建設工事に係る資材の再資源化に関する法律「建設リサイクル法」のことは知っていても、「建設リサイクルガイドライン」については詳しく知らないという人もいるのではないでしょうか。
しかし、法律をしっかり守るためにも無くてはならない大切な指針です。
今回は、『建設リサイクルガイドライン』について解説していきます。
目次
リサイクル推進のために作られた『建設リサイクルガイドライン』
天然資源が少なく国土が狭い日本では、従来の生活様式や価値観を根本的に転換し、あらゆる経済活動において環境に対する配慮がなされ、資源をできる限り長期間にわたって有効かつ効率的に活用する「循環型社会システム」の構築が緊急の課題となっています。
日本が「循環型社会経済システム」を構築するためには、建設産業が先導的にリサイクル推進に取り組むことが不可欠です。
そのため、国土交通省は、建設リサイクルを推進する各種の施策を講じてきました。
ベースは『建設リサイクル推進計画』
『建設リサイクル推進計画2002』の策定もそのひとつ。
建設産業がリサイクルを推進するための、行動計画として策定したものです。
この『建設リサイクル推進計画2002』で定めた目標値を達成するためには“リサイクル原則化ルールの徹底”など、公共工事発注者が責務の徹底を守れるよう、事業のスタートから実施の各段階において、リサイクルの検討状況を把握およびチェックする必要があります。
そのために設けられたガイドラインが『建設リサイクルガイドライン』なのです。
『建設リサイクルガイドライン』の3つの項目
『建設リサイクルガイドライン』では、以下の3点についてとりまとめています。
1) 計画・設計段階におけるリサイクル計画の策定
2) 直轄事務所等において、リサイクルの徹底に向けた検討体制の強化 3) リサイクル実施状況のとりまとめ
上記のように、リサイクル計画書の作成など、建設事業の計画・設計段階から、施工段階までの各段階、積算、完了の各執行段階における、具体的な実施事項をまとめたものです。
建設リサイクル推進施策の実施経緯と『建設リサイクルガイドライン』の改正
『建設リサイクルガイドライン』は、平成10年に策定し、同14年に改正されました。
昭和45年 廃棄物の処理および清掃に関する法律の制定
平成 3年 資源の有効な利用の促進に関する法律(資源有効利用促進法)の制定
平成 3年 リサイクル原則化ルールの策定
平成 5年 建設副産物適正処理推進要綱の策定
平成 9年 建設リサイクル推進計画97の策定【1回目】
平成10年 建設リサイクルガイドラインの策定
平成12年 建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)の制定
国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)の制定
循環型社会形成推進基本法の制定
平成14年 建設リサイクル推進計画2002の策定 【2回目】
建設副産物適正処理推進要綱の改正
建設リサイクルガイドラインの改正
リサイクル原則化ルールの改正
平成15年 建設発生土等の有効活用に関する行動計画の策定
平成18年 建設汚泥の再生利用に関するガイドライン等の策定
平成20年 建設リサイクル推進計画2008の策定 【3回目】
平成22年 建設工事における自然由来重金属等含有岩石・土壌への対応マニュアル (暫定版)の策定
平成24年 廃石膏ボード現場分別解体マニュアルの策定
平成26年 建設リサイクル推進計画2014の策定 【4回目】
建設業法の改正(解体工事業の新設)に伴う建設リサイクル法の改正
廃掃法が公布され 50年が経過
令和 2年 建設リサイクル推進計画2020~「質」を重視するリサイクルへ~の策定 【5回目】
実施経緯を見てみると、昭和から始まって、推進計画の策定に合わせて改正されていることが分かりますね。
『建設リサイクルガイドライン』実際の内容
通常はあまり目にすることのない『建設リサイクルガイドライン』ですが、実際にどのようなことが書いてあるのでしょうか。
一部抜粋の形で紹介していきます。
1.目的
リサイクル計画書の作成など、建設事業の計画・設計段階から施工段階までの各段階、積算、完了の各執行段階における具体的な実施事項をとりまとめたもの。
2.対象事業
国土交通省所管の直轄事業(受託工事を含む)
3. 実施事項
1)体制の整備
以下の委員会を設置する。
① 地方整備局等建設副産物対策委員会
➁ 事務所等建設副産物対策委員会
2)リサイクル計画書等の取りまとめ
リサイクルの状況を把握し、リサイクルのより一層の徹底に向けた検討や調整を行うため、対象建設機関は以下のものを取りまとめる。
【1】リサイクル計画書
① 目的
建設副産物の発生・減量化・再資源化等の検討・調整状況を把握する。
- 作成時期および作成者
対象建設機関は、設計者に対し、リサイクル計画書の作成を指示する。
- 設計業務(概略設計、予備設計【営繕・港湾・空港工事では基本設計】)、詳細設計(営繕・空港工事では実施設計、港湾工事では細部設計並びに実施設計)の実施時点・業務成果として、設計業務の受注者等が作成。
2)工事仕様書案の作成時点(積算段階)
・対象建設機関の当該工事の積算担当課が作成する。
【2】リサイクル阻害要因説明書
① 目的
建設副産物の再資源化・縮減率が目標値に達しない場合にその原因等を把握する。
② 作成時期および作成者
1)工事仕様書案の作成時点
・対象機関の積算担当課(営繕部においては設計担当課)が作成する。
・工事実施時の再資源化・縮減率が積算段階と比較して10%以上下がった場合には、工事完了段階において再度作成する。
【3】再生資源利用計画書および再生資源利用促進計画書
① 目的
建設資材を搬入又は建設副産物を搬出する建設工事を施工する場合において、リサイクルの実施状況を把握する。
建設資材を搬入する場合:再生資源利用計画書
建設副産物を搬出する場合:再生資源利用促進計画書
② 作成時期および作成者
1)工事の着手時および完成時
・対象機関から直接工事を請け負った建設工事事業者(元請業者)が作成。
対象建設機関は、元請業者に対し、再生資源利用[促進]計画書(工事着手時)および実施状況(完成時)の報告を特記仕様書により指示する。
なお、実施状況の報告は、様式1および2によるものとし、建設リサイクル法第18条に基づく「発注者への報告等」を兼ねるものとする。
2)リサイクルの徹底に向けた検討・調整等
対象建設機関は、リサイクルのより一層の徹底に向け、以下の検討・調整を行う。
(1)計画案(計画・設計方針)の策定時点
・リサイクル計画書を基に発生抑制・減量化、再生利用のより一層の徹底のための検討を行う。
・建設発生土等、工事間流用が可能なものについては、他機関も含めた調整を図る。
・検討・調整に際しては、必要に応じて事務所等建設副産物対策委員会を開催し、意見聴取を行う。
(2)工事仕様書案の作成時点
・事務所等建設副産物対策委員会は、リサイクル計画書およびリサイクル阻害要因説明書についてチェックを行い、リサイクル原則化ルールの徹底が不十分と判断した場合は、当該工事の積算担当課(リサイクル阻害要因説明書について、営繕部においては設計担当課)に対し、改善を指示することができる。
・地方整備局等建設副産物対策委員会が定める規模を超える工事については、原則として、事務所等建設副産物対策委員会と同様の事項を地方整備局等建設副産物対策委員会においても実施する。
(3)工事契約前
・工事担当課は、建設リサイクル法第12条に基づき、落札者から説明書(様式3および様式3に示す添付資料)並びに都道府県知事等が発行する処理施設の許可証の写しを添付した書面の交付および説明を受け、落札者の提示した分別解体等の方法について適切であることを確認する。
(4)工事完了時点
・対象建設機関は、請負業者から提出される再生資源[促進]計画の実施報告(再生資源利用[促進]実施書)をチェックし、とりまとめのうえ、地方整備局等建設副産物対策委員会に提出する。
3)リサイクル実施状況の取りまとめ
完了時の再生資源利用[促進]実施書は、地方整備局等建設副産物対策委員会が半期毎に取りまとめることとする。
様式とセットになったリサイクルガイドライン本稿
いかがでしたでしょうか。
「目的」ではリサイクルガイドラインの内容と意味、「対象事業」では本ガイドラインの対象となる事業が国土交通省のものであることを明言、「実施事項」においては組織体制およびリサイクル計画書の内容や作成時期、担当者についてふれていましたね。
さらに「リサイクル阻害要因説明書」というリサイクルが目標値に達しない場合の事情を説明する書式もセット。
建設資材を搬入する場合は「再生資源利用計画書」、建設副産物を搬出する場合は「再生資源利用促進計画書」を作成する指示や時期についてもまとめられており、「リサイクル計画書」と「リサイクル阻害要因説明書」、「再生資源利用計画書(実施書)-建設資材搬入工事用-」、「再生資源利用促進計画書(実施書)-建設副産物搬出工事用-」といった様式が続きます。
あとがき
『建設リサイクルガイドライン』による指針があるからこそ、公共工事発注者はリサイクルのルールを守れるのだということが分かりました。
『建設リサイクル法』とセットで覚えておきたいキーワードです。