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ゼネコンが建設ロボット開発を急ぐ理由とは?今後の課題を検証

建築コラム

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建設ロボット 導入メリットと課題 メカは業界を救う!?

製造業では1990年頃と早い段階でロボットによる自動化技術が導入され、生産性向上が図られてきましたが、建設現場での自動化技術の導入は製造業と比較して20年以上遅れているといわれています。

しかし、最近では建設業界全体にロボット開発を急ぐ動きがあり、鹿島、竹中工務店、清水建設の3社の大手ゼネコンでは技術連携を広く業界全体に働きかけています。

何故、これほど長い間、取り組まれてこなかった建設ロボット開発に対して今業界が積極的に動いているのでしょうか。業界の事情と今後の課題について検証します。

2025年までに90万人新規入職者獲得しても、職人が35万人不足する!

日本の建設業界の人手不足は深刻で、1997年時点で建設技能者は464万人いましたが、2014年には343万人に減少しました。高齢化も著しいため、2025年までに109万人が離職する見込みで、このままでは215万人にまで減少すると考えられます。

そのため、建設業界を代表する団体である「日本建設業連合会」では、2025年までに90万人の新規入職者獲得を目標に掲げました。しかし、例え目標を達成しても、35万人もの人手不足が予想されています。

長時間労働が問題視されている建設業界。このままでは人手不足によりますます労働環境も悪化し、新規入職者獲得も難しくなってしまいます。

建設ロボットで人手不足を解消!

人手不足を解消する手段として建設業界が力を入れているのが建設ロボット開発です。建設ロボットの活用により、少ない人数で効率的に工事ができれば、人手不足解消だけではなく、現場の生産性向上、人件費の削減にもつながります。

また、ロボット導入により人間同士の接触も避けられるようになるので、感染予防の観点からも望まれています。

ゼネコン各社で開発した建設ロボットを紹介

建設業界全体で人手不足への危機感は共有しており、以下のように大手ゼネコンでも既に数種類の建設ロボットを導入しています。

竹中工務店

(自動搬送ロボット かもーん、ひもーん)

自走する台車で、最大600kgの荷物を運べます。「かもーん」は起動した際に一番初めに感知した人を“親”と認識し、その後を自動的についてくるというもの。「ひもーん」は、ロープで走行ルートを決めると、親の誘導がなくても走行できます。

鹿島

(コンクリート仕上げロボット NEWコテキング)

通常は「土間工」と呼ばれる職人が行っていた現場打ちコンクリートの仕上げ作業を行えるロボットです。動力源は容量リチウムイオンバッテリーで、3時間以上の連続稼働、1時間あたり最大700㎡を仕上げることが可能です。

清水建設

(内装多能工ロボット Robo-Carrier(ロボ・キャリア)、Robo-Buddy(ロボ・バディ)、鉄骨溶接ロボットRobo-Welder)

清水建設では作業員と一緒になって働くというコンセプトで建設ロボットの開発を行っています。

Robo-Carrier(ロボ・キャリア)は、資材を作業場へ自動搬送するロボットですが、自分の所在位置をレーザーセンサーとBIMモデルで照合し、ルートに障害物があった場合は、自分でルートの自動修正ができます。

Robo-Buddy(ロボ・バディ)はRobo-Carrier(ロボ・キャリア)同様、自動で作業場へ移動し、2本のロボットアームで資材を持ち上げ、天井の吊りボルトのインサートへの挿入、天井ボードの取り付けなどの作業を行います。

鉄骨溶接ロボットRobo-Welderは、レーザーにより溶接部位の溝の形状の認識が可能で、人の手を借りずに完全自動で溶接が行えます。

鹿島建設、竹中工務店

(遠隔操作システム TawaRemo)

鹿島建設と竹中工務店、アクティオとカナモトの4社で共同開発したタワークレーンを遠隔操作できるロボットです。オペレーターは専用のコックピットに座って操作しますが、遠距離からの操作が可能で、名古屋にあるタワークレーンを大阪にあるコックピットから操作も行えました。

従来のタワークレーンのオペレーターは、運転席がタワークレーンの頭部に設置されているため、運転席まで最大50mを梯子で登っていく必要があり、とても危険です。さらに、一旦運転席に座ったら、1日中拘束されて作業を行うため、その働き方が問題視されていました。

TawaRemoでは安全性、拘束時間の短縮に加えて、熟練のオペレーターが多数の新人の指導を一度に行えるというメリットもあります。

建設ロボット導入のメリット

建設ロボット導入は、近い将来の人出不足を解消するため、どうあっても必要な状況といえます。また、他にも建設ロボット導入により以下のようなメリットがあります。

従事者の安全が確保され、苦渋作業が軽減される

高い場所に登らないといけないなど危険が伴う作業を遠隔操作によって安全に行えます。また、重い荷物を運搬するといった身体に負担のかかる苦渋作業が軽減されることで、高齢の方や女性の方も働きやすくなります。

生産性の向上

ロボットの場合、夜間休日関係なく作業ができるため、生産性の向上につながります。莫大な開発費用はかかりますが、人件費も削減できます。

工事品質の向上

人の場合、その人の熟練度によって品質が異なりますが、ロボットの作業精度は高くミスは少ないため、いつでも品質の高い工事が行えます。

非接触の作業が可能

人と人ができるだけ接触しない環境は、新型コロナウイルスの脅威がある限り必須といえます。ロボットでの作業により、それがかなえられます。

建設ロボットの課題

一方建設ロボット導入には以下のような課題もあります。

開発、導入コストが大きい

ロボットを研究、開発するには多大なコストがかかり、導入した際にも技術者の育成や安全対策費など、かなりコストがかかります。ロボット導入により、人が行うよりもコストが大きくなることもあり得ます。

オペレーター、管理者が必要

自動で動くといっても、当然ながらロボットを操作するオペレーターや管理者が必要になります。ロボット関連の技術を習得している新たな人材を多数育成しなくてはなりません。

あとがき

2025年というと、現在は2021年のため、もう5年ありません。現場によっては、人材不足により、行えない工事がでてくるのではないかと懸念されています。また、人員が不足したまま作業を行うと事故や施工ミスが起こる可能性が高くなり、施主にとってもこれは大きな問題といえるでしょう。

数年間でどこまで建設ロボットの導入が進み、オペレーターや管理者育成も進むのか。高級タワーマンションでも施工ミスが頻発する中、急務の課題といえそうです。