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玉掛け合図まとめ!主な合図と、クレーン運転者と玉掛け合図者が気をつけたいポイント

建築コラム

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玉掛け合図

クレーンを使った玉掛け作業では、玉掛け合図が欠かせません。

「玉掛け合図にはどんな種類がある?」
「玉掛け合図をする上で注意することは?」

今回は、そんな疑問を解決すべく、玉掛け合図について分かりやすくまとめました。

玉掛け合図とは?

それでは、はじめに玉掛け合図の概要を見ていきましょう。

玉掛け作業

玉掛け合図についてお話しする前に、まずは玉掛け作業について少しご説明します。

玉掛け作業とは、吊り具を使用して荷を吊り上げる準備をしたり、外したりする作業のことをいいます。

玉掛け作業に含まれるのは、クレーンを使った荷役運搬の際に、クレーンのフックに荷を吊り、吊り上げ・移動・設置・片づけをおこなうことや、クレーン運転者に動きや音で移動先を伝える合図などです。

特に、建設現場などで使われるクレーンは、吊り上げた荷物を操作するにあたり、距離感を誤ることは許されません。この時に欠かせないのが、今回のテーマ・玉掛け合図です。

玉掛け合図

玉掛け合図は、クレーン運転者に対して、クレーンで吊った荷をどこへ移動させるべきなのかを示すサインです。これには、手や笛、旗、声(無線)を使います。

万が一、この合図に失敗すると、クレーン運転者は距離感をつかむことができず、事故につながってしまうこともあります。そのため、玉掛け合図をする側はもちろんのこと、クレーンを運転する側も、合図の内容を正しく理解しておく必要があります。

さまざまな種類が存在する玉掛け合図。習得の機会として一般的なのは、玉掛け特別教育、技能講習、クレーン運転士免許の資格試験などです。

玉掛け合図について定めた条文

なお、「クレーン等安全規則」では、次のように定められています。

・事業者は、クレーンを用いて作業をおこなう時は、クレーンの運転について一定の合図を定め、合図をおこなう者を指名して、その者に合図をおこなわせなければならない(ただし、クレーンの運転者に単独で作業をおこなわせるときは、この限りでない)
・作業に従事する労働者は、合図に従わなければならない

クレーン等安全規則 第25条|eGov法令検索

クレーン運転者が運転を止めるべきケース

クレーン運転者は、次のような場合には直ちに運転を止め、事故を防止する必要があります。

・合図が不明瞭だと感じた場合
・2人以上から合図をされた場合
・指名者以外から合図された場合

手サインによる玉掛け合図

ここからは、玉掛け合図の種類についてお伝えしていきます。

玉掛け作業時は、クレーン運転者に意思を伝える目的で、手を使って合図をおこなうことがあります。手による合図のポイントは、決められたポーズを確実に取ることです。手を使用した主な合図を以下にまとめました。

手サインによる玉掛け合図

・呼び出し:高く片手を上げる
・位置の指示:なるべく近くの場所で指をさす
・巻き上げ:片手を高く上げて輪を描く
・巻き下げ:腕を水平に上げ、手のひらを下にして振る
・ジブ(ブーム)上げ:親指を立てて上に突きあげる
・ジブ(ブーム)下げ:親指を立てて下に向け、突きさげる
・水平移動:手のひらを移動方向へ示す

笛による玉掛け合図

笛を使用した合図は、笛を鳴らす間隔などクレーン運転者に意思を伝えます。

ただし、笛のみで合図を送ることは禁じられており、手による合図の補助として使用します。その理由は、笛の音のみではクレーン運転者が聞き間違えてしまうことが多く、事故につながる恐れがあるためです。

笛を使った主な合図を、以下にまとめました。

笛による玉掛け合図(手サインの補助として使用)

・呼び出し:長く一声笛を吹く
・巻き上げ:短く間をおいて二声笛を吹く
・巻き下げ:短く間をおいて三声笛を吹く
・微動:指示前に短く一声笛を吹く
・停止:少々長めに、短く一声笛を吹く
・急停止:短く連続的に笛を吹く

旗による玉掛け合図

旗による合図は、手サインや笛の合図では判断しづらい広い場所で使われます。この合図の効果が特に発揮されるのは、合図者と運転者の位置が遠く離れている造船所などです。

以下は、旗による主な合図をまとめたものです。旗を動かす時は、クレーン運転者に伝わるように大きく動かしましょう。

旗による玉掛け合図

・呼び出し:旗を高く揚げる
・位置の指示:荷の近くに移動し、旗で示す
・巻き上げ:旗を揚げて輪を描く
・巻き下げ:旗を水平にして左右に振る
・ジブ(ブーム)上げ:旗を頭部に乗せ上に突きあげる
・ジブ(ブーム)下げ:旗を頭部に乗せ下に突きさげる

声(無線)による玉掛け合図

声を使用した合図は、広い建設現場や高い建造物をつくる際、無線やトランシーバーを利用して伝えます。

声による主な合図を以下にまとめました。なお、まとめの中に登場する「コ」はクレーンのフックを、「オヤ」はクレーンのジブ(ブーム)部分を表しています。

声(無線)による玉掛け合図

・巻き上げ:「(コ)ゴーヘイ」「巻いて」「巻き上げて」
・巻き下げ:「(コ)スラー」「下げて」「降ろして」「巻き下げて」
・ジブ(ブーム)上げ:「オヤゴーヘイ」「起こして」「ブーム上げて」
・ジブ(ブーム)下げ:「オヤスラー」「寝かせて」「伏せて」
・少し移動:「チョイ」「チョイチョイ」
・伸縮:「伸ばし」「縮め」「ブーム出して」「ブーム縮めて」

豆知識になりますが、「ゴーヘイ」は、英語で「進む」を意味する「go ahad」に由来しています。また、「スラー」は「下げ」の意である「slack away」が形を変えたものです。

また、声を使った玉掛け合図は、ひとつの言葉のみ使われる場合だけでなく、2つの言葉を組み合わせることもあります。

玉掛け合図をおこなう上で注意したいこと

最後に、玉掛け合図をおこなう際に注意したいことについて見ていきましょう。

実際のところ、これまでご紹介してきた玉掛け合図をそのまま使っているケースは少なく、大なり小なりその現場特有のアレンジが加えられている場合が多くあります。

そのため、玉掛け作業前には必ず、クレーン運転者と玉掛け合図者の間で、合図の内容確認を密に実施しましょう。

また、荷やクレーンの重量は適切であるかどうかや、経路の確認もしっかりと実施することも大切です。そして、玉掛け作業中に荷物落下の恐れが少しでもあれば、即刻作業を中断してください。

玉掛け合図者が気をつけるポイント

玉掛け合図者は、以下の5つに注意して合図をおこないましょう。

1.クレーン運転者が確認できる場所で合図をおこなう
2.玉掛けをおこなう経路の安全確認をする
3.作業中は吊り荷を監視し、不安定になったら作業を中断する
4.着地場所の安全確認をする
5.クレーン運転者には合図を復唱・確認してもらう

クレーン運転者が気をつけるポイント

玉掛け合図を見て運転を実施するクレーン運転者が気をつけるポイントは、次の6点です。

1.玉掛け作業前に点検する
2.地盤を確認し、弱ければ補強する
3.運搬経路・作業範囲を確認し、障害物を除く
4.吊り荷の下に作業員が入り込んだら作業を中止する
5.運搬中に定格荷重を超えそうな場合は作業を中断する
6.玉掛け合図者の合図を復唱して確認する

あとがき

今回は、玉掛け合図の概要や種類、気をつけたいポイントについてお伝えしてきました。

玉掛け合図では、クレーン運転者と玉掛け合図者が、事前に綿密な確認をおこなっておくことが大切です。確認や打ち合わせを徹底し、安全な作業をおこないましょう。

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