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建設業界に入る前に知っておきたい!業界の役割と独自の構造

建築コラム

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働く前に知っておきたい 建設業界の基礎知識 企業形態と重層下請構造

住宅やマンション、店舗や公共施設や道路など、街づくりに携わるのが建設業です。漠然としたイメージはあるけれど、業界全体の構造やその具体的な役割が、はっきりと分からないという方もいるのではないでしょうか。

今回は、建設業界の基礎知識となる、業界の役割や業界の特長である「重層下請構造」企業形態」について解説します。

建設業が担う役割

大きく分けて建設業には、以下のように「土木」と「建築」の分野があります。

土木

建物以外の建設工事一般が土木工事です。具体的には、道路、橋、ダム、トンネル、空港、建物を建てる際の基礎工事、外構工事など。場合によっては下水道の配管工事も土木工事とされます。

土木には様々な種類の工事がありますが、全体的に規模が大きい現場が多いです。それぞれ専門知識を有する職人がチームになって働き、用いる機械には最新技術が導入されています。

建築

一般的に、地面に建つ上物部分を作ることを建築と言います。戸建住宅、マンション、アパート、店舗、病院、公共施設などです。要するに、屋根があり、壁があり、人々が安心して過ごせる場所を作ることを指します。

建物を新設するだけではなく、移転、増築、改築なども建築に当たります。

建設業の「重層下請構造」とは?

日本の建設業は「重層下請構造」になっています。

規模の大きな工事の場合、まず頂点である「ゼネコン」と呼ばれる建設会社が国や民間企業などから受注を受け、専門工事を請け負う下請け業者である「サブコン」に発注。さらにサブコンが現場の職人を抱える事業者に発注します。

つまり、元請け会社であるゼネコンの社員は現場で工事を施工しません。第二次、さらに下流にある第三次下請会社、場合によっては第四次下請会社の職人が施工しているのです。

「重層下請構造」が生じた理由

何故、元請けであるゼネコンで直接工事を施工しないのか。自社で技術者を雇って工事を行ったほうが効率も良いのではないか。そう思われる方もいることと思います。

実はゼネコンでも以前は現場の職人を直接雇用していました。現在、多くが直接雇用しないのは以下のような理由があります。

技術の専門分化

技術の進歩と共に、その分野や技術に特化した事業社が多数現れたため。

景気の悪化による事業量の減少

バブル崩壊やリーマンショックなど、景気が悪化するたびに事業量は減るため、外注することで人件費を減らし、リスクを軽減しているため。

「重層下請構造」の問題点

建設業の重層下請構造は常態化していますが、様々な弊害が指摘されています。

発注者の不利益になる

重層下請構造は、発注者にとっては好ましいものではありません。何故なら、元請け業者の実績や技術を信頼して発注したにも関わらず、あずかり知らぬ下請け会社にすべて工事されてしまう可能性があるからです。
そのため、工事の品質面に問題が生じ、受注者と施工者が異なることで、責任の所在が不明瞭にもなってしまうことも考えられます。

下請けの対価が減少する可能性がある

「重層下請構造」の場合、仲介する会社が実際の業務以上の利益を得てしまい、現場で仕事を行う会社や職人の対価が減少してしまう可能性があります。

「重層下請構造」の弊害を緩和するための対策

数々の弊害が指摘されている「重層下請構造」に対し、国土交通省も対策を打ち出しています。

建設業法により、一括下請けは禁止

一括下請けとは、元請け業者がすべての業務を下請け業者に外注し、主体的に関わらないことを指します。現在は建設業法二十二条によって、このような一括下請けは禁止され、守らなかった場合は罰則を課せられるので頭に入れておきましょう。

(一括下請負の禁止)

第二十二条 建設業者は、その請け負つた建設工事を、いかなる方法をもつてするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならない。


建設業法

元請け業者は、各現場に主任技術者や責任者を配置し、実質的に施工に関わらなくてはいけません。施工計画の作製、工程管理、品質管理、安全管理、技術的指導を行う義務があります。

建設業の企業形態

建設業には複数の形態の企業があります。

ゼネコン

ゼネコンとは、「ゼネラルコンダクター」の略です。「General=全体的な」「Contractor=請負人、土建業者」、つまり、総合建設業者のことを指します。
明確な定義はありませんが、以下のような条件に当てはまる建設業者が一般的にゼネコンと呼ばれています。

工事の施主より受注し、「設計」「施工」「研究」を自社で行っている
年間売上高が数千億以上の規模であること。

ゼネコンの中でも、鹿島建設、清水建設、大成建設、大林組、竹中工務店の5社はいずれも年間売上高が1兆円以上。スーパーゼネコンと呼ばれ、業界をリードする立場にあります。

サブコン

ゼネコンより専門工事を請け負う第一次下請業者がサブコン。サブコントローラー「Subcontractor=下請け業者」の略です。

サブコンは土木工事や建築工事一式を請け負いますが、さらに、電気工事や空調工事など、様々な専門業者に工事を発注します。

ハウスメーカー

ハウスメーカーという呼称に関してもはっきりとした定義はありませんが、ハウスメーカーには以下のような特徴があります。
・自社で建築資材を製作する工場を持っているため、規格化された建築資材を用いて住宅を建築している。
・建築資材の大量生産を行い、全国規模で建設業を展開している。
独自の設計規格があり、自由設計であっても設計の自由度には限りがある。

工務店

ハウスメーカーよりも規模が小さく、地域密着型で運営されている建築会社が工務店と呼ばれています。
同じ工務店でもモデルハウスを持っていたり、自社ブランドを展開したりと比較的規模が大きいこともあれば、限られた地域のみで受注しているケースもあり、様々です。

設計事務所

一級建築士の資格を持つ建築家による事務所で、主に建築物の設計を行います。建築家の経験や知識や個性を活かしたデザインを重視した建築が特徴です。実際の施工についても直接設計事務所がチェックしています。

あとがき

一口に建設業と言っても、様々な業務があります。「重層下請構造」の弊害は働く人にも関りが大きいですが、自治体によっては下請けに制限を設けるなど、最近では改善への取り組む動きもあり、今後、変わっていくかもしれません。

建設業に携わる方は、そういった業界全体の特長や動きを踏まえてキャリアを積み重ねるとよいでしょう。

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