急速に拡がりつつある建設テック。
「よく耳にするけれど、具体的にはどういうこと?」と疑問を感じる方も少なくありません。
そこで今回は、建設テックのあらましや、拡大が期待される背景を解説します。
また、建設テックの具体的なテクノロジーもご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
建設テック(ConTech、コンテック)とは?
建設テック(ConTech、コンテック)とは、建設(Construction)と技術(Technology)を掛けあわせた造語です。
建設業界におけるあらゆる業務を、最新のテクノロジーを活用して改善しようという動きを指します。
もともとは「ConTech」という言葉が海外で使用されるようになり、日本でもその動きが拡大しはじめました。
国土交通省も「i-Construction(アイ・コンストラクション)」という基準を設置。
国として建設テックを推し進めているため、建設分野とIT分野がタッグを組んだという話題を、よく目にするようになりました。
従来の建設業界でも、設計や図面のためのCADソフトや、精算のためのITシステムは使われていました。
しかし、実際の現場作業でのIT活用はあまり進んでいない状況だったのです。
そこで、さまざまな企業が建設業界にテクノロジーを導入。
建設業界の未だアナログな面を、ITに置き換えるための動きが活発になっています。
建設テックが推進される背景
業界で建設テックが進められている背景には、大きく分けて2つの業界特有の課題があります。
慢性的な建設現場の職人不足
建設業界に就業する人は、年々減少傾向にあります。
業界の就業者は、すべての産業の平均と比べ、55歳以上の割合が高く、若年層(29歳以下)の割合は低くなっています。
建設業界で働く若年層が減っている理由の1つに挙げられるのは、ベテランの職人が、若手に仕事を教える時間を十分に確保できないことです。
また、仕事を教える立場にある職人が高齢であるために、若い人を教育できないという側面もあります。
若い人が働きたいと思える現場づくりが必要とされています。
効率的ではない労働環境
また、建設業界の職人不足の本質的な原因には、労働環境が効率的ではないことも挙げられます。
建設業は天候に左右される仕事であるため、悪天候の日は休みになることも多くあります。
一方、納期までに仕事を完了させるために、休日にもかかわらず仕事をせざるを得ない場合もあるでしょう。
仕事量によって給料が変動するため、建設業の収入は不安定なイメージを抱かれがちです。
また、建設業界の会社には、週休2日制の導入が進んでいない会社も未だ多いのが現状です。
ワークライフバランスが求められる昨今において、休日の少なさは、若年層が就業する上での大きなハードルであると言えます。
建設テックの拡大によって生産性を高め、週休2日制を実現することは、業界全体の急務です。
建設テックのテクノロジー5選
建設テックに含まれているのは、多種多様なテクノロジーです。
最新テクノロジーは、建設業界のあらゆるシーンで活用されています。
ここでは、建設テックの代表的なテクノロジー5つをご紹介します。
フォトグラメトリー
フォトグラメトリーとは、あらゆる角度から対象物を撮影し、撮影データをもとに3Dモデルを作成するテクノロジーです。
建設業では、データが正確であることは非常に重要です。
フォトグラメトリーを使えば、人の手による測量よりも正確なデータを得られます。
また、施工例や地形の体積などを3D化できれば、社内だけではなく社外との迅速な情報共有が可能です。
データの持ち歩きやWeb上へのアップも容易にできるため、業務効率は確実に高まります。
クラウドシステム
クラウドシステムは、工程管理や図面、帳票類などをデジタルデータとして社内・社外で共有できる仕組みです。
書類をデータ化することによって、物理的な管理は必要なくなります。
また、スマホやパソコンから操作できるため、現場や出張先など、場所や時間を選ばず仕事に取り組むことが可能です。
時間を有効に活用するために、非常に有用なテクノロジーだと言えるでしょう。
BIM/CIM
建設テックを語る上で、BIM/CIMは避けては通れません。
BIM/CIMはCADデータに代わる次世代の3D技術と言われています。
最大の特徴は、3Dデータ内へ詳細な数値情報などを含ませられる点です。
例えば建物の柱の3Dデータには、実際の高さや幅の数値はもちろん、材質データや柱1本あたりのコストにいたるまで、すべてのデータを盛り込めます。
従来は、設計段階や施工段階の各ステップで、それぞれ図面を用意するのが一般的でした。
しかし、設計段階からBIM/CIMデータを導入した場合、設計図面をBIM/CIMデータ1つに統一できます。
BIM/CIMの活用によって、図面を作り直す手間は不要になります。
また、高精度のシミュレーションを実施したり、VR・ARテクノロジーによる臨場感ある映像体験を届けたりすることにもつながるでしょう。
ドローン
測量は、建設現場で必ず実施される作業です。
これまで、位置や距離、面積の測量には、専用の測量機やセスナが使われてきました。
しかし、従来の方法では、大きな手間やコストがかかります。
測量の手間やコストの解消を実現する可能性を持っているのが、ドローンの導入です。
ドローンを活用すれば、人間が立ち入れないような危険な場所も測量できるようになります。
GPSによって事前に設定しておいたルートをドローンに飛行させれば、操縦者は不要で、操作ミスの心配もありません。
ドローンの導入によって、測量業務は大きく効率化されるでしょう。
AI
あらゆる業種で活躍しているAI(人工知能)。
建設業界においても、AIは重要視されています。
建設テックにおけるAIの運用方法は実に多彩です。
無人で操作できるAI建機や、点検用ソフトの画像認識テクノロジー、溶接ロボットの導入など、計り知れない可能性を持っています。
高度なテクノロジーに限らず、身近なソフトウェアにもAIは使われています。
現場の写真整理やデータ入力の自動化など、すぐにでも採り入れられる手軽さが魅力的です。
あとがき
今回は、建設テックの概要や推進の背景、具体的なテクノロジーをご紹介しました。
建設テックが業界によい影響を与えることは間違いありません。
まずは導入しやすい身近なテクノロジーから、建設テックを活用してみることをおすすめします。