建設作業員には、様々な種類があります。それぞれ働く現場も仕事内容も異なります。今回は土木作業員、大工、とびを取り上げ、仕事内容、就業方法や労働条件、年収、キャリアアップについて解説いたします。
土木作業員
土木作業員は建設作業員として最も求人も多く、就業しやすいです。正社員としてだけではなく、期間限定の現場ごとで就業できるので、暇な時期に少し働きたい方にもおすすめできます。
仕事内容
建設作業員といって多くの方が思い浮かべるのは、土木作業員の仕事です。その中でも現場は様々で、道路、橋やダムなどの建設工事を行います。こうした工事は主に建設機械によって行われますが、機械では対応しきれない作業もあり、依然として土木作業員の仕事は不可欠です。
機械を扱う仕事も多いですが、重い石やブロックを一輪車で運ぶといった力仕事もあるので、主に男性が就業しています。
就業方法と労働条件
就業の際には、学歴や特別な資格は必要なく未経験からも就職しやすいです。もちろん、経験者であれば、より良い条件で就業できます。厚生労働省のデータによると、土木作業員の方の全体の7割ほどは高卒です。
現場があってこそ必要になる仕事のため、季節労働者が多く、一日だけの採用の場合もあります。工期に準じて働き、天候に左右されるため、労働時間が安定せず、早出、残業、夜勤、休日出勤が多い傾向があります。
入職も多いですが、離職も多く、全国で平均年齢は46.2歳と、高齢化が進み、高い技術をもつ技能士が不足しています。経験者の判断力は今後も必要なため、この先も需要のある仕事です。
年収
土木作業員の場合、臨時作業員も多いですが、正社員の場合は、平均年収は380万円前後、アルバイトやパートの平均時給は1032円です。
キャリアアップ
軽量ブルドーザーや小型クレーンの運転、ガス溶接や玉掛作業など、特別教育や技能講習が必要な作業があり、そうした技能を身につけておくことがキャリアアップにつながります。
作業現場の指揮者である作業長(世話役)になる道もあります。作業長になるには、知識や経験、資格の他に、管理能力や指導力が必要です。
大工
ものづくりの代表的な仕事の1つである大工。いつの時代も、どこの国でも欠かせない職業です。一般的な木造建築だけではなく、寺院や歴史的建造物、船を作る大工など、様々な仕事があります。
仕事内容
建築士が作成した設計図に沿って建築材料を加工し、建築物を建てるのが大工の仕事です。一般的な木造建築だけではなく、神社やお寺など伝統的建築物を作る宮大工、木造船を作る船大工の仕事もあります。新しい建物を建てるだけではなく、リフォームも行います。
就業方法と労働条件
早い方の場合は、中学卒業後、親方に弟子入りしたり、工務店に就職したりなどして働き始めることが可能で、特に就業のために必須の資格や学歴はありません。
始めは単純作業を行うことになりますが、一人前になるには技術を身につけなくてはならず、根気がいります。
一般住宅の建築現場の場合、朝8時頃と早い時間から仕事が始まることが多く、就業時間は18時頃です。工期によっては、休日作業を行うこともあります。
年収
正社員の大工の平均年収は、396万円、アルバイト・パートの平均時給は928円です。土木作業員とほぼ同じ水準です。
キャリアアップ
一般の住宅を建築する大工の場合、固定の規格のあるハウスメーカーの住宅を扱う大工と、部材加工や木組みを一から自分で行う特別注文の住宅を扱う大工とでは一人前になるまでの年数は異なります。前者は3年ほどですが、後者は5~10年と、かなりの期間が必要です。ただし、技術力の高い大工は希少性があるため、それは収入に反映されます。
順調に経験を積むと、見習いの技術指導や進捗管理を行う責任者である「棟梁」という立場になる方もいます。「一人親方」として独立して、業務委託の形でハウスメーカーや工務店から仕事を請負う場合もあります。いずれにせよ、そうした場合は、誰からの指示もなく、一人で仕事をこなせるだけの知識や技術が必要です。
就業の際は必須ではありませんが、大工の仕事にも持っていると有利な資格があります。「建築大工技能士」は国家資格で、実務経験に応じて1級から3級まであります。特に1級の資格保持者は大工として高い技術を持つことの証明となるので、取得がおすすめです。他には日本の伝統的な木造建築の資格である「木造建築士」もあります。
とび
とび職は江戸時代に登場した職業で、その時代は火事の際、消火作業もしており、リスクは高いものの、人気の職業でした。現在でも、運動能力や体力が必要な身体を使う仕事の代表です。
仕事内容
建築物に限らず、橋、高速道路、ダムなどを建設する際、足場の組み立てや解体工事を行うのがとびです。それぞれ専門分野が分かれており、木造住宅の場合は「建築とび」、ビルの場合は「鉄骨とび」、他には「橋梁とび」「重量とび」「機械とび」などがあります。一人の方が様々な分野に従事するのではなく、それぞれの分野で仕事をします。
就業方法と労働条件
土木作業員や大工と同じく、特別な学歴や資格は必要ありません。土木・建築工事関連の会社に入社して、一から仕事を覚えていくことになります。
学歴としては、高卒の方と高卒未満の方がほぼ半々で、大卒からとび職人になるケースはほとんどないようです。
とび職人の作業は高所で重い物を運ぶ作業が多いため、危険が伴うという点を踏まえておく必要があります。野外の作業のため、天候の影響も大きいです。労働時間はおおむね8時間、実労働時間は6~7時間が目安になります。
工期によっては、休日出勤や夜勤を行うこともあります。
年収
とびの年収は正社員の場合は、平均400万円ほど。アルバイトの場合は、日給10,000円以上で募集しているケースが多いです。とび職人は40代後半で年収はピークとなります。高い運動能力が必要なため、体力が衰えると現場から離れる方が増えるからです。
キャリアアップ
とび職人の資格としておすすめなのは、「足場の組立て等作業主任者」です。国家資格であり、この資格の保有者を配置しなくてはいけない現場もあるため、重宝されます。とび職人としての技能を証明したい場合は「とび技能士」があり、保有者は転職の際にも有利になります。
とび職人は専門性の高い職業ですが、運動能力や体力が必要な仕事のため、怪我は厳禁であり、ある程度の年齢になると現場で働くのが難しくなります。そのため、年齢を経ると、現場から離れる方が多いです。
あとがき
建設作業員には実は様々な種類の仕事があり、それぞれ専門性もあります。機械化が進んでも、人による作業は依然として必要です。そのため、これからも需要があります。しかし、現場では若い方が減っており、既に慢性的な人材不足に陥っています。今後は資格による技術を評価する制度や、労働環境を整えて新たな人材を獲得する必要があります。