「えっ! また値上げ?」 食品や日用品など、生活に関わるものが値上げすると、なんともいえない苦しい心境になりますよね。
実はここ数年、私たちの暮らしに深く関係する建設資材も、高騰しています。
この記事では、建設資材について、その定義から高騰の原因までを詳しくお伝えしています。ポイントとなるのは、首都圏再開発や震災復興などの建設需要の増加と、深刻な木材不足です。
住宅の新築やリフォームをはじめ、建設工事に欠かすことのできない建設資材。その高騰について知ることは、建設関連のサービスを提供する側にとっても受けとる側にとっても、プラスに働くことでしょう。
建設資材とは何?
そもそも、建設資材とはどういったものを指すのでしょうか? 建設資材の定義、種類、特徴についてまとめました。
建設資材の定義
建設資材は、法律で次のように定義されています。
「建設資材」とは、土木建築に関する工事(以下「建設工事」という。)に使用する資材をいう。
つまり、建設資材とは、建設工事において使用されるあらゆる材料のことです。また、場合によっては「建材」と呼ばれることもあります。
建設資材の種類
建産協(一般社団法人 日本建材・住宅設備産業協会)発刊の「2020/2021年版 建材・住宅設備統計要覧」によると、建設資材の種類は8区分235資材に分類されていて、多岐にわたっています。
主な建設資材を、簡単にまとめてみました。
主な建設資材
1. 木質建材(パーティクルボードなど20品目)
2. 窯業建材(生コンクリートなど60品目)
3. プラスチック建材(ウレタンフォームなど19品目)
4. 金属建材(軽量鉄骨など29品目)
5. 住宅用断熱建材・他(グラスウールなど9品目)
6. インテリア(タイルカーペットなど12品目)
7. 住宅設備機器(キャビネットが木製の調理台など47品目)
8. 副資材(塩化ビニール樹脂など39品目)
建設資材のもつ特徴
一般の工業製品は、一定の品質を保ちやすくなっています。なぜなら、製品毎に特定の工場で、同一の製品が大量に製造されるため、原料や工程を適切に管理できるためです。
しかし、建設工事を「製品」として考えると、一般の工業製品とは違った側面をもっています。
公共土木工事に代表される建設工事は、他の産業の一般製品とは異なり、現場ごとの単品受注生産です。同じ工事種類に分類されていても、それぞれの案件によって、工事の目的、規模、地形、地質や気候などの施工条件が変化します。
そして、基本的には現地で施工され、竣工検査を行い引き渡されます。また、一般的に、ひとたび建設された土木構造物は、維持管理や補修・修繕を行いながら、長い期間にわたり使用されます。
このようなことから建設資材は、次のような4つの特徴をもっているといえます。
1. 需要量や需要場所が一定でない。
2. それぞれの現場での適切な施工管理が重要となる。
3. 全国のどのような場所においても、一定の品質の建設資材が、必要な量に応じて供給されなくてはならない。
4. 施工現場において随時施工管理を行うため、品質試験方法および基準が確立されている必要がある。
建設資材が高騰している原因
ここまでは、建設資材についての基本的な情報をご紹介してきました。
では、そんな建設資材が、ここ数年高騰している原因はどこにあるのでしょうか? 国内外を取り巻く背景を中心に、建設資材が値上がりしている原因を探ってみましょう。
東京オリンピック、首都圏再開発、震災復興
建設資材の高騰の背景にあるものとして、まず、2020年(実際の開催は2021年)の東京オリンピックや首都圏再開発工事、そして震災復興が挙げられます。
首都圏はまさに建設ラッシュを迎えています。多くの高層ビルや建造物が建てられたり、新駅の開業や周辺道路の整備が行われたりしています。
2011年の東日本大震災も大きく関係しています。震災発生から10年以上経った今なお、復興は完了していません。多くの人が、復興のための建設工事を必要としています。
オリンピック、再開発、震災復興によって、建設に対する需要は増加しつづけています。その需要の増加に合わせて、木材、生コンクリート、セメントなどの建設資材もどんどん高騰しているのです。
木材が足りない!ウッドショック
また、ウッドショックも、建設資材の高騰の大きな原因の1つです。日本国内のみならず、世界規模で木材の不足が深刻になり、ウッドショックと呼ばれる状況となっています。
ウッドショックは、アメリカ・中国を中心とした巨大な木材需要や、世界的なコンテナ不足といった複数の要因が絡みあって起こったとされています。
コロナ禍における長いステイホーム期間のために、日本だけでなく、アメリカや中国でも一戸建て住宅の需要が高まっています。特にアメリカでは、低金利政策によって、住宅を求める人が急激に増えています。
また、日本では、多くの木材の調達を海外輸入品に頼っています。日本の木材の国内自給率は37.8パーセント(2019年林野庁調べ)。世界中で、住宅需要が高まっていること、コロナ禍において木材を運ぶ貨物やタンカーが不足していることを考えると、ウッドショックが長期化する可能性は大いにありえます。
そして、温暖化が引き起こす異常気象により、世界中で山火事が深刻化していることも、木材価格高騰の一因になっています。木は30年から40年の長い年月をかけて成長しますが、その最中も手間をかけて管理しなくてはなりません。環境破壊の問題もあり、森林政策は転機を迎えています。
建設資材の高騰、今後はどうなる?
この記事では、建設資材について、その定義から高騰の原因までをご紹介しました。
東京オリンピック後も継続する首都圏再開発や震災復興による建設ラッシュは、あと数年つづくとされています。また、木材の需要に対する供給がとても逼迫しているウッドショックも、まだしばらくつづくようです。そのため、建設資材の価格は、今後も高騰か横ばいが予想されます。
特にウッドショックの問題は、日本国内の住宅産業に大きな影響を与えています。木材の輸入量の減少や高騰。こういった状況がつづくと、木材の納期が遅れ、戸建ての工期の遅延につながってしまいます。また、木材の価格が上がれば、当然住宅の価格も上がります。家だけでなく、木材は家具などにも使われているので、そのような木材製品も値上がりするでしょう。
こうした事態に振り回されないためにも、地産地消の国産木材も含めた、木材の安定的な流通・生産体制を再構築することが、建設・建築業界の急務となっています。
建設資材の高騰で受けた「ショック」を、「チャンス」に転換したいところです。今後の動向に注目し、建設業者も消費者も、双方が安心し納得できるサービスのやり取りを導き出したいですね。