C'Lab

建設業のNET価格とは?異なる2つの意味と使用例を分かりやすく説明

建築コラム

17
建設業のNET価格

建設業の見積書でふと見かける「NET」という文字。
「NETってなんだろう?」と疑問に感じたことはありませんか?

NET価格はさまざまな業界で使われていますが、建設業界での使い方は特殊です。
また、建設業者によって使い方が異なる点にも注意が必要です。

しかし、うまく使えばメリットを得られるNET価格。
この記事では、そんなNET価格の建設業界での使われ方や具体的な使用例、NET価格で見積りを安く見せる方法をお伝えします。
ぜひ最後までご一読ください。

建設業のNET価格とは

NETは「正味」や「実質」という意味の言葉ですが、建設業で使われるNET価格は別の意味で使われます。

建設業のNET価格は、報告書の作成や法定福利費、諸経費、値引きなどをすべて含めた総額のことを指します。

数量の変更がよく発生する建設業の取引。
作業の日数や稼働した人工数など、数が変わることは建設業につきものです。

建設業界にも、変更に応じた実数を単価に掛ける「実数精算」という計算方法はあります。
しかし、天候に影響を受けるなどして数量の変わりやすい建設業において、数の変更ごとに計算を行うのは現実的ではありません。

そのため、すべてを含めた総額「NET価格」を示して契約を結ぶ方式がしばしばとられているのです。

NET価格の使用例

建設業でNET価格を使う具体例を、会話形式でご紹介します。

例えば、測量の金額交渉でNET価格を使った場合、以下のようなやり取りが行われます。

【測量の金額交渉時に、160万円の見積書を提示】

A「見積りの160万円は、NETいくらまで下がりますか?」
B「天候・日数の条件を含めて、NET152万円ではいかがでしょうか?」
A「そうですか。ではその価格でお願いします」
B「かしこまりました。ありがとうございます」

上記のケースでは、見積書では「12日現地測量」ということで予定しています。
しかし、たとえ20日かかったり7日で終了したりしても価格の増減はせず、152万円での精算となります。

言い換えるとNET価格は、企業努力によって作業の期間を短くすれば、稼働日数を減らして利益を出せる契約形態なのです。

ただし、もし天候の影響で作業期間が長くなったとしても、取り決めた価格の変更はありません。

稼働した期間などの実数に合わせずに、見込みで計算するのがNET価格です。

見積りに影響を与えるNET価格

建設業のNET価格は、使い方によっては見積りを安く見せることができます。

【見積りを安く見せるNET価格の例(測量のケース)】

測量地点(測点)が10か所の契約で、実際の状況から8か所でよいと予想できる場合、「10測点の測量価格を20%値引きした」という見積りを出せます。

・競合会社(実数精算)
10測点 × 単価3万円 = 計30万円

・自社(NET価格)
10測点 × 単価3万円 = 計30万円 ▲値引き6万円 改計24万円

上記の例の場合、実数精算ではなくNET価格であるため、実際は6測点でも9測点でも価格は変化しません。

万が一9測点になった場合は自社の利益は減ってしまうため、リスクはあります。
しかし、7測点以下になる場合は利益が増えます。

また、安く見積りを出せる分、受注の可能性が高まるという点もメリットです。

建設業のNET価格の意味は業者によって変わる?

ここまで、建設業のNET価格の基本的な使い方を見てきましたが、実は建設業者によって使い方が変わる場合があります。

建設業のNET価格|その他の使い方は2種類

建設業者によって異なるNET価格のその他の使い方は、以下の2つです。

1.受注業者の原価
手数料や、元請けから下請けへのマージン(利ざや)分などを差し引いた、工事のみの価格。

2.値引き後の最終価格
「この価格までは値引きに応じることが可能」という最低ラインの価格。

建設業者への確認が必要

NET価格をどのような意味で使っているのかを知ることは、よりよい価格交渉をするために必要な判断材料です。

見積書にNET価格の記載がある場合は、誤解から生じるトラブルを防ぐために、業者へ確認することをおすすめします。

あとがき

建設業のNET価格は、作業日数などの変更があった場合でも計算を逐一やり直すことなく、見込みで計算した価格です。
ただし、建設業者によってはNET価格の使い方が異なる場合があります。

天候の影響などによる数量の変動がよくある建設業界では、ほかの業界と比べてNET価格の使われ方が特殊です。

NET価格を使い慣れるまではややこしく感じるかもしれません。
しかし、上手にNET価格を使いこなせれば、見積りを安く見せたり精算の際に得をしたりできます。

やり取りをする相手の業者によく確認しながら、NET価格をうまく利用しましょう。

当記事を読まれた方には、以下の記事もおすすめです。

関連記事:建設仮勘定って何?減価償却は必要?固定資産税はかかる?建設仮勘定に関するアレコレを解説します

17