製造業を中心に注目されているデジタルツイン技術ですが、近年、建設業界でも活用されつつあります。
今回は、建設業のDX(ITの活用で生活をよりよくすること)の1つであるデジタルツインに焦点を当てます。
デジタルツインが建設業にもたらすメリットや具体的な活用事例について解説するため、ぜひ最後までご一読ください。
目次
デジタルツインとは?
デジタルツインとは、現実空間に存在する「もの」や発生している「こと」の情報を集め、リアルタイムで現実空間とデジタル空間の間で連携させたシステムです。
現実空間に存在する「もの」とは製品・建築物・機械を指し、発生している「こと」とは製造工程・天候・人流・稼働状況を指します。
現実空間から得られた情報をもとに、現実空間の双子(ツイン)をデジタル空間に再現する技術であるため、「デジタルツイン」と呼ばれています。
デジタルツインを可能にした背景
デジタルツインを可能にした背景には、3つの技術の進化があります。
【デジタルツインを可能にした3つの技術】
・IoT技術
・5G技術
・AI技術
「モノのインターネット」とも称されるIoT技術は、リアルタイムで発生している事象に関する情報を得ることができます。
そうして手に入れた大容量のデータを、すさまじいスピードで伝えることができるのは、5G(第5世代通信規格)技術の進化の恩恵です。
また、伝達されたデータを分析したり処理したりするAI(人工知能)技術の進化によって、デジタルツインは可能となりました。
建設業でのデジタルツイン
建設業は、建築・土木の2分野に大きく分けられます。
建築分野のデジタルツインは、3Dモデルをもとに、いわゆるBIMの進化型として使用。
センサーを活用して集めた風力・風向きなどの気象情報や、作業員の人数と配置情報、建設機械の稼働状況、工事の進み具合を反映してつくられます。
土木分野においては、例えばドローンによって得た空中写真の地形データからデジタルツインを構え、測量のプロセスを効率化。
従来は人が直接歩き回って行っていたため、多くの負担や作業時間を要した測量の課題を改善しています。
デジタルツインのメリット
建設業でデジタルツインを活用することによって、どのようなメリットがもたらされるのでしょうか?
デジタルツインのメリットを「企画・設計」「建設・開発」「保守・運用」の3ステップに分けて紹介します。
企画・設計のステップでのメリット
コストの削減
実際の建設作業に入るまでに、事前シミュレーションをデジタル上で検証できるため、コストを大きく減らせます。
また、必要な人員や期間などの予測も行うことで、コストの詳しい試算も可能です。
リスクの回避
さまざまなシミュレーションや多様な条件のもとでの検証をデジタル上で実施することで、現実空間だけでは気づけないリスクを洗い出すことができます。
品質の向上
設計者の意図を再現できているかどうかがシミュレーションによって分かるため、品質が高まります。
建設・開発のステップでのメリット
迅速な問題解決
設備や機器から起こるトラブルをリアルタイムで把握できるため、トラブルの原因究明までの時間を大きく短縮することが可能です。
また、トラブルが起こる前に異常の検知もできるので、トラブルそのものを予防できます。
最適な工期と人員配置
デジタルツイン技術によって、作業員の稼働状況や作業の進捗をリアルタイムに把握。
工期や人員配置を最適化することができます。
保守・運用のステップでのメリット
適切なアフターサービス
施主に引き渡した建物の設備がネットワーク上でつながっている場合は、その後の状況をリアルタイムで把握できます。
そのため、適切なタイミングに、適切な内容のアフターサービスを提供することが可能です。
デジタルツインを活用した取り組み
建設業界においてデジタルツインを実際に活かした取り組みを、以下に2つ紹介します。
清水建設
清水建設株式会社は、オートデスク株式会社と協同で、スマートシティのキーとなる都市デジタルツインの社会実装に向けた、基盤・データプラットフォームを整備する協業プロジェクトを始動。
協業の第一歩として、清水建設の不動産開発案件である豊洲6丁目プロジェクトの周辺エリアを対象とする都市デジタルツインを構築しました。
同社は今後、データプラットフォームとオープンな開発環境をスタートアップ企業等に提供し、豊洲エリアでのスマートシティ化のノウハウを全国の都市開発提案に展開すると発表。
また、企画設計段階の各種シミュレーションや施工段階のプロジェクト管理、竣工後の運営管理にも「都市デジタルツイン」のプラットフォームを活かし、デジタルゼネコンのトップランナーを目指すとしています。
参考:都市デジタルツインの実装に向けたデータプラットフォームを整備~2社による協業プロジェクトが始動~|清水建設
鹿島建設
鹿島建設では、建物の企画や設計、施工、竣工後の維持管理・運営までの各データのすべてをデジタル化し、リアルタイムでデジタル空間上に再現するデジタルツインを推進。
2020年5月、同社は「BIM推進モデルプロジェクト」であるオービック御堂筋ビル新築工事(大阪市中央区)にて、すべてのフェーズにおける建物データの連携を可能にするBIMによるデジタルツインを実現しました。
同社は、今後もBIMデータの利用・活用範囲をさらに拡げ、建築プロジェクトにおけるさまざまな業務の効率化を図っていくとしています。
参考:日本初!建物の全てのフェーズでBIMによる「デジタルツイン」を実現|鹿島建設
あとがき
今回の「C’Lab(シーラボ)」では、建設業のデジタルツインのあらましやメリット、活用事例についてお伝えしました。
ご紹介した2つの事例はいずれも大手ゼネコンのものでしたが、今後は大手ゼネコン以外の業者の間にもデジタルツイン技術の導入が拡がるでしょう。
建設業界とデジタルツインが描く未来から目が離せません。
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