日本で産業廃棄物の不法投棄といえば建設廃棄物といっていいほど、社会的にも大きな問題です。建設廃棄物の不法投棄を減らすために、平成12年に制定されたのが建設リサイクル法です。
建設業界に携わる方にとって、業務上関わる機会もあるこの法律がどんなものかご存知でしょうか?その具体的な内容や事前の届出など、手続きに必要な知識を分かりやすく解説します。
目次
建設リサイクル法とは?
建設リサイクル法とは、どのような法律なのでしょうか。制定された背景となる日本の建設廃棄物の不法投棄の現状、建設リサイクル法の概要について解説します。
日本の建設廃棄物の不法投棄
産業廃棄物の不法投棄については、内容は建設廃棄物だけではありません。しかし、環境省が平成28年度、平成29年度に行った調査によると、全体の8割ほどを建設廃棄物が占めています。そのため、産業廃棄物=建設廃棄物といってもおかしくないのが現状です。
建設廃棄物の不法投棄が多い理由は、以下の3つが挙げられます。
・処分費用が高額であること
・短い期間に大量の廃棄物が発生してしまうこと
・建設業界の下請け構造
建設廃棄物処理を担当するのは下請けの業者です。建設業では2次3次、時にはそれ以下の下請け業者があり、関わる業者が増えれば増えるほど、管理はしにくくなるため、不法投棄のリスクが高くなります。
また、下請け業者としては利益の薄い現場で高額な処分費用は頭が痛い問題でしょう。工事の建設業界にとって一部ではなく、全体が関わっている問題と言えます。
建設リサイクル法の概要
建設リサイクル法は平成12年5月31日に制定されました。この法律によって、建築物等の解体工事や新築工事や建設工事などを行う際、受注者は廃棄物となる資材の分解や再資源が義務となりました。
発注者は各自治体に対象工事を行う際は、「分別解体計画書」等の届出をします。計画は審査され、一定の基準を満たさない時は変更命令がでます。
受注者基準に基づき、廃棄物を分別しつつ解体工事を実施。木材、コンクリート、アスファルトなど、可能なものは再資源化を行い、そうでない場合は、焼却、埋立処分を行います。
建設リサイクル法の基準
建設リサイクル法の対象となる特定建設資材の種類、建設工事の規模は以下の通りです。
対象となる特定建設資材
「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(平成十二年法律第百四号)」の第一章総則5では特定建設資材を定義しています。
「特定建設資材」とは、コンクリート、木材その他建設資材のうち、建設資材廃棄物となった場合におけるその再資源化が資源の有効な利用及び廃棄物の減量を図る上で特に必要であり、かつ、その再資源化が経済性の面において制約が著しくないと認められるものとして政令で定めるものをいう。
具体的には、コンクリート、コンクリート及び鉄から成る建設資材、木材、アスファルト・コンクリートがそれにあたります。
対象となる建設工事の規模
建設リサイクル法の対象となる建設工事は以下の通りです。
1建築物の解体工事では床面積80m2以上
2建築物の新築又は増築の工事では床面積500m2以上
3建築物の修繕・模様替え等の工事では請負代金が1億円以上
4建築物以外の工作物の解体工事又は新築工事等では請負代金が500万円以上
消費税の関係で金額を間違ってしまい届出を忘れてしまうケースもあります。税込みの金額なのでその点を注意してください。
建設リサイクル法における工事内容事前届出の流れ
建設リサイクル法では、現場において適切な資材の再資源化、処理を行うだけではなく、事前に都道府県や市区町村に対して、発注者が届け出を行う必要があります。具体的には、以下のような流れになります。
(1)工事受注者が発注者に対して、分別解体の計画などの説明を行い、書面を交付する。
(2)発注者が工事着手の7日前までに都道府県知事に対し、分別解体計画書などを提出する。
(3)受注者は、リサイクルを完了した後に受注者に完了の報告と実施状況の報告を行う。
建設リサイクル法のための必要な書類
建設リサイクル法のための届出書など、必要となる書類は各都道府県、市区町村ごとに用意されており、自治体のホームページにてダウンロード可能です。事前の届出の締め切りが7日前であることは共通しています。
必要な書類や提出の流れの詳細は、各都道府県、市区町村ごとに異なる点もあります。必ず提出先の都道府県、市区町村に詳細を確認してください。
例えば、札幌市の場合は、「届出書」「分別解体等の計画等」、その他に「工程表」「図面」「案内図」「再資源化等に関する計画書」などが必要です。
尚、令和元年6月1日から「解体工事業」の許可を受けていない場合は、解体工事を行えなくなりました。その点も合わせて注意する必要があります。
東京ガスでも届出書未提出!忘れてしまったら?
届出未提出のまま該当の工事を行った場合、「建設リサイクル法」違反となってしまいますが、2015年に東京ガスではガス管埋設工事において299件もの届出書未提出が発覚しました。
東京ガスによると、単なる手続き忘れ、金額間違えなどで、多数の工事が行われる場合、ミスが発生しやすいという事情もあるようです。
東京ガス株式会社|建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)に基づく届出書の未提出について
建設リサイクル法違反の罰則は、内容によって様々ですが、最も軽いもので「10万円以下の罰金」、最も重い場合は「1年以下の懲役50万円以下の罰金」が科せられます。
あとがき
建設リサイクル法の事前の届出は工事着手の7日前までです。必ずそれまでに書類をすべて用意しましょう。意図とせず忘れてしまうことも少なくないようなので、事前に建設リサイクル法の基準をしっかり把握しておくことが大切です。