家を建てる、道路を整備するなど、身の回りのさまざまな場面で建設工事が行われています。
工事には、たくさんのお金が必要です。
そのため、建設工事を発注する人はできるだけ「信頼できる業者にお願いしたい!」と考えることでしょう。
人々が安心して建設工事を発注できるように国が定めているルールがあります。
そのうちのひとつが建設業許可制度です。
建設工事を行うものとしての資質を行政が認定すること(建設業の許可)で、手抜き工事や雑な工事を行う業者から発注者を守ることを、この制度の目的としています(建設業法第一条)。
個人や企業が建設業を始めるためには、原則として建設業の許可を得る必要があります。
目次
この記事でわかること
行政からの認定が必要なので、建設業の許可を得るために求められる手続きは多くなりそうです。
そこでこの記事では、建設業の許可を受けるために必要な知識を、
「1.建設業の許可を受けるための要件」
「2.許可申請の手続き」
の2つの観点からご紹介します。
なお、建設業は法律上29種に区分されています(2021年5月現在)(建設業法別表第一(第二条、第三条、第四十条関係))。受注しようとする建設工事の種類ごとに許可が必要です。
建設業の許可の区分
建設業の許可を受けるための要件について説明する前に、許可の区分について紹介します。
建設業の許可は、「特定建設業の許可」と「一般建設業の許可」に区分されていて、許可の基準が一部異なります。
まず「特定建設業の許可」とは、発注者から直接工事を請け負う業者(元請け)が取得するものです。
すべての元請け業者がこの許可を受けるわけではありません。
請け負う工事の一部もしくは全部を政令で定められた金額以上で他の業者(下請け)に依頼する場合に取得します(建設業法第三条二号)。
一方「一般建設業の許可」とは、「特定建設業の許可」の対象にならない業者が取得します(建設業法第三条一号)。これは元請け、下請け問わず取得が必要です。
なお軽微な建設工事のみを請け負う場合は、建設業の許可を取得しなくとも問題ありません。軽微な建設工事とは以下の場合を指します。
[1]建築一式工事については、工事1件の請負代金の額が1,500万円未満の工事または延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事
「木造」…建築基準法第2条第5号に定める主要構造部が木造であるもの
「住宅」…住宅、共同住宅及び店舗等との併用住宅で、延べ面積が2分の1以上を居住の用に供するもの
[2] 建築一式工事以外の建設工事については、工事1件の請負代金の額が500万円未満の工事
※上記金額には取引に係る消費税及び地方消費税の額を含みます。
(引用元:国土交通省HP 建設業許可とは)
1.建設業の許可を受けるための要件
建設業の許可を受けるためには、4つの許可要件を満たしたうえで、欠格要件に該当しないことが求められます。
許可要件1 経営能力
建設業の許可を受けるために必要な要件ひとつめは、経営能力です(建設業法第七条一号および第十五条一号)。
国の定める基準を満たす、建設業に関する経営管理能力をもつ人物を置くことが、建設業者に求められています(建設業法第七条一号および第十五条一号)。
許可要件2 専任技術者
ふたつめは専任技術者の設置です(建設業法第七条二号および第十五条二号)。
建設業の経営は他の産業と比較して、大きく異なる特徴があります。
そのため、建設業で健全に経営していく見込みをたてるには、実際に建設業の経営業務に一定期間携わったことのある者が最低でも1人以上必要だと考えられています。
法人が許可を受けるときは常勤している役員のうち1人を、個人のときは本人もしくは使用人のうち1人を、経営能力の基準を満たしたうえで管理責任者として設置しなければなりません。
また専任技術者と認められるため基準は、一般建設業の許可と特定建設業の許可とで異なります
(参考:国土交通省HP 許可の要件 2.専任技術者)。
許可要件3 誠実性
みっつめは誠実性です(建設業法第七条三号および第十五条一号)。
請け負った契約に関して、正しくない又は信頼できない行動を疑われないように建設業者は努めなければなりません。
言い換えると、明らかに不正もしくは利害関係者に不安を与える行いをする者は、建設業を営むものとして契約を請け負うことができません。
なお誠実性が求められるのは、建設業の許可を申請する企業や個人だけでなく、建設業を営むうえで重要な地位にある役員および使用人などにまで及びます。
許可要件4 財産的基礎等
よっつめは財産的基礎等です(建設業法第七条第四号および第十五条第三号)。
建設工事を始めるにあたり、材料・人件費・機械器具等の購入・営業活動のためにお金を準備しておく必要があります。
建設業の許可が必要となる規模の工事は、着手するためにかかるお金の額も大きくなりがちです。
そのため、建設業の許可を受ける者には一定の財産的基礎を備えておくことが求められています。
せっかく工事を請け負ったのに、お金が足りず着手できないという事態は避けなければなりません。
なお、一般建設業と特定建設業で、求められる財産的基礎等の基準は異なります。
一般建設業では、請負契約を実行するにあたり、財産的基礎又は金銭的信用に関わる問題があからさまでないことが求められます。(建設業法第七条四号)。
一方特定建設業では、請負契約の実行にあたり、特定建設業工事を履行するのに充分な財産的基礎等を持っていることが求められています(建設業法第十五条三号)。
欠格要件
手続きに必要な書類に嘘の記載があったり、重要な事実に関して記載漏れがあるときや、許可申請者、役員等もしくは一定の使用人が欠格要件に当てはまっている場合、建設業の許可は認められません(建設業法第十五条三号および第17条(準用))。
欠格要件の確認事項は14項目あります。どれも故意に嘘をついたり法律に反したことをしていなければ問題ないでしょう。
具体的な欠格要件は国土交通省のホームページで確認できます(参考:国土交通省HP 許可の要件 欠格要件)。
2.許可申請の手続き
許可の申請には、必要な書類を担当する行政機関へ提出する手続きが必要です。
建設業の許可申請手続きについて、新規の許可を想定した場合に知っておきたい3つのことを確認します。
申請書類について
まず許可申請を行うために必要な書類についてです。
建設業の許可を申請するにあたって、とても多くの書類を用意する必要があります。
ただし、昨今では行政手続きのコスト削減のため、取り揃える必要のなくなった書類がでてきました。
したがって、書類を作成する際は、許可申請を申し込む行政機関に問い合わせてみましょう。
(問い合わせ先参考:国土交通省HP 許可行政庁一覧表)
提出先及び提出部数
次に申請書などの提出先と提出部数についてです。
建設業許可の申請は、営業所の設置形態によって、国土交通大臣許可と都道府県知事許可に区別されています。
「国土交通大臣許可」
2以上の都道府県の区域内に営業所を設けている場合は国土交通大臣許可が必要です(建設業法第五条)。
申請に必要な書類を、正本1部と副本1部(申請者の控え用)で用意して、本店の所在地を管轄する地方整備局長等に直接提出します。
「都道府県知事許可」
1つの都道府県の区域内だけに営業所を設けている場合は都道府県知事許可が必要です(建設業法第五条)。
都道府県知事が定める数の申請書類を用意して、都道府県知事に提出します。
許可手数料について
最後に許可手数料についてです。
新規の国土交通大臣許可の場合は「登録免許税」を納入します。金額は15万円です。本店所在地を所管する地方整備局等を管轄する税務署に納入します。
他方、新規の都道府県知事許可の場合は「許可手数料」の納入します。金額は9万円です。納入方法は都道府県により異なります。
あとがき
新しく建設業の許可を得るときに必要な情報を紹介しました。
建設業を新しく始めるときの参考になれば幸いです。