あらゆる業界でICT化が進む近年、特に注目を浴びているのが建設業のICT化です。
ICT技術は建設業界が抱えるさまざまな問題を解消・緩和し、各社に利益をもたらします。
この記事では、建設業のICTの概要や、IT・i-Constructionとの違いを解説します。
また、建設業におけるICT化したいポイントや、具体的なICT化事例もご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
建設業のICTとは?
建設業におけるICTについて、ICTの定義やITとの違いを踏まえながら説明します。
ICTとは
ICT(Information and Communication Technology)とは、IT技術の中でも主にコミュニケーションや情報共有の技術を指す用語です。
また「ICT化」とは、コミュニケーション・情報共有技術を使い、業務を効率化することを言います。
ITとICTの違い
近年、ITとICTは下記の通りに使い分けられています。
IT |
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ハードウェアやソフトウェア、インフラなどのコンピュータ関連技術そのもの |
ICT |
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情報を伝えることを目的とした技術の活用方法や方法論 |
例えば、学校教育の場合、授業に用いる教材を電子化するのは「IT化」で、電子化した教材やパソコン、タブレットを使った授業管理の仕組みづくりは「ICT化」であると言えます。
建設業のICT化
建設業のICT化には、映像システムによる業務の遠隔指示や、スマートフォン・タブレットを使った図面確認などが挙げられます。
例えば、施工現場で「ちょっと図面をチェックしたい」という場合も、紙ではなくデジタル端末を用いれば、情報共有や修正を素早く行うことが可能です。
建設業のICT化とは、ICT技術を生かして業務を効率化し、人手不足の解消や生産性アップを図ることであると言えるでしょう。
建設業のICTと「i-Construction」はどう異なる?
結論から言うと、建設業のICT化とは、i-Constructionの手段の1つです。
i-Constructionとは、国交省が2016年から推進している取り組みで、建設業界の働き方改革を推し進め、生産性を向上させる方針のことを指します。
具体的なi-Constructionの施策の3本柱は以下です。
・ICTの全面的な活用
・全体最適の導入
・施工時期の平準化
上記の通り、i-Constructionでは手段の1つとしてICT化を捉えています。
ICT化したい建設業の3つのポイント
ここでは、建設業においてICT技術を採り入れたい3つのポイントをご紹介します。
ポイント1. 情報の共有・管理
情報の共有や管理は、単体では多くの時間を必要としないため、軽視されやすい業務です。
しかし、準備の時間や付随する作業時間の積み重ねを考慮すると、ICT化によって効率化したいポイントです。
とりわけ、台帳や図面を紙で管理している場合、電子データに変えることでインク・紙代のコストを削減できます。
また、勤怠管理をパソコンへの手入力で行っている場合、アプリの導入で大幅に手間を減らすことが可能です。
ポイント2. 安全・健康管理
現場での身の安全や体調不良は、本人や周囲の人々がどれだけ気をつけていても、避けられない場合があります。
安全や健康の管理を人間の力だけで行おうとすると、限界があるのが現実です。
そこで、建設業の安全・健康管理の分野でも、ICT技術を導入することが大切です。
安全面でのICT化の例として、カメラの配置だけで警告音やアラートを表示する安全対策用システムの導入が挙げられます。
ICT化によって、すべての事故を防止することはできません。
しかし、危険度の高い現場である場合は、優先的に取り組みたいポイントだと言えるでしょう。
ポイント3. 人の移動
ICT化によって、人の移動は大幅に効率化できます。
打ち合わせを目的とした出張がよくある会社や、遠方の現場仕事を請け負う会社は、移動のコストや時間を減らすことが効率化のカギです。
交通費を節約できるだけではなく、移動時間をほかの業務にあて、社員の残業代を減らせます。
Web会議などの遠隔会議は、建設業界でも積極的に導入したいICT技術です。
建設業界のICT化事例
建設業界におけるICT化の具体的な事例を3つお伝えします。
株式会社ピーエス三菱
株式会社ピーエス三菱は、これまで小黒板に記載していた工種や種別、測点、略図などを電子化し、撮影時に写し込んで撮る手法を実用化しました。
黒板の持ち運びやチョークの消し書き、小黒板の設置人員といった現場労力が不要になるため、省力化が図れます。
また、危険な場所に小黒板を設ける作業が要らないので、安全性向上にもつながります。
電子化された小黒板に各種情報を記載し、写真整理やアルバム帳作成などの写真管理業務の効率化が期待できる、画期的なアイデアです。
出典:工事写真管理システムの小黒板情報電子化[デキスパート]|建設業労働災害防止協会(建災防)
飛鳥建設株式会社
飛島建設株式会社のICT活用事例は、建設機械の後方にインテリジェントカメラを搭載し、建設機械と作業者の接触事故を防ぐ取り組みです。
インテリジェントカメラは、運転席に設置したモニターやスピーカーと連動。
検知範囲に人が入ると、スピーカーから警報音が発生します。
また、障害物のみを検知した場合、モニターの色が変わり注意喚起を行います。
さらに、死角となる後方部は、広角カメラモニターで簡単に確認できるため、現場の安全管理に非常に有用な事例であると言えるでしょう。
出典:歩行者検知警戒システム「ブラクステール」|建設業労働災害防止協会(建災防)
大成建設株式会社
大成建設株式会社は、アプリを活用してクレーン・つり荷の接触衝突を防止する取り組みを実施しました。
クレーンブーム先端部や作業員に装着したセンサーや映像情報から、クレーン同士の接近や作業員の近接を抽出。
モニター表示や音声、スマートウォッチを通したアラートによって危険を周囲に知らせて事故を防ぎます。
出典:クレーン及びつり荷接触衝突防止アプリ「T-iDigital Field」|建設業労働災害防止協会(建災防)
あとがき
建設業のICT化は、業界の抱える課題を解決するために必要不可欠な取り組みです。
ICT化のために投入できる人員や資金は各会社で異なりますが、まずは情報共有や人の移動の効率化といったポイントから、ICT化を検討してみるのはいかがでしょうか。