住宅などを建設する際には、木材を使用する機会が多くあります。しかし、数多くある木材について、種類や特徴をすべて理解しているという方は少ないのではないでしょうか。
ここでは、建築に使われる木材の基礎知識や、よく利用される木材7種類についてまとめてみました。
建築用木材にまつわる基本の知識
まずは、建築に使われる木材について、基本的な知識をお伝えしていきます。
建築用木材を3つに大別
住宅などの建築に使われる木材は、大別すると構造材・造作材・床材という3カテゴリに分類できます。さらに細かくいうと建具材・下地材なども存在しますが、今回は基本的な知識として、前述の3つについて見ていきましょう。
構造材
住宅などの骨組みにあたる部分に使われる木材を、構造材といいます。柱や筋交い(すじかい)、梁(はり)、桁(けた)、土台など、建築物の最も重要な部分です。
造作材
建物の内部に使われる木材を造作材と呼びます。一般的には、ドアや窓枠、巾木(はばき)などに使われています。
床材
3つ目は、フローリングなどに使われる床材です。床材は人に直接触れる部分であるため、こだわりを持って選ぶケースも多くなっています。
無垢材と集成材の違いとは
よく耳にする「無垢材」と「集成材」ですが、それぞれどのような木材なのでしょうか。
無垢材
伐採した1本の樹木から切り出した木材は、無垢材と呼ばれます。「天然の木材」とイメージすると分かりやすいでしょう。無垢材は生きているため呼吸を行い、湿度を自然に調節する力を持っています。そのため、結露を起こしづらく、カビ・ダニの発生を抑えることができます。
しかし、天然の木材であるがゆえに、後年になって割れたり反ったりすることが多く、それが建物の不具合を引き起こすことも。また、1本の樹木から切り出すために希少価値が高く、次にご紹介する集成材と比べて割高であるというデメリットも持っています。
集成材
集成材は、複数の木材に接着剤をつけてプレスし、ひとつに組み合わせた加工木材です。柱や梁(はり)、室内の造作材として使用されています。
集成材は大きな材を作れるだけでなく、後から反りや割れが起こることが少ない木材です。また、無垢材と比較すると1.5倍高い強度を持っています。集成材の強度は安定しているため、強度計算がしやすいというメリットもあります。
ただ、集成材の歴史は浅く、実際の耐用年数などは未知数となっています。また、輸入や加工を要するため、中には割高になる集成材もあります。
なお、ひと昔前の集成材は、木材を組み合わせる接着剤に有害物質が含まれていたため、シックハウス症候群の原因であるとして悪いイメージを持たれていました。しかし、現在の接着剤には有害物質は全く含まれていないため、昔のように人の身体に悪い影響を与える不安はなくなりました。ただし、今でも昔のイメージを持っている人は多く、集成材を避けるケースもあるようです。
主な建築用木材を7種類ご紹介
ここからは、住宅などの建築で実際に使われている、主要な木材7種についてご紹介していきます。
ケヤキ
ケヤキは耐久性に優れ、木目が美しいという特徴を持っています。古来より、日本で最良の広葉樹として扱われてきました。
堅く丈夫であることから、大黒柱や床柱など、建物の主要な部分の木材として使用されています。美しく強いケヤキを建物のあらゆる所に使いたいところですが、ケヤキは高級木材であり、加工技術も要するため、主要かつ人の目につきやすい所に部分的に使用するのが一般的です。
ヒノキ
ヒノキは日本を代表する建築木材です。活用される部分は多岐にわたり、構造材としてだけではなく、内装にも広く使われています。伐採後からおよそ200年は強度が上がるといわれ、非常に耐久性の高い木材です。そのため、神社仏閣の建築時にも重宝されています。
また、水や湿気にも強く、菌や虫に対する耐性も高いため、土台や柱に使用するとその特徴を活かすことができます。ヒノキの香りにはリラックス効果があるため、浴室に使われることもあります。
ただし、とても高価な木材であるため、限定的な使用に留める工務店やハウスメーカーも存在するようです。
松(パイン)
住宅メーカーなどでよく耳にする「パイン材」が、俗にいう松材です。そのほとんどは海外から輸入されたものとなっています。松には赤松(レッドパイン)、イエローパイン、ホワイトパインなど多くの種類があり、原産国や特徴が異なります。
一般に、建築用木材としてよく使われるのは赤松(レッドパイン)です。少し赤みがかった色合いが印象的で、木目・節目が美しいことから、化粧梁(けしょうばり)やフローリングへの使用が多くなっています。
比較的柔らかく、やや燃えやすいため、強度を必要としない部分や火気のない所に使用するのが向いている木材です。
スギ
スギは木材の中では柔らかい部類に属しているため、加工しやすいという特徴があります。構造材のみならず、造作材、建具など、様々な部材で使われています。ただし、その柔らかさは傷がつきやすいという面も兼ね備えているため、傷を避けたいフローリングなどには向いていないともいえます。
また、スギは産地によって名前が分けられていて、「吉野杉」「秋田杉」「屋久杉」などがよく知られています。ヒノキに比べると安価に仕入れることができるスギは、古来から現在まで高い需要を持つ木材です。
ヒバ
ヒノキ、スギに比べると知名度はやや劣りますが、ヒバも日本国産の良材です。ヒバを「アスナロ」「アテ」という別名で呼んでいる地域もあります。
特に有名なのは青森ヒバ。湿気への耐性や、殺菌効果のある樹脂が特徴です。この殺菌効果によって、シロアリや腐食に強い木材として重宝されています。そのためヒバが使用されるのは、シロアリ被害を避けたい土台部分や通し柱となっています。
クリ
蓄積量が減ってきた近年は、貴重な存在となりつつあるクリ。一説によると、日本人は縄文時代からクリを建築木材として利用していたともいわれ、古くから日本の住宅に多く用いられてきた木材です。
クリは、堅くて丈夫な点、水に強い点が特徴です。また、虫害にも耐性があります。そのため、建物の土台部分や台所回りなどに使われています。
ただし、とても硬い木材である半面、乾燥に弱くて割れやすいという性質も持っているため、建築用木材として乾燥させる際には、高度な技術を要します。
ナラ
ナラは海外ではオークと呼ばれています。比較的安い価格で仕入れることができるため、広く使用されています。
ナラの特徴は、傷がつきにくく水に強い点です。また、木目もよく出ることから、フローリング材として使われることが多くあります。なお、ナラはウイスキーの樽などにも利用されています。強度の高さを物語っていますね。
ホワイトオークやレッドオークなど、種類によって色合いや木目の柄が異なっているので、消費者にとっては選ぶ楽しさを味わえる木材であるといえます。
あとがき
木材は、建築物の様々な部分で、それぞれの性質を活かして使用されています。住宅などを建てる際には、木材の種類や特徴について理解し、最適な木材を選びたいですね。
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