仕事を進める上で、請求書の存在は欠かせません。建設業界においても、工事などの報酬を得るために、請求書のやりとりがしばしば行われています。
会社であれば担当者が請求書を作成してくれるのが通常ですが、担当者が不在だったり、個人事業主である一人親方の場合は、自分で請求書をつくる必要があります。
では、建設業の請求書はどのように作成するのでしょうか。今回は、建設業における請求書の書き方を詳しく解説していきます。業界ならではの「人工費」や、請求書の送り方についても分かりやすく説明していますので、参考になるはずです。ぜひご一読ください。
目次
建設業の請求書について
自社のサービスや商品を提供したとき、取引先から対価を支払ってもらうために発行する書類を、請求書といいます。請求書のもつ役割は、取引先に支払いを請求することだけではありません。「実際に取引を行った」という証明や、報酬の未払いなどのトラブルを防ぐという目的ももっています。
建設業の請求書のフォーマット
建設業の請求書には、法律などで決められたフォーマットは特にありません。ただし、下記の5項目が含まれている必要があります。
・請求書の作成者の氏名(または名称)
・取引先(請求書を受け取る相手)の氏名(または名称)と、担当者がいる場合はその人の氏名
・取引の年月日
・取引の内容
・取引の金額 (税込)
建設業の請求書用紙を手に入れる方法
建設業の請求書作成にあたって、用紙はどこで手に入れればよいのでしょうか。大きく分けると、Web上と実店舗の2つの入手先があります。
・Web上にあるテンプレート
たとえば「請求書 テンプレート」などとWebで検索すると、無料のエクセルファイルなどをダウンロードすることができます。好きなデザインのものを探してみましょう。もちろん、お手元のエクセルにもともと備えられているテンプレートを使っても問題ありません。
もしも請求を行う取引先が、都道府県や市区町村などの官公庁である場合は、それぞれの公式ホームページに請求書の様式が公開されていることが多くあります。確認し、あればそちらを優先しましょう。
・店舗で販売している手書き用の用紙
事務用文具店などで、手書きの請求書用紙を購入することもできます。100円ショップで売られている専用用紙でもよいでしょう。
建設業の請求書、基本の書き方
用紙の準備ができたら、請求書の基本的な書き方について順番に見ていきましょう。
・取引先の情報
取引先の住所、名称(個人であれば氏名)を記入します。
・発行日
請求書の締め日の年月日を記入します。
・請求書番号
請求書に通し番号をつけておくことで、未払い分のチェックなどを管理しやすくなります。できればつけておきましょう。
・請求者の情報
自社(または個人)名、住所、電話(FAX)番号、メールアドレスなどを記載します。会社として角印があれば捺印しますが、必須ではないため、改めて印をつくらなくてもかまいません。
・請求金額
請求の総額と、その下または上に、「上記(下記)の通り、ご請求申し上げます」とひとこと添えます。
・取引内容
日付、作業名や資材名などの内容、その単価、数量、小計、消費税、合計などを記載します。
・振込先情報
振込先の銀行名、口座番号、振込期限を記載します。また、請求先が振込手数料を負担する場合は、「誠に恐れ入りますが、お振込み手数料はご負担頂きますようお願い申し上げます」などの記載も必要です。
建設業の請求書、人工での書き方
建設業ならではの「人工(にんく)費」についてもご説明します。
人工とは
人工とは、人件費と技術費などを盛り込んだ、「作業する人の労働力」をあらわす言葉です。
たとえば、1日25,000円の費用で、1人が現場で作業した場合で考えてみましょう。このケースでは「1人工費=25,000円」です。実際に作業したのは2時間だけだったとしても、1日単位なので25,000円を請求することができます。
もし同じ契約の現場で、2人が3日間作業するとしたら、「6人工」ということもあります。
人工費の請求書記載例
先ほどのケースを請求書に記載する例をお伝えします。
日付 | 内容 | 数量 | 単位 | 単価 (税抜) |
消費税 |
小計 (税込) |
---|---|---|---|---|---|---|
2022/2/28 | 人工費 (2人×3日間) |
6 | 人工 | ¥25,000 | 10% | ¥165,000 |
内容の欄に「人工費」と記載していますが、これだけだと何人が何日間作業したのか分かりません。そのため、カッコで人数と日数も記しています。
数量の欄は「人数×日数」の数字を、単位の欄には「人工」と記載します。あとは単価と消費税、小計を記しましょう。
また、請求書の備考欄に「どの現場での作業なのか」を記しておくと親切でしょう。
建設業の請求書の送り方
請求書をつくり終えたら、取引先へ送りましょう。送り方は「郵送」と「メール」の2パターンです。それぞれについて見ていきましょう。
郵送する場合
請求書を郵送するときには、請求書以外に送付状も同封します。送付状は必須書類ではありませんが、送付状で送付内容を伝えると、受け取り側のミスを防ぐことができます。また、ビジネスマナーの観点からみても、請求書とは別に送付状を用意するのがおすすめです。
【送付状の例文(本文のみ)】
平素は格別のご愛顧を賜り、誠にありがとうございます。
「〇〇工事」に関しまして、請求書を同封にて送付いたします。
内容をご確認の上、〇月〇日までにご対応いただけますよう、何卒よろしくお願いいたします。
引き続き、ご高配のほど何卒よろしくお願い申し上げます。
メールで送る場合
請求書をメールで送る場合は、請求書のファイルをメールに添付して送りましょう。このとき、送付状ファイルを添付する必要はありません。
請求書のファイルは、上書きされるリスクの低い「PDF形式」がおすすめです。ワードやエクセルでつくった請求書を、PDFに変換しましょう。
近年はペーパーレス化が拡がり、請求書のPDFファイルをメールで受け取ったらそのまま受領という企業が多くなってきました。しかし取引先によっては、請求書の原本を郵送しなくてはいけない場合もあります。請求書の送り方については、メールのみか、それとも原本の郵送も必要か、取引先に確認しましょう。
なお、参考までに、請求書をメールで送る場合の例文についてもご紹介します。
【メールで送る場合の例文】
件名:〇月分請求書送付のご案内(添付)
〇〇株式会社
経理部〇〇様
いつもお世話になっております。△△工務店の△△です。
〇月分の請求書をメールにて送付させていただきますので、ご査収の程、よろしくお願いいたします。
ご不明点や添付ファイルが開封できないなどの不都合がございましたら、お手数ですがご一報くださいませ。
また、請求書原本郵送の必要がございましたらお伝えください。
何卒よろしくお願い申し上げます。
あとがき
今回は、建設業の請求書の書き方と送り方、人工費について解説してきました。請求書の作成は少し手間かもしれませんが、ひととおり理解できれば簡単にできるようになります。この記事の内容を参考につくってみてくださいね。