「メタバース」という言葉に触れたことはありますか?
近年世界中で注目されているメタバースは、今後あらゆる分野の技術やサービスに活用されると見込まれています。
しかし、「メディアでメタバースを見聞きしたけれど、詳しくは分からない」という人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、多方面で話題のメタバースについて、建設業とのかかわりも交えながら解説します。
メタバースによって可能になることやVR(仮想現実)との違いもご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
メタバースってなに?
まずはメタバースの概要を整理し、その上でVR(仮想現実)との違いについても見ていきましょう。
メタバースとは
メタバースとは、オンライン上に作り出された3Dのバーチャル空間や、そのバーチャル空間上のサービスをいいます。
「バーチャル空間」自体は、現実の世界をそのまま再現したものや、全く異なる世界を表現したもの、または現実と空想をかけあわせたものなどさまざまです。
メタバースとVR(仮想現実)
混同される機会の多いメタバースとVR(仮想現実)ですが、2つの間には確かな違いがあります。
メタバースはバーチャル空間を指しています。
一方、VRはメタバース(バーチャル空間)に没入するための1つの「手段」です。
言い換えると、VRはメタバースをリアルに感じられるようにするためのデバイスであるといえます。
メタバースが可能にすること
メタバースによってできる主なポイントを3つご紹介します。
コミュニケーション
メタバースでは、自分自身だけではなく遠く離れた場所にいる相手とも、同じバーチャル空間を共有できます。
個人でバーチャル空間を楽しむ他にも、他者とのコミュニケーションや、何らかの作業の共同での実施などを可能にするのがメタバースの特徴です。
実世界ではできないことの実現
デジタルツインの「デジタル側」の環境を1つのメタバース(バーチャル空間)とすると、さまざまなことを実現できます。
デジタルツインとは、現実の世界で集めたさまざまなデータを、まるで双子のようにコンピュータ上で再現する技術です。
メタバースを活用すれば、収集したデータにもとづいた実験やシミュレーションを、実世界では試せない大きな規模で実施できます。
また、普通では見られないものでさえ、メタバース内では可視化することが可能です。
利用者のバーチャル空間への没入
都市・建物などの空間モデルや、3Dモデルなどで作られるメタバースのバーチャル空間。
利用者はPCやスマートフォン、VR(仮想現実)デバイスなどを通して、現実の世界からメタバースの中に入り込みます。
メタバースのバーチャル空間では、独自のキャラクターや利用者の姿に似せたリアルアバターなどを、自身の分身として行動することもできます。
例えば、お店を開いて商品を売り買いしたり、土地を買って家を建てたりなど、利用者はメタバースに没入して現実の世界以上に自由かつ気軽にアクションを起こせるのです。
建設業界とメタバース
ここでは、建設業界でのメタバースの活用事例を2つお伝えします。
奥村組はSynamonと共同でメタバース技術研究所を構築
2021年12月、総合建設会社(ゼネコン)の奥村組は、テックカンパニーのSynamonと共同で「メタバース技術研究所」を構築しました。
メタバース技術研究所が作られた背景には、モックアップ(デザインを確認するための模型)を巡る課題があります。
モックアップは、増改築などの建設工事における作業の手戻りを減らすために作成されます。
実物に近い素材を使って実物大で作る「実寸大モックアップ」は、下記の課題を抱えていました。
・作成のコストが高い
・施工を検討している間の保管場所を確保しづらい
・施工の検討後は産業廃棄となる
また、縮尺を変えて再現する「縮尺版モックアップ」の持つ課題は下記の通りです。
・サイズが小さいために作るのが難しい
・実物大ではないため施工の手戻りが発生する
実寸大・縮尺版のモックアップ作成によって生じる課題を解決するために作られたのが、メタバース技術研究所です。
メタバース技術研究所には、手戻り発生の減少やコストの削減、施工関係者の合意や産業廃棄物減少によるSDGsへの貢献が期待されています。
出典:Synamon、奥村組と奥村組技術研究所の「メタバース技術研究所」を構築|PR TIMES
日本初!メタバースを利用した川づくり
国交省・九州地方整備局(九州技術事務所、インフラDX推進室、河川部)が、土木研究所(つくば市)と連携し取り組んできたのは、メタバースを用いた設計手法の開発です。
従来の川づくりでは、パース(建設対象を立体的な絵にしたもの)や模型などを使った事前の説明が一般的でした。
しかし、メタバースを使った設計手法の開発によって、川の整備を行う前にバーチャル空間で整備後の河川の体験が可能に。
直感的に河川をデザインできるのが魅力です。
さらに九州地方整備局は、メタバースを使ったインフラ整備の設計手法の開発だけに留まらず、マニュアル(案)の作成や近日公開することを発表しています。
マニュアル(案)公開後は、メタバースによる川づくりの普及が予想されることから、全国で注目されています。
出典:全国初!メタバース(仮想世界)を用いた川づくり~最新のDX技術で変わる新しい対話の形を提案~|国土交通省 九州地方整備局
あとがき
今回は世界中で取りざたされているバーチャル空間・メタバースの概要や、メタバースで可能になること、建設業での活用事例についてお伝えしてきました。
メタバースはまだまだ発展途上の市場ですが、「5G(第5世代移動通信システム)」の普及を追い風に、今後の成長が予想されます。
もちろん、建設業界においてもメタバースの活用は必ず進んでいくはずです。
メタバースの動向から目を離さずに注目していきましょう。