「増益しているにもかかわらず、大手ゼネコンの株価が低いのはなぜだろう?」
このような疑問を持ったことがある方は少なくないでしょう。
今回は、大手ゼネコンの株価が低迷している理由を解説します。
また、今後の見通しもご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
大手ゼネコンの株価は低い?
以下の表は、主なゼネコンの株価バリュエーションです(2022年11月1日時点)。
コード | 銘柄名 | 株価:円 | 配当利回り | PER:倍 | PBR:倍 |
---|---|---|---|---|---|
1801 | 大成建設 | 4,045 | 3.21% | 11.98 | 0.94 |
1802 | 大林組 | 952 | 4.41% | 8.98 | 0.71 |
1803 | 清水建設 | 741 | 2.83% | 10.62 | 0.67 |
1812 | 鹿島建設 | 1,404 | 4.13% | 8.13 | 0.72 |
1820 | 西松建設 | 3,605 | 7.91% | 8.89 | 0.95 |
1861 | 熊谷組 | 2,507 | 5.19% | 6.94 | 0.69 |
1893 | 五洋建設 | 734 | 3.27% | 9.97 | 1.34 |
上の表の通り、ゼネコン株には、株価指標で見て割安な銘柄が多くあります。
利益や配当はしっかりと出しているにもかかわらず、将来に対する不安感から株価が低迷。
そのため、株価バリュエーションで見たときに、結果として割安となっているのです。
建設株が低迷する理由
2018年以降、建設株は利益が増えても低迷してきました。
ゼネコンの株価が低いのは、一体なぜなのでしょうか?
建設株の低迷の主な理由は、以下の4点です。
理由1. 建設業の仕事減少のイメージ
コロナ・ショックの影響や都心再開発ブームのピークアウト、東京五輪終了などから、世間には建設業の仕事が減ったイメージを持たれてしまいました。
理由2. 不正建築の発覚
建設業界で、耐震偽装などの不正建築が次々と見つかったことも、建設株が売られた要因です。
理由3. 談合問題の発生
リニア中央新幹線の駅新設工事を巡る談合問題が、大手ゼネコンの間で起きてしまいました。
理由4. 一部価格の引き下げ
東京五輪や、豊洲(築地新市場)関連の工事で価格が高過ぎると問題視する動きが社会的に広がり、一部価格の引き下げが起こりました。
上記のような、よいニュースとは決して言えない悪材料が、建設業界の株価にネガティブに影響したと言えるでしょう。
国土強靭化事業の状況次第でゼネコンの株価は変動
国は、国土強靭化の推進に取り組んでいます。
ゼネコン各社のPER(予想株価収益率)は割安感が生じていますが、国が国土強靭化計画に対して示す経済対策の内容によって、株価が変動する可能性は大きいでしょう。
国土強靭化とは?
国土強靭化とは、大規模な自然災害などに備えることを目的とした、国の取り組みです。
国は、事前防災や減災、速やかな復旧・復興につながる施策を計画的に行い、強くしなやかな地域づくりを進める考えです。
自然災害への備え
近年は、毎年のように自然災害が各地で発生しています。
日本では、地震・津波による被害防止のためにさまざまな対策を講じてきました。
しかし、その対策は十分とは言えません。
なぜなら、気候の変動による影響のため、災害が激しく、頻繁になっているためです。
また、将来的に発生すると予想される南海トラフ地震・首都直下地震への備えも非常に重要です。
インフラの老朽化
日本にある道路や橋などのインフラの多くは、1950~1970年代の高度経済成長期に整備されたものです。
そのため、老朽化が非常に目立っています。
インフラ対策を適切に行わない場合、社会的なコストの増大は避けられません。
また、いざというときに、行政や社会経済が機能しなくなってしまう可能性があります。
今後の数十年で、ますます進行するであろうインフラの老朽化。
老朽化対策は差し迫った重要課題です。
公共事業の予算はアップ
インフラの老朽化への適切な対策が求められている現在、国は、国土強靭化を推進しています。
国は、2018~2020年度の期間で実施した「国土強靭化3か年緊急対策」に続いて、2020年12月には「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」を決定。
・激甚化する風水害や切迫する大規模地震等への対策
・予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けた老朽化対策
・国土強靱化に関する施策を効率的に進めるためのデジタル化等の推進
上記の3点を取り組みの柱として掲げ、2021~2025年度の5年間で、およそ15兆円を投じる方針です。
国土交通省は、2023年度の公共事業関係費の概算要求で、2022年度当初予算比で19%上回るおよそ6.2兆円を計上。
国土強靭化への積極的な姿勢がうかがえます。
大手ゼネコンの物色買いが活発化する可能性も
国土強靭化に関連する代表的な企業は、やはりゼネコンです。
特に、年間売上高が1兆円を超える大手ゼネコンは、国土強靭化にからんだ大型案件の受注が期待されています。
しかし、建設業界は、協力会社も含めた場合はすそ野が非常に広い業界です。
そのため、国土強靭化に関連する企業は広範にわたると言えます。
道路・橋・河川・港湾などの専門工事に特化した企業や、建設コンサルタント、建機メーカーなど、さまざまな企業が、国土強靭化に協力会社として関わるでしょう。
ゼネコン各社のPER(予想株価収益率)は、確かに割安感が生じています。
しかし、公共事業に対する国の政策や、ゼネコンの受注状況に応じて、物色買い(株価の値上がりが期待される銘柄を探し出して買うこと)が活発化する可能性はあるでしょう。
あとがき
今回は、大手ゼネコンの株価が低い理由や、今後の見通しについてお伝えしました。
国の政策や社会状況の影響を受けやすいゼネコン株の状況。
日々のニュースにアンテナを張りながら、今後の動向に注目しましょう。