安全ヘルメットは、建築現場の必須アイテム。会社によっては支給してくれるものですが、自分で用意しなくてはいけない場合もあります。また、どれだけ安全第一で仕事をしていても、建設工事現場を100パーセント無事故で終えるのは難しいもの。万が一の時に命を守ってくれるものなので、熟考して購入し、長く大切に使いたいですよね。
今回は、安全ヘルメットの種類と選び方、保管方法からメンテナンスまでについて、わかりやすく解説します。
目次
安全ヘルメットとは
建設作業員がかぶる“頭部を保護するための帽子”のことを、広く一般的に「安全ヘルメット」と呼びます。
または、労働者のための保護具であることから「産業用保護帽子」と呼ぶこともあり、その他では「作業用ヘルメット」、「工事用ヘルメット」と呼ばれることもありますが、統一はされていません。
しかし、法令では「保護帽」と規定されているため、一般的にはそう呼ばれています。
建設現場では、検定合格標章が貼付されている保護帽のみが着用可能です。労働安全衛生規則により着用が義務付けられている作業場所で使用するためには、厚生労働省の「保護帽の規格」に適合し、型式検定に合格しているものでなければならないのです。
安全ヘルメットが必要な理由
建設現場において、頭部に関する事故はさまざまな職場で現実に起こっているリスク。後頭部を損傷し、ひどい場合は死亡してしまった例も少なくありません。しかし、安全ヘルメットを正しく着用していた人は、死亡に至らず助かった例も多いのです。
頭部は人体の中でもとくに大切な箇所。けれども、外部からの衝撃に対して弱い部分でもあるため、安全ヘルメットを着用せずに、人の頭が1メートルほどの高さから硬い場所に落下したり、転倒したりすると、頭蓋骨骨折の危険があります。
安全ヘルメットは頭を突起物から守り、落下物や転倒時の衝撃を吸収し、頭へのダメージを少なくする役目があるため、転落や墜落などの危険がある場所ではとくにマストアイテムです。
安全ヘルメットの選び方
安全ヘルメットは使用区分によって、構造・機能が大きく異なるため、作業内容に合った適切なものを選ぶことが重要となります。
広い範囲で頭部を保護できる構造のもの、かつ作業中にぐらつきがないようにしっかり固定できる物を選びましょう。作業環境や作業条件に合った種類の安全ヘルメットかどうか、ラベルによって確認してください。
安全ヘルメットは主に3種類
安全ヘルメットは、主に3つの種類に分かれています。ひとつは、土木、建築現場で上から物が落ちてきた時に、頭部を保護する「飛来・落下物用ヘルメット」。ふたつめは、作業現場で墜落・転倒時の危険から頭部を保護する「墜落、転倒時保護用ヘルメット」。三つめは電気作業。電線がある現場で感電から頭部を保護する「電気用ヘルメット」です。
安全ヘルメットの材質の選択
その材質は、大きく分けて熱硬化性樹脂製の「FRP(繊維強化プラスチック)」と、熱可塑性樹脂製の「ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)」、「PC(ポリカーボネート)」、「PE(ポリエチレン)」の4つ。作業環境・条件にあった材質の選択が必要になります。
たとえば、溶接や溶鉱炉の作業など、温度の高い条件下ではFRP製のヘルメットがベストです。高電圧(7000 V 以下)の耐電帽として使用する場合は、ABS、PC、PEなどの熱可塑性のヘルメットが適しています。
有機溶剤、酸、アルカリなどの耐薬品性でいうと、PCおよびABSは不向きとなりますので要注意。
安全ヘルメットを選ぶポイント
安全ヘルメットを購入する際には、軽さ、遮熱対策、蒸れ対策などのポイントに着目して、最適なものを選びましょう。
・軽量タイプ
ヘルメットを長時間被っていると、首や肩への負担が大きいもの。その点、軽量タイプのヘルメットであれば身軽に行動することができ、体への負担を軽減することもできます。
・衝撃吸収ライナー
安全ヘルメットには衝撃を吸収してくれる機能がありますが、それだけでは心配なことも。さらにライナーが付いているものであれば、より衝撃を軽減することが可能です。25グラムほど重くなってしまっても、安全には替えられませんね。
・暑さ対策
また、遮熱対策がされているものも。特殊コーティングで直射日光を反射し、帽体の中の温度上昇を抑制し、暑くてつらい屋外作業の不快さを軽減します。真夏の現場では、こうしたヘルメット内部の温度上昇を抑制する遮熱樹脂を塗装、もしくは帽体へ練りこめたヘルメットが、熱中症対策にもふさわしいでしょう。
・蒸れ対策
さらに暑い季節の場合、どうしても安全ヘルメットの中が蒸れてしまいますよね。頭部の嫌な蒸れを解消すべく、前から後にかけて大きめの通気孔を設けて通気を良くしたヘルメットや、側面や上部にベンチレーションを設けたヘルメット、雨を防ぎながら通気できるヘルメットなど、さまざまなものが売り出されています。
・サイズ調整
安全ヘルメットは、自分の頭にぴったりなサイズでないと、安定性がなく危険です。頭部がジャストフィットであることはもちろん、顎紐も顔幅に合わせて調節できるものを選びましょう。
この顎紐はゆるすぎてもしめすぎてもいけません。調節が難しいですが「はずれぬように」、「はずれるように」が望ましいと言われています。というのも、落下物が当たったときや墜落時にゆるくて外れてしまっては困りますが、機械に挟まれた時などにすぐ外しやすくなっていないと、首ごと持っていかれてしまう危険性があるからです。
安全ヘルメットの正しいかぶり方
安全ヘルメットは命を守るために着けるものなので、正しく着用しなければ意味がありません。着用方法が間違っていると、保護帽としての性能を発揮することができないからです。
職場でよく見かける誤った装着例としては、頭の上にちょこんと乗せるようなかぶり方や、後ろに傾けてかぶる「あみだかぶり」など。このような場合、ちょっとしたはずみで脱げかねません。
次の方法でかぶると間違いがありません。
- ヘッドバンドを正しく調整。
- 真っ直ぐに深くかぶる。
- 顎紐をきちんと締める。
安全ヘルメットは、真っ直ぐ平行にかぶることが大事なんですね。
安全ヘルメットの耐用年数、寿命、使用期限
一度でも大きな衝撃を受けてしまった、あるいは自分で改造した安全ヘルメットは、たとえ外観に異常がなくても交換する必要があります。
そのほかにも、充電電路を取り扱う活線作業や活線近接作業時に使用する感電防止のための「電気用保護帽」は、六ヵ月に一回、耐電圧性能の検査を行うことが義務づけられているそうです(労働安全衛生規則第三五一条)。
安全ヘルメットの保管場所
安全ヘルメットは、保管場所も重要です。劣化を防いで機能を守り、本来の性能を発揮し続けることができる場所でメンテナンスをしましょう。
落下、衝撃を与えたりするおそれがない場所
安全ヘルメットは衝撃を与えると衝撃エネルギーを吸収できなくなり、本来の性能を発揮できなくなってしまいます。安定した場所に置き、衝撃を与えないことが大切です。
高温にならない場所
安全ヘルメットの衝撃吸収ライナーは、熱によって変質してしまいます。暖房の近くや車中など、高温になる可能性がある場所には置かないようにしましょう。
直射日光が当たらない場所
安全ヘルメットの衝撃吸収ライナーは、日光の紫外線にさらされ続けると劣化してしまいます。直射日光に当たらない場所に保管してください。
風雨にさらされない場所
安全ヘルメットの衝撃吸収ライナーは、発泡スチロールで出来ています。発泡スチロールは水に濡れたまま置いておくと劣化するため、屋内に保管してください 。また、雨で濡れてしまったら、水気を拭き取って日陰でしっかり乾かしましょう。
安全ヘルメットのメンテナンス
頭部や肌に密着するヘルメット。毎日汗にさらされているものですから、匂いが発生して当然です。しかし、意外と本人は悪臭に気が付かないもの。メンテナンスでは防臭対策も習慣化したいですね。
消臭(除菌・抗菌)スプレー
ヘルメットに使う消臭スプレーは、除菌・抗菌能力を持つ製品を選んでください。より効果が高いのは、安定型次亜塩素酸水もしくは70%エタノールが成分のもの。または消毒用エタノールを水で薄めてスプレーして使うのも効果があります。
丸洗い
丸洗いが可能なヘルメットであれば、お湯の中に粉末酸素系漂白剤入れて1時間ほど浸け置きし、その後水でしっかりとすすぎましょう。
丸洗いができないタイプの場合は、タオルに酸素系漂白剤を含ませて顎紐部分を拭きとり、1時間ほど放置。その後で固く絞った濡れタオルで清め拭きをし、漂白剤を吸い取ってください。
また、分解して洗えるタイプもあります。ほとんどの安全ヘルメットは、内部のヘッドギアやベルトを取り外すことが可能です。内部パーツを除菌・洗浄する際は、分解して綺麗にしましょう。ベルト類は洗剤で洗って干したうえで、除菌スプレーを吹き付けます。
天日干し
天日干しをすると、黄色ブドウ球菌の数が減り、悪臭もなくなります。洗った後はかならず直射日光に当てて、太陽の光で乾かしましょう。
あとがき
建設作業員を不慮の事故から守る安全ヘルメット。現場の環境や作業内容によって、選び方のポイントが違ってくることがわかりました。このコラムを参考に、自分の職場にあった適切な安全ヘルメットを選んでくださいね。