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【建築士法】「建設会社には関係ない」と思っていませんか?建築士事務所登録の要件と方法をを解説

建築コラム

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建築士事務所登録

そのネーミングのせいで見過ごされがちですが、建築士法上の建築士事務所登録は、建設会社であっても必要な場合があります。本記事では、どのような場合に建設会社も建築士事務所の登録が必要になるのか、また、その場合の登録要件と手続きを解説します。

建設会社も必見!建築士事務所の登録が必要な場合

建築士事務所の登録とは

建築士事務所の登録とは、建築士事務所や設計事務所などの新規事業を始めるのに必要な、建築士法上の手続きです。建築士法第23条は、これらの新規事業を開始する場合、あらかじめ事務所を設置する場所の都道府県知事に登録の手続きを行う必要があると規定しています。

建築士法 第二十三条(登録)
一級建築士、二級建築士若しくは木造建築士又はこれらの者を使用する者は、他人の求めに応じ報酬を得て、設計、工事監理、建築工事契約に関する事務、建築工事の指導監督、建築物に関する調査若しくは鑑定又は建築物の建築に関する法令若しくは条例の規定に基づく手続の代理(木造建築士又は木造建築士を使用する者(木造建築士のほかに、一級建築士又は二級建築士を使用する者を除く。)にあつては、木造の建築物に関する業務に限る。以下「設計等」という。)を業として行おうとするときは、一級建築士事務所、二級建築士事務所又は木造建築士事務所を定めて、その建築士事務所について、都道府県知事の登録を受けなければならない。
2 前項の登録の有効期間は、登録の日から起算して五年とする。
3 第一項の登録の有効期間の満了後、引き続き、他人の求めに応じ報酬を得て、設計等を業として行おうとする者は、その建築士事務所について更新の登録を受けなければならない。

e-Gov法令検索│建築士法

登録が必要な場合

条文からも分かる通り、建築士事務所の登録が必要かどうかは、そこが設計事務所か建設会社の事務所かという、いわば看板で決まるわけではありません。そこで実際に取り扱う業務の内容によって決まります。

建築士法第23条は、「設計等」の業務を行う場合に建築士事務所登録が必要と規定しています。
そして「設計等」の中身については、次のように列挙しています。

■建築物の設計
■建築物の工事監理
■建築工事契約に関する事務
■建築工事の指導監督
■建築物に関する調査または鑑定
■建築に関する法令または条例に基づく手続の代理

建設工事の請負を行う場合でも、上述した「設計等」のいずれかを自社で行うときは、建築士事務所登録が必要になります。

複数の支店・支社・事務所などを保有する建設会社の場合、各支店や事務所ごとに個別の登録が必要です。その場合、各事務所が登録の対象となるかどうかについては、建設会社全体の業務内容で判断するのではなく、登録を受けようとする各事務所で扱う業務内容を個別に判断します。

この場合、設計や工事監理を行う事務所はもちろん、建築工事の契約事務だけを行う事務所にも登録が必要なため、注意が必要です。

建築士事務所の登録要件

概要

建築士事務所の登録を行うには、ざっと次の要件があります。

① 事務所となる場所が確保されていること
② 管理建築士が常勤で在籍していること
③ 一定の欠格事由に該当していないこと
④ 会社の場合は登記の目的に「建築物の設計・工事監理」などが含まれること
⑤ 納税の証明が取れること(新設法人は法人開設届を提出していること)

なお、ここでいう建築士事務所の欠格事由には、未成年や成年被後見人など法的判断能力に不安がある場合と、反社会的勢力などコンプライアンス上の問題がある場合とがあります。

建築士法 第七条 (絶対的欠格事由)
次の各号のいずれかに該当する者には、一級建築士、二級建築士又は木造建築士の免許を与えない。
一 未成年者
二 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から五年を経過しない者
三 この法律の規定に違反して、又は建築物の建築に関し罪を犯して罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から五年を経過しない者
四 第九条第一項第四号又は第十条第一項の規定により免許を取り消され、その取消しの日から起算して五年を経過しない者
五 第十条第一項の規定による業務の停止の処分を受け、その停止の期間中に第九条第一項第一号の規定によりその免許が取り消され、まだその期間が経過しない者

建築士法 第八条(相対的欠格事由)
次の各号のいずれかに該当する者には、一級建築士、二級建築士又は木造建築士の免許を与えないことができる。
一 禁錮以上の刑に処せられた者(前条第二号に該当する者を除く。)
二 この法律の規定に違反して、又は建築物の建築に関し罪を犯して罰金の刑に処せられた者(前条第三号に該当する者を除く。)
三 心身の故障により一級建築士、二級建築士又は木造建築士の業務を適正に行うことができない者として国土交通省令で定めるもの

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管理建築士とは

建築士事務所の登録は管理する建築士によって「一級建築士事務所」「二級建築士事務所」「木造建築士事務所」に分かれます。

管理建築士とは、建築士法第24条第1項が規定する、登録を受ける建築士事務所を管理する専任の建築士を言います。この専任の建築士と言えるためには、その建築士が登録を受けようとする事務所に常勤しており、専ら管理建築士の業務を行っていることが必要になります。

建築士法 第二十四条(建築士事務所の管理)
建築士事務所の開設者は、一級建築士事務所、二級建築士事務所又は木造建築士事務所ごとに、それぞれ当該一級建築士事務所、二級建築士事務所又は木造建築士事務所を管理する専任の一級建築士、二級建築士又は木造建築士を置かなければならない。
2 前項の規定により置かれる建築士事務所を管理する建築士(以下「管理建築士」という。)は、建築士として三年以上の設計その他の国土交通省令で定める業務に従事した後、第二十六条の五第一項の規定及び同条第二項において準用する第十条の二十三から第十条の二十五までの規定の定めるところにより国土交通大臣の登録を受けた者(以下この章において「登録講習機関」という。)が行う別表第三講習の欄に掲げる講習の課程を修了した建築士でなければならない。
3 管理建築士は、その建築士事務所の業務に係る次に掲げる技術的事項を総括するものとする。
一 受託可能な業務の量及び難易並びに業務の内容に応じて必要となる期間の設定
二 受託しようとする業務を担当させる建築士その他の技術者の選定及び配置
三 他の建築士事務所との提携及び提携先に行わせる業務の範囲の案の作成
四 建築士事務所に属する建築士その他の技術者の監督及びその業務遂行の適正の確保
(後略)

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管理建築士の選任について、注意すべき点を以下にまとめました。

■管理建築士は、雇用契約等により、事業主体と継続的な関係を有している必要があります。業務委託で来てもらっている社外のスタッフや派遣社員は管理建築士となることはできません。
■管理建築士は、休業日を除いて通常の勤務時間中は、その事務所に勤務していなければなりません。他の会社と掛け持ちをしている人は、原則として管理建築士にはなれません。また、通勤が不可能なほど遠方に住んでいる人も、管理建築士にはなれません。
■一つの建築士事務所の登録に、複数の管理建築士を置くことはできません。
■建設会社など、同一法人で複数の事務所がある場合は各事務所ごとに一人、管理建築士を置く必要があります。
他の法令により専任が義務づけられている役職等に就いている人は、原則管理建築士になることはできません。
(例外として、建設業許可上の専任技術者や宅建業免許上の専任取引主任者などは、管理建築士との兼務が認められる場合があります。各都道府県ごとに判断基準が異なるため、あらかじめ確認が必要です。)

建築士事務所の登録方法

事務所登録は、主に以下のような手順で進みます。建設会社などで複数の支店・支社・事務所がある場合、各支店や事務所ごとに手続きを行う必要があります。

① 証明資料の収集や申請書の作成
② 窓口への提出
③ 手数料の納付
④ 建築士事務所協会での審査
⑤ 登録の完了、登録証の交付

登録窓口は、登録を受けようとする事務所がある都道府県の建築士事務所協会になります。

申請書の提出方法(持参か郵送かなど)、必要な添付書類、手数料、申請から登録証の発行までに必要な期間など、手続きの詳細は各都道府県の建築士事務所協会によって異なります。後々のやり直しなどを防ぐためにも、申請書を作成する前に、あらかじめ登録窓口となる建築士事務所協会へ問い合わせをしておく方が安心です。

日本建築士事務所連合会│都道府県の協会一覧

まとめ

建設会社であっても、設計等を行う場合には建築士事務所の登録を受ける必要があります。登録を怠ると罰則の対象になりますので、支社や支店、事務所を開設される場合には注意が必要です。都道府県によって基準が異なる場合もあるので、判断に迷った場合は管轄の建築士事務所協会や行政書士に相談するようにしましょう。

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