を見るために役立つ基礎知識をご紹介します。
三角法
三角法(第三角法)とは、対象物の形を正確に捉えるための手法です。
基本は平面・正面・側面の三面図で構成されるため、三角法と呼ばれています。
三角法は投影法(光をある方向からあてて影を映し出す方法)の一種で、日本は三角法を利用している主な国の1つです。
一方、三角法と同様に投影法の一種である一角法は、欧州を中心に利用されています。
図面の尺度(縮尺)
図面の尺度(縮尺)とは、実寸大のサイズから縮小して描くときの縮小比率です。
よく使われている尺度は「1 / 10」~「1 / 1000」で、端数(「1 / 75」など)は使用しないという特徴があります。
線分
建築図面で主に使われるのは、以下の4種類の線分です。
・太い実線…対象物の見える部分の形を表現
・細い実線…対象物の奥に見える部分の形や寸法線、記述・記号などを表現
・破線(― ― ― ―)…対象物の見えない部分を表現
・一点鎖線(― – ― – ― -)…図形の中心線や通り芯(柱・壁の中心線)を表現
建築図面では上の4種類の線分を組み合わせて建物の形を表します(図面によっては線分の用途が異なる場合あり)。
寸法
建築図面上の寸法は、下記の3要素で構成されます。
・寸法値…寸法線上に表示される数値で、長さや角度を表す。
・寸法線…面や角度の上に表示される線。
・寸法補助線…寸法線の端から下に伸びる線。
寸法には、寸法補助記号と呼ばれる記号も使われます。
寸法補助機能の役割は、寸法値の前につけて寸法値に意味を持たせることです。
主な寸法補助記号を以下に挙げます。
【寸法補助機能の読み方・意味】
・Φ:ファイ、マル…直径
・D:ディー…直径
・r、R:アール…半径
・□:カク…正方形
・t:ティー…板の厚さ
・C:シー…45°の面取り
・SΦ:エスファイ、エスマル…球の直径
・SR:エスアール…球の半径
各種記号
建築図面ではさまざまな記号を使って建具や材料などを表します。
以下に代表的な記号をご紹介します。
記号の具体的な形状については、こちらをご参考ください。
参考:建物平面図等表示記号|佐賀県
平面表示記号
平面表示記号は、建具や開放部の形状を表します。
以下は、平面表示記号の例です。
・方位(矢印の先端は北を表す)
・階段
・引違い窓
・片引き戸
・片開き戸
・吹抜け
材料構造表示記号
材料構造表示記号は、建築に使うコンクリートや木材などの材料や構造を、規定された記号によって表します。
建具開閉表示記号
建具開閉表示記号は建具の開閉を表します。
例えば、建具開閉表示記号には以下の種類があります。
・引違い
・両開き
・両引き
・片引き
・はめころし
・つきだし
略語
建築図面で使われる各種の用語を省略した略語には、主に下記のものがあります。
・幅…W
・高さ…H
・長さ…L
・柱…C
・筋かい…BR
・基礎…F
・耐震壁…EW
・縮尺…S
あとがき
建築主の要望をベースにして設計者が手がける建築図面は、関係者間で情報を共有するための重要なツールです。
建築図面を読み解くスキルは、発注者とのやり取りや業務の進行を円滑にするためにとても役立ちます。
今回ご紹介した基礎知識を皮切りに、ぜひ建築図面への見識を深めてみてください。